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術師たち  作者: 二月三月
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第四話 真実を映す魔鏡(12)

 

 ヴァチカンの人たちは帰っていった。


 あの、最後の人を助け出すのが彼らの使命だったらしい。


 あの人が鏡の中に入ったのが、例のキョージュのエクソシストグループ半壊事件の時で、キョージュとあの人のおかげで半壊ですんだのだそうだ。


 と、いうようなことをサンタに聞いた。サンタの説明はまわりくどいので、実際に聞いたときは、もっと長かった。


「じゃ、キョージュがヴァチカンにいなかったら、全壊だったの?」サンタに問うてみた。


「うーん、どうかな。流石にそうなったら、もっと大騒ぎになるし、たいへんなんじゃないの」


「半壊も全壊も大差ないんじゃないの?」


「ヴァチカンまるごとなくなったら、さすがにニュースくらいにはなるだろ」


「へ?」


「最悪、そのくらいヤバかったらしいよ。だから、あの人、いろいろすっ飛ばして聖人に予約入ってるハズ、本当は有り得ないんだけどね」


「キョージュも?」


「ああ、あれは別モノ」サンタはヘラヘラ手を振る「埒外の枠の外の外だから」


 あ、そうだ、と言ってサンタが問うてきた「この間の死者の石、どうなったか聞いてくれた?」


「持ち主に返したって」


「えぇ〜」めずらしくサンタが頭を抱えている「ひどいなぁ、それじゃ、手の出しようがないや。キョージュらしい、って言えばキョージュらしいけど」


「ザラスシュトラの鏡でも貰えば? あれももう、破器されたわけだし」


「ああいう、でかいのは好みじゃない。どっちかというとあの懐剣のほうがいいな」


「いちおう家宝らしいから、払い下げはないんじゃないの」


 サンタが顎をしゃくって玄関のほうを差すので、振り向いたらキョージュがいた。


 じゃ、またね、とサンタに送り出されて店を出る。


「やっぱり行かないとマズイんでしょうか?」いちおうキョージュに問うてみる。


「うーん」キョージュは歩きながら腕組みをした「依頼人ですしね。ことの起こりはあの人の依頼からだし、そもそもなんであんな所にザラスシュトラの鏡があったのかも聞かなければならないですし」


「はあ」


 アワセカガミの意識が戻った、と連絡があったのである。アワセさんは例のサンタの本体が入院している病院にいる。ようするにあの病院、術師会の手が入っているということだが、それにしても…。


「何かもうグダグダになってるし、依頼自体も有効かどうかわかりませんよね」


「もう本部扱いになってますから、依頼うんぬんはどうでも良くなってます」


 やっぱり。


 本部扱いっていちばん割りにあわない、ボーナスもほとんど出ないし。


 がっくりと肩を落とす私を見て、慌ててキョージュが付け加える「あの、…そのぉ、言い難いんだけど、ボーナスの方はタモンさんが色つけてくれるそうなので、心配しなくていいです」


「ほんと?」


 キョージュを見上げる私の瞳は、たぶん、キラキラしていたと思う。


「ほんとです。でも、内緒にしてくださいよ」


「うんうん、絶対、誰にも言わない」


 病室に着いた時、アワセさんは眠っていた。


 いろいろな配慮の結果だろうが、アワセさんの病室は個室で、看護師さんが二人、専属で付き添っている。


 意識は戻りましたが、まだ不安定なので、と年配の方の看護師さんが説明してくれた。あまり興奮させないでくださいね、と注意を受けた。


「アワセさん、アワセさん」看護師さんが寝ている病人の頬を軽くたたく「お見舞いの方ですよ。アワセさん。起きて」


 アワセカガミはうっすらと目を開けた。看護師に支えられて半身を起こす。しばらく病室の中を彷徨っていた彼女の視線が私に向いた時、その目が大きく見開かれた。


「おじょうさま」


 え?


「おじょうさま、なぜここに? まれすけ様は…」


 看護師を振りほどいて私ににじり寄ろうとする。こちらもわけがわからず、声も出せずにあとずさりした。


「おじょうさま、私を、私をお忘れになったのですか? 私は…、私は…」


 アワセカガミは急にぐったりとベッドの上につっぷした。年配の看護師が首に鎮静剤を打ったのだ。


 乱暴な病院だなあ。怪我してもここにはこないようにしよう。


 それにしても、


 私、この人に会ったことあったっけ?



<真実を映す魔鏡 − 了>



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