第6話 国王陛下
「私が、陛下とお会い出来るのですか?」
「ああ、私からの紹介なら問題ない。アリーセさんには部下を助けられた。私の部下は陛下の部下でもある。きっと会ってくれるさ」
国王に謁見を申し込んでもすぐには会えないのが通常だ。
陛下はお忙しい身なので、数ヶ月は先まで謁見の予定が詰まっている。
それをすっ飛ばして陛下と会えるというのだから、ダイン様は相当上の立場であると言うことが伺える。
「ぜひ、お会いしたいです」
「では、早速行こうか
「あの、私、この服で大丈夫でしょうか?」
男爵家から出て来る時に唯一持ってきたドレスを着ていた。
「うん、問題ないよ。とても似合っている」
そう言って、ダイン様は柔和に笑う。
その表情に思わずドキッとしてしまう。
きっと、女性の人気も高いのだろうなと思う。
「あ、ありがとうございます」
「では、行こう」
お屋敷を出て、王宮へと向かう。
ここは貴族街という貴族のお屋敷が並んでいる場所だ。
王宮からも比較的近い位置にあるのだそう。
ダイン様と並んで王宮までの道のりを歩く。
「団長、お疲れ様です!」
門番をしていた騎士がダインの姿を見て勢いよく敬礼する。
「お疲れ様」
そして、王宮に入ると従者の人に陛下に会いたいという旨を伝えていた。
しばらくして、従者が戻って来る。
「お待たせいたしました。陛下がお会いになるそうです」
どうやら、本当に陛下が会ってくれるらしい。
「どうぞ、こちらで少々お待ちください」
王宮の応接間に通された。
豪華な調度品が並べられている。
アリーセはそれを珍しそうに眺めることしかできなかった。
待つこと数分、再び応接間の扉が開かれた。
現れたのは、金髪を短く切り揃え、筋肉質な男性。
ヴェルセラ王国国王、アーロン・ヴェルセラだ。
「ダイン、ちょうどいいところに来てくれた!」
陛下は少し取り乱している様子だった。
「何かあったのですか?」
「娘が、娘が……」
「陛下、落ち着いてください」
「すまん、娘が原因不明の高熱で……おや、そちらのお嬢さんは?」
陛下がアリーセに視線を移して言った。
「私の部下の騎士たちを救ってくれた治癒師のアリーセさんです。陛下に紹介するためにお連れしました」
「あなたが、アリーセ殿でしたか。いやはや、お見苦しい所をお見せしてしまいました」
そう言って、陛下はピシッと背筋を伸ばす。
「私がこの国の国王、アーロン・ヴェルセラです。私からも礼を言わせてくれ。ありがとう」
陛下は頭を下げる。
「頭を上げてください。私は治癒師として当然のことをしただけです。それに、一国の国王が簡単に頭を下げるもんじゃありませんよ」
「若いのに人間が出来ているんのだな」
「それより、お嬢様の様子、私にも診せてもらえませんか?」
原因不明の熱だと言った。
それなら、長い時間何もしないのはまずいかもしれない。
「ダインの紹介なら間違いはないだろう。アリーセ殿、娘を診て頂けませんか?」
「はい、もちろんです」
陛下に連れられ、応接間を出る。
「ここです」
王宮内の一室の扉を開く。
そして、天蓋付きのベッドには苦しそうな息を吐くヴェルセラ王国の王女がいた。
「アリーセ殿頼めるか?」
「わかりました」
アリーセは王女様に近づく。
「あなた、その方は?」
「部下の怪我を一瞬で治してくれた治癒師のアリーセ殿だ。彼女なら、メイを治せるかもしれんと思ってな」
ベッドの横に立っていた綺麗な女性はアーロン陛下の奥さん。
つまりは王妃様である。
「ちょっと触るよ」
アリーセは王女様の首を触る。
確かに熱い。とんでもない高熱だ。
「口開けますか?」
王女様の口内を確認すると、口内炎がいくつも出来ていた。
それに、リンパも腫れているようである。
これらの症状を総合的に判断すると、結論は一つ。
「王女様は、白眼病です」