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冒険の終わり、そして。

出来たら来週末にまた更新します。


応援の程よろしくお願いします。

 


「いつか必ず遊びに行きますね。俺らはこの道路の先、あそこの山の麓にある新興住宅地の更に奥にある草臥れた道場にいるとおもいますので。不動さん達もよかったら遊びに来てくださいね」


「いつでも歓迎であります!」


「草臥れたは余計でござるよ鈴木殿…」



 三人は少しテンパりながらも不動とそれぞれ握手を交わす。

 いい感じのお別れのムードが漂っている中、空気になっていた姉崎が髪をいじりながら三人の前に出てきた。

 顔を少し赤らめながら、ぼそぼそと言葉を紡ぐ。



「あ、あの、言いそびれてたけど、助けてくれて、ありがと…。あと、殴って悪かったわね。悪気はなかったの、ほんとよ?あたし、いつも手が出ちゃうの…兄弟喧嘩の癖で…」



 そうもじもじしながら恥ずかしそうに謝る姉崎の姿に、苦手意識──もといトラウマにまでなっていた鈴木でも流石に許さずにはいられなかった。

 そんな状態の女性と話した経験が全くないので強気にでれなかったのだ。



「ま、まあ、いいよ。お、俺、みみみ見た目、こんなだし。殴る気持ちも、わからないでも、ないし」


「見た目の問題じゃ……いや、ほんとに、ごめん…」


「あ、うん、もう、いいって」


「いやほんと…」


「いやいや…もう」


「いやいや…」


「はいはい、もう終わるでござるよ」


「あれ、小生もいっぱい叩かれたり蹴られたりしたでありますが…謝罪は?」


「あんたのは殴ったうちにはいらないわよ─バシッ」


「あいたぁ?!」


「拙者もついでに──あふっありがとうございます!」


「あはは!ほんときもいわねあんた達」


「お前らいつの間にそんな仲良くなったんだ…?」


「よきかなよきかな」



 こうしてしこりを残すことなく別れをすませた一行は、各々の帰路へつくのだった。


 三人を乗せたトラックは最徐行で道場へ。


 姉崎を後ろへ乗せた不動のバイクは都市部の方へと進路を向ける。  

 夕暮れ時、山の方へと消えゆくトラックの後部を眺めながら、不動は静かにトラックの方へと言葉を送り、バイクを発進させた。



「また無事で会おう、山田君、佐藤君、そして鈴木君」


「あいつらならきっと大丈夫ですよ不動様!だってだいぶしぶとそうでしたから!」


「はっはっは!それなら私たちもしぶとく生き延びねばな!」


「はい!」 



 殆どなにも得るものがなかった三人ではあったが、ここに一つの縁が結ばれた。

 この縁が後に彼等の行く末を大いに助けてくれる事になろうとは今はまだ三人が知る由もない。 





「はぁ…不動さん、かっこよかったなぁ。助けてもらった上に、銃までもらっちゃったし。まじ最高まじヒーローだわ」


「ほんと間一髪でござったなぁ。あの時はもう駄目だと諦めていたでござるよ」


「ほえー、命の恩人でありますな。それは感謝感謝であります!」


「ったく、お前が遅いからだろうがー」


「ふふふ、佐藤殿も必死に戦っていたんでござろう?」


「そうであります!何回壁や柱にぶつけて首がグキーってなったか!」


「オートマだぞこれ。不器用か」


「鈴木殿も人の事言えないような…。それにそれが佐藤殿らしさでござるよ」  


「ほえ?」


「ちっ、覚えてやがったか」



 得るものはなかったが命は助かったと、誰が言わずともお互いの無事を喜び安堵していた。

 付き合いは短くとも、生死をかけた苦難を共に乗り切ったことにより、三人の間にはこれまでの人生ではなかった確かな繋がりが生まれていた。

 友達、仲間、家族、それらに近い何か。

 言葉には言い表さなくても三人は三人共これからの人生を共に生き抜くことを決めていた。

 引きこもりでニートでコミュ障で、生活能力がほとんど皆無な三人だが、彼らはこの文明が崩壊した世界で生き抜いていく。

 彼ら三人が紡ぐ物語はまだこれから始まったばかりなのだ。  





 道場になんとか到着したトラック。

 降りた三人は足取り重く、部屋へと歩く。



「しかし、本当に得るものが何もない一日だった。手に入れたのはこの手袋と、後は…げふんげふん」


「まぁいいではござらんか、この命あっただけでも儲けものでござるよ」


「いや、しかしなぁ。あんだけ苦労したのに──お?どした?」


「いや、佐藤殿が何やら──」



 山田の視線の先、トラック後部の荷台の扉を開け放った状態で佐藤が固まっている。

 佐藤の視線は荷台の中に向いており、何やらを見てフリーズしているようだ。



「こここここここ、これえええええええええええ!!?」


「あ、どうしたよ」


「んー?中に何か?」



 どうせ大したものは入ってなかったんだろ?的な雰囲気で近づく鈴木と山田は、佐藤のところまできて、同じく中を覗いて固まった。


 彼らの視線の先、荷台の中には綺麗にラッシングされた(固定具で留められた)段ボールの箱達。

 冷蔵庫、洗濯機、テレビにエアコンに電子レンジにと、あらゆる電化製品一式が荷台の中には詰まっていた。



「「「なんじゃこりゃああああああああああああああ」」」



 あれだけ苦労して結局何も手に入らなかったと思っていたのに。

 倉庫に一杯の段ボールをみて絶望し、それらを回収できずに脱出することになって更に絶望した。

 なのに、トラックの中にはそれらが完璧の状態ですでに用意されていたのだ。

 たぶんどこかの家庭の新居か何かの折に纏め買いされ積み込まれていたのであろう一家分の家電製品。


 灯台下暗しの更に灯台下暗し。

 ご都合主義ですと言わんばかりの展開。

 これまでの自分たちの行動のすべてが無意味に帰し、更にはその後に報われるというどんでん返しのジェットコースター。


 三人共自身の心境をどう整理したらいいのかわからず、ただ荷物を眺めながらロングフリーズに突入するのであった。



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