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1話ここはどこ?

ここはどこ…。僕の目の前に広がる景色はどちらを見ても真っ白な景色だった。まるで白の画用紙。そんな所に僕はペタリと座りこんでいる。


「何、ここ?」


僕は口からそんな言葉が出てきた。僕の声が、遠くへと響いている。どこを向いても景色がない。ただ真っ白なところ。寒くも暑くもない。僕の身体(からだ)、おかしいのかな。おかしくなったのかな…。

それと何かゾッとするものを感じる。僕は恐ろしいところへ来てしまったんだ。そんな気がしてならない。


こわい、こわい、こわい…。


すると僕の背後(はいご)から何かが来るような気がした。僕は後ろに振り返った。でも、何もなかった。そして、また僕をゾッと恐怖が襲ってきた。


こんなところ早く出たい。早く出て、お母さんとお父さんに会いたい。会いたいよ…。僕の頬に熱い大きな雫が伝った。ひと粒流すと、もう止まらなくて…。僕はわーと恐怖と悲しみが溢れてきて、思う存分泣いた。もう戻れない気持ちが強くなってきた。


戻れないのかな…。会えないのかな。蓮にも優愛(ゆあ)お兄さんの姿も…、お母さんとお父さんにも会えないのかな。


嫌だ、怖い…。でも怖いって思っちゃダメだ。怖いって思ったら、思ったら…。いけない気がする。でも、僕の頭は怖い気持ちばかりが浮かんでくる。

僕は両腕を抱えて震えた。雫は止まらない。こんなにも恐怖で泣くことは今日が初めてだ。


すると、前の奥の方でランプが灯ったのが見えた。見えたと思った途端、ボワンッと目の前に何かが飛び出した。


えぇ、なになになになになに!!?


僕は驚いて、後ろに手を置いて尻もち着いたような体勢になった。驚き過ぎて雫が止まった。止まったのはいいけど…。冷静にはなれない。でも、冷静にならないと、何が起こるか分かんないよ。うぅ……。


僕は恐る恐る目をパチッと開けた。すると、目をまん丸にさせた人と目が合った。


「うわ!おじさんだ!」

そう僕の目の前に現れたのはとても歳のとったおじさんだった。


「やぁやぁ!君かね。よーく、来てくれた。わしはとても寂しかった。さぁ、おいで。わしに触れさせてくれ」


おじさんの髭はキレイな白と言うより、少し黄色、いや、黄金の色の散らばった三角の長い髭のおじさんが目の前にいた。服は和装(わそう)みたいだ。頭はめっちゃ禿()げてる。このおじさんなになになに。僕をどうする気…。ゴクッと(つば)を飲み込んだ。僕の頭は変なことを想像してしまった。


そして僕は思わず、ウゲッと声が出た。僕は手を後ろにして、座ったままの体勢でちょこちょこと後ずさりした。おじさんはムリ。僕よりもいやらしい人がいっぱいだもの。それに僕がおじさんにナンパされるのはちょっと…。僕なんかよりももっとカッコイイ子、かわいい子なんてたくさんいるだろうに。どうして、僕なんか。


…、周りに僕以外いないのか。そう言えば…。僕は思い切っておじさんに言った。


「…おじさん、何ですか。僕はどこに来ちゃったんですか!戻してください!今頃、家に帰ってるはずだったんです!」


僕は咄嗟(とっさ)に聞いていた。出て来たおじさんなら戻るのを知っていそうな気がしたからだ。


おじさんはキョトンとした顔で僕を見る。ただならぬ嫌な予感がしてきた。


「ありゃ、君じゃないという事か。君は地球人の子なんだな。こりゃ、参った。てっきり、魔法人の子を落としたと思ってたわい。

わしに会えた事を嬉しく思うが良いぞ。戻せないがいい所へ行かせよう」

とおじさんは笑顔でパシパシと僕の肩を叩いて言う。


えぇ!?僕は困惑した。魔法(まほう)人?どういうこと…。それに落としたっておじさん言ったんだけど!やっぱり、僕は戻れないんだ…。うぅ。僕は…、僕は……。

僕の心に嫌な言葉が浮かんだ。

死んだんだ。僕は………。そう気付いた。やっぱり、僕は落ちたんだ。僕はあの世界へ戻れない。そう気付いた途端、僕は雫さえ出てこなかった。気持ちもシーンと静まり返ったように思えた。白…。真っ白に。僕の心はもう、青にも桃色にもならない。ただ白くなっていくように感じる。まるで今座りこんでいる景色のような感じだな。


僕は何も言葉を出さずに、おじさんの方をただ見つめた。


お母さん、お父さん…。

さよなら………。


おじさんは両手に力が湧いているかのように強く合わせている。そして何か呪文のような言葉を言い始めた。僕はそんなおじさんを見てハッとして、感情が()いてきた。何か始まるような、何か僕の身に起こる気がしてきた。おじさんは何を言っているの。


おじさんの合わせている手がだんだん神々(こうごう)しく光始めた。そしてぶわぁーっとおじさんを強い風に(おお)われていく。何か来る、何か起こる。


そして、おじさんがそっと目を見開いた。鋭い目力のおじさんと僕は目が合った。僕はドクンッと大きな音がした。だんだん、おじさんの光が僕の方へ来ているように思えた。いや、光は僕の方に来てるんだ。僕は早まる心臓の音を手で抑えて、おじさんを見続けた。


僕はこれからどうなっちゃうの!!!


ー「我は、おおくにのぬし大神。我の声を聞くのじゃ」


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