第11話 癒しの聖女
応接間に通されて数分。
陛下がやって来た。
「お待たせしてしまったね」
「いえ、とんでもございません」
アリーセとダインは立ち上がる。
「ああ、座って構わないよ」
「失礼致します」
再び、ソファーに腰を下ろす。
「まずは、お二人さん、婚約おめでとう」
陛下の耳にもアリーセたちの婚約の話は届いていたらしい。
「いやあ、なかなかいい人が見つからないと思っていたが、こんなにすぐに見つかるとはな。いつ正式に結婚するんだ?」
陛下は何だか嬉しそうだった。
「見届け人なら私がやるぞ!!」
興奮気味に陛下が身を乗り出して来る。
「陛下、お気持ちは嬉しいですが、正式な結婚はもう少し先の予定です」
「そうか、それは楽しみだな。アリーセさん、ダインの事、よろしく頼む」
「は、はい! 頼まれました」
アリーセは反射で思ったことを口にしてしまった。
「陛下、そろそろ本題に」
ダイン様が陛下を促す。
陛下もいい人なのだが、夢中になることができると、他のことに意識が薄れる性格のようである。
それだけ、ダインとアリーセの婚約に興味を持っているということなのだろう。
「すまん。アリーセ殿を本日付けで宮廷治癒師に任命する。これが、証明書だ」
陛下は一枚の書類を机の上に置いた。
そこにはアリーセを宮廷治癒師に推薦し、正式に認めたことが記載されており、陛下のサインと日付も入っていた。
「おい、例のものを」
「はい」
陛下の後ろに控えていた従者が机の上に木箱を置く。
その箱を陛下がゆっくりと開けた。
「宮廷治癒師であることを示す白衣だ。まあ、制服みたいなもんだな」
アリーセはその白衣を手に取る。
胸の目立つ位置には、王家の紋章が緑色で刺繍されている。
王宮に仕えていることを証明する紋章だ。
ダイン様の左腕の部分にも同じ刺繍が施されていた。
「ありがとうございます。大切にします」
アリーセは早速、その白衣を羽織る。
これを着ると、一気に治癒師っぽくなった。
「白衣姿もお似合いですよ」
ダイン様がアリーセを見つめて言った。
「イチャイチャするのは帰ってからしてくれんかな」
陛下がそんなアリーセたちを見て茶々を入れる。
「イチャイチャは、してません!」
ダイン様は顔を赤くしながら否定する。
「そうかね。まあ、いい。アリーセさんには王宮内に仕事部屋を用意した。後で案内させよう」
「仕事部屋までもらえるんですか!?」
「ああ、本来なら居住スペースもあるんだが、アリーセさんはダインの所から通えばいい」
通常、宮廷に仕える者は王宮に住み込みとなる。
そのため、仕事部屋と居住空間がもらえる制度になっている。
「その代わりと言っては何だが、私から婚約のお祝いと部下を救ってくれたお礼、そして我が娘を救ってくれた礼として、アリーセさん、貴殿に《癒しの聖女》の称号を授ける」
陛下に直接二つ名をもらえるのは大変名誉なことである。
「そんな、本当にいいんですか!?」
「ああ、あなたはそれだけのことをしてくれた。今後、何かあれば王家が後ろ盾となると約束しよう」
王家が後ろ盾になるということは、そこらの貴族や豪族などは黙らせることができる。
トラブルに巻き込まれても、王家が処理に当たってくれる。
そういうことを言っているのだ。
「アリーセさん、おめでとうございます」
隣に居るダイン様が微笑みを浮かべていた。
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