第五話 精霊が降る聖夜(2)
「わー、はははは、レイカ様ぁ、ちゃんと、飲んでるぅぅ?」
「飲んでるわよ。あ、ちょっと、アナタ、それアタクシのコート…」
「あったかいのぉ、ふかふかぁ」
「あたりまえでしょ、それ鞣すのにどれだけ手間がかかったと…」
−−はーい、ターキー18年でございまーす、もちろん、ストレィトゥ、おまったせしましたぁ。
「おおお、きたー、ニワトリさん〜」
「七面鳥でしょうが…、って、かえしなさいよ、コートッ」
「…すてきでしゅぅ、このコートォ…、でもさ、レイカ様ってさぁ、他の趣味はいいのに、なんで男はあんな趣味わるいのぉぉ」
「男…って、何よ、アナタ。あぁぁあ、やめなさい、ウイスキーこぼすなぁ」
「ぷっはぁ、やっぱ、女はバーボンっすよねーぇ。っていうかぁ、趣味悪いでしょ、いったい、キョージュのどこがいいの?」
「…え? ダーリン、…の、こと?」
「そ、そ、そ、ダーリン、だーりん、それそれ。どこがいいんですか、あんなの?」
「だって、…光ってる…し…」
「え〜? なに〜?」
「だから、光ってるの」
「ひかってるぅ? ピカピカ?」
「そうよ、光ってる殿方なんて、ダーリンが初めてだったんですもの…」
「へぇぇぇ、そぉかぁ、そういう風に見えるんだぁ。性格悪いのになぁ…」
「え? ダーリン、て性格よろしくないの?」
「よろしくない、なんてもんじゃないっすよぉ。あんな根性の捻じ曲がったヤツ見たことないしぃ」
「…そ、…そんなに?」
「話したことないんデスか?」
「…え、だって、そんな…、いつも遠巻きに見てるだけだし…」
「いかん、いかんなぁっ、レイカ様。趣味悪いのはともかく、そんな内気でどーする、あ、おかわりぃ」
−−かーしこまりましたぁっ、こちらターキー、エイティーンイヤーズ、ワンモア
「めんどくさいから、ボトルもってきてぇ」
−−あーりがとぅございまース。ノーグラス、ボトルワンッ
「ちょっと、アナタ、いいかげんにしなさいよ…」
「だからぁ、もっとどうどうと声かければいいじゃないっすかぁ。あ、あたりめちょーだい」
−−しょうちいたしましたぁっ、カットルフィッシュジャーキー、プリーズ
「そんな…、声だなんて、そんな近くまで行ったりして…」
「行ったりして、ほれほれ、どうすんのぁ?」
「無理よ…」
「なんでぇ?」
「だって、そんな、そんなことして、もし…」
「えー、もし?、もし、ってなに?」
「もし…、ダメ、万が一アタクシの力が無くなってしまったら…」
「え?」
「ダーリンの力でアタクシが無力になったら」
「何言ってんですかぁ。そんなことさせませんよぉ。こう首をキュッ、と」
「おだまりなさい。アナタにはわからないのよ。アタクシに予知能力がなくなったら…」
「いや、だから大丈夫ですってば」
「何が大丈夫よ、いい加減なこといわないで…。私から予知能力がなくなったら、この美貌以外になんの取柄もない女になり下がるのよ。アナタに何が…」
「あ…、ちょと…、レイカ様、あの…」
「ヒドイなぁ、お嬢ちゃん、レイカ様泣かしたりして」
「あれ? カゲしゃん、なんでいるの?」
「なんでって、それはこっちのセリフだけど。ま、なんにせよ来てくれてうれしいよ。それにしてもレイカ様が来てくれるんなら、もっと早く来るんだった」
「フン、アナタに頼まれたから来たわけではなくてよ。この娘と話してみるのも一興かと思っただけ」
「つれないなぁ。ま、オレの店にレイカ様が来てくれるなんて、めったにないことだから、お嬢ちゃんに感謝しなくちゃな」
「じゃ、お酒ちょーだい」
「え?」
「え?」
「お酒だいすきー」
−−このお嬢ちゃん、かなりヤバいんじゃ?
−−アタクシだってこんなになるとは思わなかったわよ
−−どうして…
−−アタクシ、自分に関係することは見ないようにしているもの
「わぁ、あやしいぞぉ、なにコソコソ内緒話してるのぉ」
「あ、いやいや…、そろそろイベント始まるから、お嬢ちゃん、ステージのほう…」
「え? あのイベント? アタクシあれは…」
「ま、そう言わずに、いちおう名物イベントなんだから」
−−たいへん、なっがらく、おまたせいたしましたぁっ
−−ただいまからぁ、フォーリン・スピリッツ、スペーシャルイベントォ、ドンペリプールのお時間でございまーす
−−お客様もふるってご参加ください
−−あ、それ、ド・ン・ペ・リ
−−ド・ン・ペ・リ
−−ド・ン・ペ・リ
−−ド・ン・ペ・リ
−−ド・ン・ペ・リ
「何アレ?」
「ビニールプールにドン・ペリニヨン注いで、そこに飛び込むっていう、悪趣味なイベント。ほんとにもう」
「ドン・ペリニヨン? ドンペリ? お酒…?」
「本物使ってるんだから、その点ぐらいは認めてほしいなぁ」
「どうせ従業員しか飛び込まないのに…、無駄の最たるものよ」
「ドンペリ…、お酒?」
「…あ、ああ、もちろん、シャンパンだよ」
「いちばんっ、アキハ、いきまーしゅ」
「え? わ? ちょっと、お嬢ちゃん」
「とつげきーっ」
「おやめなさい。やめてー。せめて、コート脱ぎなさぁーい」