愛してるゲーム最弱の愛内さん
「ねえねえ冷川くん」
「ん?」
高校のとある昼休み。
隣の席の愛内さんが、いつもの朗らかな笑顔を浮かべながら話し掛けてきた。
はて?
「なんだい、愛内さん」
「えへへー、冷川くんは『愛してるゲーム』って知ってる?」
「ん、ああ、あの交互に『愛してる』って言い合って、最初に照れたほうが負けってやつでしょ」
「そうそう、それー!」
愛内さんはパァッと、夏が弾けたみたいな顔になった。
ふふ、ホント愛内さんは、見てて飽きないな。
「今から試しに、私と冷川くんで愛してるゲームやってみようよ!」
「え、俺と愛内さんで……?」
それはちょっと、周りの視線が気になるというか……。
心なしか、クラスメイトたちもこっちをチラチラ見てる気がするし。
「あれあれー? ひょっとして私に負けるのが怖いのかな、冷川くんは? うんうん、しょうがないにゃあ、そういうことなら、私の不戦勝ってことにしといてあげるよ」
「――!」
ここぞとばかりにドヤ顔を向けてくる愛内さん。
まったく、この子はすぐ調子に乗るんだから……。
「わかったよ、そこまで言うならこの勝負、受けて立つよ」
「おおう! そうこなくっちゃ!」
「その代わり、先に愛内さんが愛してるって言う側やってね。愛内さんから挑んできたんだから」
「う……、い、いいよ! 絶対私が勝つんだから!」
それはどうかな。
まあ、お手並み拝見といくか。
「じゃ、じゃあいくね。……あ、…………あ……い……」
「?」
見る見るうちに顔が赤くなっていく愛内さん。
おや?
「……あ…………い………………し……」
赤みはどんどん増していき、目もグルグルしてきた。
愛内さん!?
「……って、やっぱ無理いいいいいい!!!!」
「っ!?」
遂には両手で顔を覆って、でんでん太鼓みたいに左右に頭をブンブン振りだした。
こ、これは俺が勝った……のか?
なんだか釈然としないが、それにしても愛内さん、愛してるゲーム弱すぎじゃないだろうか?
「……だって本当のことだから、言うの恥ずかしいよ」
「…………え?」
愛内さん、今、なんと??
『本当のこと』って言った??
『本当のこと』ってどういう意味???
「あ、冷川くんも顔真っ赤ー! えへへー、しょうがないからこの勝負は、引き分けってことにしといてあげるよ!」
「……!」
頬を染めたまま、ニヤニヤしながら人差し指を向けてくる愛内さん。
やれやれ、愛内さんには敵わないな。
……ん?
クラスメイトたちが一斉に、「お前ら、はよくっつけ」と呟いたような気がするんだけど、空耳かな?
拙作、『塩対応の結婚相手の本音らしきものを、従者さんがスケッチブックで暴露してきます』が、一迅社アイリス編集部様主催の「アイリスIF2大賞」で審査員特別賞を受賞いたしました。
2023年10月3日にアイリスNEO様より発売予定の、『ノベルアンソロジー◆訳あり婚編 訳あり婚なのに愛されモードに突入しました』に収録されます。
よろしければそちらもご高覧ください。⬇⬇(ページ下部のバナーから作品にとべます)