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中国で映画を撮った日本人   作者: 羽渕 定昭
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<江南慕情>の歴史的背景


<江南慕情>の歴史的背景


 戦前、上海は東洋のハリウッドと呼ばれ多くの映画関係者で賑わっていた。日本の映画人も多かったそうだ。戦後、日中国交回復してから初めて商業目的で製作された日中合作映画は<敦煌>で、1988年の製作です。<江南慕情>が製作されるわずか2年前の事です。

それまで日中友好目的で作られたのが、1976年<君よ憤怒の河を渉れ>1979年<天平の甍>1982年<未完の対局>1984年<上海バンスキング>が有った。私はそのどれも見ていません。<敦煌>も含め、その存在すら知りませんでした。勿論、<江南慕情>は自主製作映画であり、日本映画界と同列に語られるようなものではありません。当時、私がこんな背景などを意識していたら、挑戦していなかったかも知れません。

しかし、南京政府の関係者は意識していたのかも知れません。大変なプレッシャーだったと思います。

「未だ許可が下りていない。延期せよ」

上海渡航の1週間前にファックスが届いたのです.

私達15人のスタッフ、15人のキャスト、そして5人の交渉団はキャンセルできないので実力行使をしました。そしてロケ隊全員南京に行き、直接交渉をしてその日の内に許可を貰いました。その時の契約金等は3500万円で前払いでした。もしも許可が下りなくても戻る金ではなかったのです。私は、許可が下りない場合はみんなで観光旅行をするしかないと悲壮な覚悟をしていたのでした。



<江南慕情>と<無錫旅情>


私達の中国ロケは映画界とは全く別のアプローチでした。

1986年9月に発売された新曲<無錫旅情>は1987年には紅白歌合戦に選ばれるという大ヒットでした。私は大阪の日中経済交流研究会に加わり、年に1回の視察団に加わっていました。1987年と1988年にも中国江蘇省に行きました。殆んどの移動がバスだったのですが、バスの中で<無錫旅情>が流され続けました。1曲だけだったのですが中国の景色に溶け込んでいた為、飽きることがなかったのです。

当時、私は<思い出模様>と言う歌を作詞、作曲してレコードを出し、カセットテープも20個ほど中国に持ち込んでいました。と言えば格好良いのですが、私は全く素人で歌手も素人の友人に歌って貰っていました。そしてバスの中で<無錫旅情>に対抗して掛けて貰ったのです。

「俺が中国語で歌ってやろうか?」

予想外の言葉を発したのは視察団をガイドしていたK氏でした。

「ぜひお願いする」

私は喜んでその提案を受けました。彼は大阪の大学で中国語を学び、中国旅行社を経営していました。その後私達は個人的に付き合うようになりました。私はK氏に<思い出模様>中国語バージョンを歌って貰い、翌年の1989年の視察時に中国の関係者に配りました。

K氏は言った。

「中国側から太湖の日本人観光客を増やすためにどうすれば良いかと相談された。私がご当地ソングを作ることを提案したのだ」

「その結果<無錫旅情>が誕生して、中国側の宣伝協力を得て大ヒットに繋がった」

私自身、1987年のバスの中で<無錫旅情>は大変流行っているとガイドされた時は信じられませんでした。ところが日本に帰ってみると、<無錫旅情>がいつでもどこでも聞こえてくるのでした。当時私は、作詞、作曲にも自信を持ち、2曲のレーザーディスクの映像に携わり、映画を作れる確信を持っていました。そして私は、次の歌は映画主題歌にすると宣言したのです。

江南とは江蘇省の俗称です。人工7000万人です。

「<無錫旅情>は日本なら<神戸旅情>のレコードだ。私は<西日本慕情>という映画を作る」

そして題名を<江南慕情>と命名したのです。




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