第8話 宮廷治癒師の推薦
アリーセの返答を聞いて、陛下は拍子抜けしたような表情を浮かべていた。
「仕事、そんなことでいいのか?」
「はい、いつまでもダイン様のお世話になっているわけにもいきませんから」
「わかった」
そう言って、陛下は頷いた。
「アリーセ殿、あなたを宮廷治癒師に任命する」
「え!? 宮廷治癒師ですか!?」
「不満かね?」
「いえ、とても光栄です」
宮廷治癒師ということは、国に仕える専属の治癒師ということだ。
これ以上名誉なことは無い。
「では、正式な決定は書面を持って通達するから、少し待ってくれるか?」
「もちろんです。ありがとうございます」
「お礼を言うのはこちらでもあるんだ。よろしく頼むよ」
「はい、頑張ります」
つい先日までは家でイジメられていた。
そんなアリーセが宮廷で働くことになったのだ。
まさに、人生何があるか分からないものである。
「また、王女様に何かあったらお伝えください」
「うむ分かった。それと、アリーセ殿は医学にも精通しているように見えたのだが」
「そうですね。独学で学んでいたので、王宮の医師には負けるかと」
アリーセの知識は本で学んだ知識に過ぎない。
実際に臨床している医師には劣るだろう。
「いや、そんなことは無いだろう。王宮の医師でも見抜けなかった白眼病を瞬時に見抜いたのだ」
「そ、そうですね……」
そう言われると言葉に詰まってしまう。
「どうだ、医師認定試験を受けてみないか?」
ヴェルセラ王国には医師認定試験をクリアしたものが医師資格を有し、医療行為をすることができる。
認定試験は月に一回開催されている。
「陛下がそこまでおっしゃるのであれば、受けてみようと思います」
「ありがとう。これで、我が国に新たな強力な戦力が誕生だな」
陛下はそう言って、笑みを浮かべる。
「ダイン、彼女をしっかり守ってやれよ」
「は、承知しております」
ダイン様は胸に手を当てて言う。
イケメンすぎますって。
「アリーセさん、帰りましょう。立てますか?」
「はい、大丈夫です」
立ちあがろうとしたとき、一瞬ふらついた。
「危ないですよ」
そう言ってダイン様はアリーセを抱き止める。
距離が近い。吐く息が当たりそうな距離である。
この距離で見ても、すごく容姿は整っているのがわかる。
「す、すみません」
「歩けそうですか?」
「はい、もう大丈夫かと」
「わかりました。お支えしますので、どうぞ」
ダイン様は手を差し出してくれる。
「ありがとうございます」
アリーセはその手を取った。
「では、陛下、我々はこれで失礼します」
「ああ、気をつけてな」
アリーセはダイン様に支られ、王宮を後にした。
「少し休むといい。食事は部屋に持って行かせよう」
「すみません」
「気にするな。相当な魔力を消費したのだろう」
自分の部屋に戻ると、部屋着に着替えてベッドに横になった。
睡眠をとると、魔力は効率よく回復することができる。
アリーセはそのまま意識を落とした。
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