最終話 世界最高峰の治癒師
アリーセが王都に来てから、約半年の時が経過した。
今日はダインと正式に婚姻を結ぶ日だ。
半年間という準備期間を経て、無事、結婚することができる。
アリーセはこの日を心待ちにしていた。
「すごく綺麗だよ」
ウェディングドレスを身に纏ったアリーセにダインが言った。
ダインもまた、真っ白なタキシード姿あった。
髪もいつも以上に綺麗にセットされている。
「ありがとうござます。ダイン様もカッコいいです」
「では、そろそろ時間だ行こうか」
「はい!」
アリーセはダインの手を取った。
王都の中央教会で式が行われる。
この式は近親者のみで行われる。
アリーセの家族は居ないので、ダインの家族のみと思われた。
しかし、その時、見知った顔が現れた。
「お嬢様、ご結婚おめでとうございます」
「カルト!?」
サイン家の執事を務めていたカルトの姿だ。
「ご無沙汰しております。本来は、もう少し早く来れるはずだったのですが、手間取りました」
「来てくれてありがとう。サイン家の方は」
「辞めて参りました。私の主人はお嬢様だけでございます」
そう言って、カルトは粛々と一礼した。
「カルトにはうちで働いてもらうことにした。アリーセの専属だ」
「ダイン様はカルトがくる事知ってたんですか?」
「まあな」
ダインはニヤっと笑った。
「そういうことは言ってくださいよ」
「私からのサプライズだよ」
その笑みを浮かべられたら、なんでも許せてしまいそうになる。
「ねぇ、カルト。私の父親役を頼めるかしら?」
「私でよろしいのですか? そんな大役」
「私は、カルトにお願いしたいと思っています」
「身に余る光栄でございます」
元々はダインの父に頼もうかと思っていたが、幼い頃から支えてくれたカルトに頼みたいと思った。
アリーセからしたらカルトが父親も同然だ。
「では、私は先に行っているよ」
そう言って、ダインは教会の中へと向かった。
「私たちも行きましょう」
「かしこまりました」
教会の扉の前にカルトと共に立つ。
そして、カルトの腕にアリーセは腕を通した。
教会の扉が開かれる。
絨毯の上をダインと神父さんがいる所までゆっくりと歩く。
周りからは拍手が送られている。
ダインの元まで到着すると、父親役のカルトは離れる。
「健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
神父の言葉にダインが答える。
「誓います」
そして、アリーセも。
「誓います」
「では、誓いのキスを」
アリーセは目を閉じる。
そこに、そっとダインはキスを交わした。
♢
王都の一室で結婚披露パーティーが開催されることになった。
そこには、国の重鎮たちやアリーセに命を助けられた騎士たち。
ダインの騎士仲間たちが居た。
「皆、グラスは行き渡っているかな?」
アーロン国王が確認をする。
「ダイン・エステール、アリーセサイン。2人の婚姻を私が見届け人となって認めるものとする。これは、ヴェルセラ王国国王としての宣言である!」
陛下が全員に聞こえるように声を張る。
「前途ある若者の未来に、乾杯!」
こうして、アリーセとダインの婚姻は正式に認められたのであった。
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このお話はここで完結とさせて頂きます。
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また、次の新作でお会い出来るのを楽しみにしております。