人生の購入者が決まって
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僕の人生は、売りに出してから三日ほどで買い手が見つかった。こんな落ちていく一方の人生を、五億という大金をはたいてまで買いたいという者もいるもんなんだと、ある種の驚きを感じた。
「君は、本当に人生を売ってもいいんだね?」
僕の人生の購入者がそう言ってきた。
「はい、特に思い入れもない、人生なので買っていただけるならば幸いです」
「君がそう言うならば、これ以上は何も言わない。ただ、一つだけ聞いてほしい。人生とは自分の行動次第でどうとでもなる。君が今、売ろうとしているのは、そんな無限の可能性を秘めた宝箱のようなものなんだ。それでも本当に売るんだね?」
「はい。売ります」
何を偉そうに説教じみたこと言ってきているんだ。お前は人生に価値があると言い、僕に売ることをやめるように言っているようで、結局のところ、その宝箱とやらを買いに来ているじゃないか。言ってることとやってることが矛盾してんだよ。風俗に来て説教して帰るような奴と同じじゃないか。気持ち悪い。いっそのこと値段交渉でもしてくれたほうが幾分か気が済むってもんだ。
「そうかい、それじゃあ買わせてもらうよ。お金のほうは店を通じて君の口座に振り込まれるようだから、できる限り早く君の手元にお金が届くようにするよ。それじゃあ」
「よろしくお願いします」
老人は店を出ていった。
「お疲れ様です。先ほどご購入された方が仰ったように、できるだけ早く、お客様の口座へ振り込みがなされるよう、こちらも迅速に対応していきたいと思います。本日、お客様にしていただくことは、先ほどの購入者様との面談だけですので、今日のところはお帰りになさっても問題ありません。ただ、後日、振り込みが確認でき次第、一度こちらに寄っていただき、書類のほうにサインしていただく必要があります。その時は、ご足労いただくことになりますが、ご了承のほどよろしくお願いします」
僕の人生を売りに出したときに対応してくれた女性がそう言って頭を下げた。
「分かりました」
一言だけおいて、店を出た。
ついに人生というものを手放せる。それも金と引き換えに。そう思うと自然と気分もよくなってきた。ただ、五億手に入れたからと言って、何をする。納税はしないといけないらしいが、どうせ一年後には、僕はいなくなる存在だ。払うわけない。脱税?知るか。勝手にやってろ。死ねば関係なくなる。そんなよく知らない政治家どもが自分たちの私腹を肥やすために作ったような制度なんてどうでもいい。よく税金は社会を円滑に動かすための施設や組織に使われているなんていうが、結局訳の分からない物を作ったり、お仲間に横流ししているだけで、我々納税者が得られるものなんて、微々たるものでしかないと思う。
だが、もうそんなことはどうでもいい。一週間後には僕は資産が五億円もある人になる。そう思うと今から一週間で、したいことを考えないといけないな。これは忙しい一週間になりそうだ。
とりあえず、ペンとノートだけ買いに行こ。それもいいやつを。
読んでいただきありがとうございます。不定期になると思いますが、次回もよろしければご覧ください。




