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術師たち  作者: 二月三月
20/82

第三話 純潔を守る秘宝(3)

 

 よろしくお願いします、と夫人に頭を下げられ邸を辞した。


「あ、アキハさん、駄目ですよ。ちゃんと鍵かけないと」


 あ〜、こうるさいヤツだ。はいはい、わかりました、かけますよ。


 がちゃり、と重い音。玄関を閉める。


 それにしても、おかしな物を押し付けられてしまった。いちおう、調べてみますと言って受け取ってはみたものの、どうしたものか。


 いまバッグの中に入っている。夫人の言う不思議なものとは、金属製の下着だった。丁寧に宝石で飾られている上に、左右には対の錠前。


 差し出した時の夫人の微妙な表情も無理もない。


 いわゆる貞操帯である。


 アンティークとしてそこそこの価値はありそうだが、それにしても、何故?


 何故? ウチなんかに相談するのだ?


 まあ、ソンコさんの知り合いらしいから、ソンコさんに相談するのは百歩譲るとしても、何故こっちに持ってくる?


 わかっている。あの夫人のせいではない。


 悪いのはソンコさんだ。


「どうしましょうか?」


「うーん」キョージュは腕組みしている「こういうのは僕のほうからはなんとも言えませんねぇ」


 正直、キョージュにはまったく期待していなかったが、いざ、こう言われると心細い。


「サンタくんにでも見せてみたらどうですか?」


 なるほど、サンタがいたか。おかしな店をやっているから、おかしな物には詳しいかもしれない。


「あと、おせっかいかもしれませんが、アキハさん」珍しく神妙な物言いのキョージュである「あちこちで名乗るの控えたほうがいいですよ」


「は?」


「さっきも、ソンコさんの友人って言えって言われてたのに。アキハです、って言っちゃうし」


「だから、ソンコさんの友人のアキハです、って、ちゃんと言いました」


「そうじゃなくて」キョージュは何か困っているようだ「我々、術師はですね。基本的に名乗ったりしないんです、ってば」


「何で?」


「だって、呪われたら困るでしょ」何をいまさら、という顔のキョージュ「最近では、流行らない呪法だから、あまり気を使う必要はないといえばないんですが」


「でも、私、キョージュの名前知ってますよ。近衛公人さんでしょ?」


「偽名のうちのひとつです。一般の人には、我々の慣習は奇異に映りますから」


 何ですとぉ、


 どーして、そんな大事なことをいまになって言うんだ、オマエは。いや、オマエらは。


「じゃ、駿河、って」


「まあ、それは旧姓なんで偽名とは言えないけど、ある意味、昔の知り合いみたいだし…。それにしたって、駿河ソンコ、なんておかしな名前の人、いるわけないじゃないですか」


 常識で考えてください、ジョーシキで。と、ことさらキョージュは常識を強調する。


 オマエに言われる筋合いはないぞ。だいたいそれのどこが常識なんだ。


「サンタの店に行ってきます」


 キョージュはサンタの店に寄り付かない。どちらが嫌がっているのかは、いまのところ微妙だが、あそこならキョージュの顔を見ないですむ。


 代わりにサンタ、というのもアレだが、いまはそんなこと言っていられない。


「あと、わかってるとは思いますけど」キョージュの声が私の背中に飛んだ「さっきのお宅に一人で行ったりしたらいけませんよ」


 そんなこと知ったことか、ボケッ。



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