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術師たち  作者: 二月三月
31/82

第四話 真実を映す魔鏡(1)

 


−−鏡よ、鏡。世界でいちばん、私を愛しているのは、だあれ?




 鏡を探すのが、今度の仕事、とソンコさんは言った。


 そんな漠然とした話では進めようがない。


「どんな鏡かもわからないんじゃ、探しようがありませんが」


「詳しくは、依頼人に聞いて」ソンコさんが言う。


「依頼人、て誰?」


「阿波瀬加賀美」


「ああ」


 その駄洒落みたいな名は知っている。人気の占い師だ。しかも御丁寧に鏡占いである。


「占い師なら自分で探させればいいじゃないですか」


「無理だよ」


「何で?」


「インチキ占いだもん」ソンコさんはもう手を振っている「じゃ、アキちゃん、がんばってね〜。あ、それと」ソンコさんはキョージュの方を向いた。瞳がスッと小さくなり、三白眼でキョージュを睨む「わかってるとは思うけど、仕事が探し物だからって、ウチの娘にちょっかい出さないように」


「そうはいきませんね」キョージュはひるむ気配すらない「この仕事、本部通ってるんでしょう? そうしたら僕の師匠の目に止まらないハズはないし、わざわざこの詰所に話を持ってきたんだから、ショミさんのことは暗黙の了解だと思ってましたけど?」


「あの人のことは言わないで」ソンコさんは金切り声を上げた「それとこれとは話が別です」


「それなら、僕が直接、タモンさんに確認しますから」


「そんなことしなくていい」絶叫したソンコさんは目の焦点があっていない「…あの人はあの子に甘すぎるのよ。いくらあたしが厳しく躾けてもすぐに甘やかすし、…だいたい、最近、本部にこもりっきりで詰所にも顔を出さないし、たまに本部に顔出してもすれ違いで…、あぁ、こんなんじゃ同じところで仕事してる意味が…、もしかして、あたしに飽きたのかしら、ううん、家ではいつも優しいし…、…本部の …あの女?…」


 なんかお終いのほうはぶつぶつ独り言になってるし、更年期か? この女。


 キョージュが袖を引っ張るので、ソンコさんを残して詰所を出る。


「タモンさん、て、会頭の?」


 私の問いにキョージュが肯く。


「タモンさんがキョージュの師匠だったんですか?」それならキョージュのこと聞きに行けば良かった。何でソンコさん教えてくれなかったんだろう。


「タモンさんに、どんなこと教わったんですか?」キョージュに問うてみる。


「別に何にも」キョージュは首を振った。


「でも、師匠なんでしょ?」


「この間、本部に行ったとき、今日からボク、キミの師匠になるから、って言われたんで」


「?」


「ああ、そうですか、って答えたんです」


「…」


 深く考えると頭がヘンになりそうなので、考えるのをやめた。


「でも、タモンさんはイイ人ですよ」キョージュが言う「師匠を見る目はないですけどね」


「師匠の師匠?」オウム返しに問うた「タモンさんの師匠ってこと?」


「そうです。最低の男です」


「そんなヒドイんですか?」


「僕の父ですから」


「…」


 いろいろ複雑なようである。


「でも、どうしてタモンさんとショミちゃんが関係あるんですか?」さっきのソンコさんを思い出して問うてみた。


「タモンさんはショミさんのお父さんですからね」キョージュは当然のように言った「もっとも知ったのはつい最近で…。ソンコさんの夫がタモンさんなのは前から知ってましたけど」


 術師会というのは、どうやら会頭以下、家族経営で成り立っているらしい。血統を考えれば当然なのかもしれないが。そのうち叔父、叔母、従兄弟なんてのが出てくる前に、転職を考えるべきなのかもしれない。


「それにしても」話を仕事に戻す「エセ占い師の依頼に本部が首突っ込むって、どういうことなんですか?」


「うーん、まあ、本部も半信半疑なんでしょうけど」キョージュも首をひねっている「たとえ嘘でも、ザラスシュトラの鏡、って言われたら、放っておくわけにもいかないんだと思いますよ」


「ツァラトゥストラ?」


「それはニーチェ」


「ゾロアスター教の開祖ですよね」


「微妙に違いますが、そんなものです」


「ここ日本ですよね?」


「そうですよ」


 熱が出そうだ。



術師たち(表)シリーズ第四作目です。

ラストがかなり不評でした。尻切れトンボと言われてしまった。作者的には、ちゃんと終わってるハズなんですけどねぇ。

サンタのちょっとした秘密が暴露されています。サンタはわりと作者好みです。



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