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中国で映画を撮った日本人   作者: 羽渕 定昭
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オーディション風景

オーディション風景

 

私はF氏に映画の本編製作と同時に映画の完成までの記録映画製作も依頼していました。オーディションの撮影はメーキング画像の2つ目でした。1つ目は江蘇省計画経済委員会の訪日団の歓迎会のシーンでした。このシーンはシナリオにも書いてあるので撮影したのですが、100%実写でした。私も写ってはいるのですが、演出は0です。編集の時にどの部分を繋ぐかだけでした。


本格的な撮影を意識したのはこのオーディション風景からでした。オーディションは某ホテルの2室を借りて行われました。新聞に募集広告を出したり、劇団やモデル業界に募集案内を郵送したりしましたが、出席の確認は取れていませんでした。

私は何名応募者が来るのか、又は0名なのかも分かりませんでした。広い左側の間を控室、右側を審査室にして待ちました。控室には15名が入り、先ずは胸を撫で下ろしました。応募者には口頭試験用に意味深なシナリオの1ページが渡されていました。

私とF氏と、大きな業務用ビデオカメラを持ったカメラマン、そして来賓の訪日団長と随行者1人と通訳が揃うと、応募者に緊張が走りました。先ず私が挨拶をしました。挨拶の中で、この映画は2か月以上の中国ロケになる事、日中友好のための映画であることを強調しました。そして募集人員は、主役である30歳台の女性経営者役、そしてその夫役、そして中国経済の視察団の会社社長役数名である旨を説明しました。

次に、来賓挨拶で訪日団長が中国語で訴えました。通訳が、中日経済交流と文化交流にとって貴重な映画となる旨を強調しました。2か国語での訴えに、応募者は<自分はとてつもない重要な映画に出るかも知れない>と緊張を深めました。そしてその模様をカメラが捉えていたのでした。完全に撮影は佳境に入っていました。


訪日団長を見送った後、私とF氏は隣室の審査員席に移動しました。縦長のその間は狭い割には入り口は2つありました。左側入り口を開けると左側に長机が並べて有り白いシーツが掛けられている。私とF氏の席を除いて全て既に座っていました。この設営はF氏に任せていたので私は入るまで中の様子を知りませんでした。審査員の座った椅子の前の長机には白いシーツが掛けられ、肩書が書かれた紙が貼ってありました。企画、監督、演出、プロデューサー、音楽、キャスティング、俳優の文字が書かれていました。監督が真ん中で、そこに私が座りました。私の正面には1段高い舞台が設けられており椅子とスタンドマイクが用意されていました。審査員側には3つマイクが置かれていました。部屋を替えてカメラマンが動きだしました。


 控室から1人ずつ、審査室に入ります。ドアを開けると5M先に1段高い、学校の教室にあるようなステージが有ります。中ほどに椅子とスタンドマイクが用意されています。そこに座った応募者から見ると、前に7人の審査員が横並びに座って自分をじろじろと見ているのです。テレビで見る歌のコンテストの様に離れていません。就職の面接なら通常3人までです。そしてメイキングの業務用のビデオカメラを持った人が動き回っているのです。撮影よりも緊張したのではないでしょうか。

全員に共通して質問した事は、2か月以上に亘る中国ロケが可能かどうか、映画に対しての係り方、出演の経験、映画や中国への思い等でした。最後に演技能力試験でした。


前もって渡しておいたシナリオの1ページの読み合わせです。それには男女の意味深な会話が書かれていました。それを審査員の俳優Kとパートを決めて読み合わせするのですが、俳優Kが相手に合わせて絶妙なフェイントをかけた言い回しをするのです。第1声の雰囲気とは似ても似つかない展開になって終わるのです。私は審査するより先に、俳優Kの表現力に圧倒されてしまいました。しかし、応募者の全員がそれなりに対応していました。同じシナリオが応募者の数だけ違った終わり方になりました。やはり、オーディションに参加するだけあって、冷やかし気分で来た人はいませんでした。私は全員に出演の機会を与えたかったのですが、そうもいきません。お断りをするのに気を使いました。しかし、採用されなかった応募者も、このシナリオでのバトルは貴重な経験になったのではないでしょうか。




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