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ワッツイズザッツ!

 


「ひ、ひぃぃ、なななななんか爆発したでありますよぉお!?」

「あれは不動殿のダイナマイトでござるな!」

「はぁん、流石不動様!─って、あんた!遅いわよ!出遅れてるじゃない!もっとスピードあげなさいよ!」

「こ、これ以上は──いた、いたいたいた!?わ、わかったであります!け、蹴らないでほしいでありますぅう!?」

「せ、狭いのだから暴れると危ないで──アイタッ!?ありがとうございます!」 

「なんで叩かれて喜んでるのよ!きもっ!つかあんたござる抜けてるわよ!それでいいわけ!?」  



 先程までの最徐行とは打って変わって急加速して暴走しだすトラック、不規則に蛇行しながらうまい具合にゾンビを跳ね飛ばしていく。


 一方バイク組の方は跳ね飛ばされ宙を舞うゾンビに巻き込まれないようにスピードを落としトラックの後方へと身を隠した。 



「流石鈴木君の仲間だ、中々派手にやるじゃないか」

「えっ、ええ、まあ、頼りになるやつらです、はい」

「はっはっは、うらやましい限りだ!おっとーZUDOON!!─我らも最後まで気を抜かずに行こう」

「かかか、かっけぇぇ」

「はっはっは、愛車でこれがやりたくてこいつを用意したまであるからな!世間には申し訳ないが、お陰様で夢が叶った」



 突如横から走り寄ってきた赤い目のゾンビ──グールの頭に不動はショットガンを一射。その後映画のワンシーンのようにスピンコックを披露する。

 大型バイクを運転しつつ片手でショットガンを回転させ、空の薬莢を排出しつつ次弾を装填する有名なワンシーンが再現された瞬間だった。

 そのあまりにも様になる不動の姿に鈴木はヒーローアニメに思いを馳せる少年のように、心底興奮している有様である。

 そして鈴木も負けじとライフルを構えるのであった。 


 佐藤の運転するトラックの活躍もあり、脱出劇も比較的容易に進んでいる。 

 トラックの走行を妨げれるゾンビなんているわけもなく、バイク組に襲い掛かれるスピードをもつグールでさえも不動と鈴木の放つ銃弾の前になすすべもなかった。



「鈴木君、実にいい腕だ。やはりどこかで習った経験があったのかね?」

「は、はい!何度かグアムなどの射撃場で!」

「ふむ、なるほど、通りで様になっている」

「あ、ありがとうございます!」



 ショッピングモールの敷地を裏門から抜け、ゾンビの密集地帯を越える。いまだにゾンビの襲撃はあるものの、会話が出来るほど余裕も生まれていた。

 だが、そんな束の間の余裕も長続きすることはなかった。

 ふいに不動が何やら感じ取り、辺りを見渡し始める。



「ん──なにか………鈴木君!注意したまえ!なにかくるぞ!」

「え!?どこにもそんな人影、は──!!?」



 開けた田舎道を走るトラックとバイク、そして前後左右から襲い掛かるゾンビの群れ。

 だがそれらの人影とは違った小さな影がその群れの隙間からちらほらと窺えた。



「鈴木君、見えるか!?」

「ふ、不動さん、あ、あれは──犬、です、赤い目をした犬が何頭か紛れてます!!」

「それは、厄介だな……」



 不動のぼやきとほぼ同時にゾンビの群れから何頭かの犬が飛び出し、彼らに並走しだす。

 犬種はばらばら、だがそのどれもが大型犬であり、普段見る飼い慣らされたワンコとは程遠い、獰猛な野性味を放っていた。



「ドーベルマンにシェパード、ハスキー!後、なんか雑種も!……どいつもすごい犬歯剥き出しでヨダレだらだらです!」

「この近くに保健所があったが、多分そこの子達なのだろう」



 前後左右を牽制する二人、だが赤い目の犬達はお構いなしに距離を詰めてくる。



「小さくて速い…十分に引き付けてから撃つんだ!外したら、やられるぞ!」

「はい!」



 赤い目をした犬はタイミングを見計らったように左右から同時に飛び掛かってくる。

 不動が右の犬に銃口を向けるのを察し、鈴木は左の犬へと照準を向ける。

 ほぼゼロ距離、二人の銃口が同時に火を噴く。

 頭部に一撃、銃弾の衝撃をその身に受け、頭部のなくなった犬達は吹き飛ぶように転がり後方へと消えていく。



「まだまだくるぞ!その調子で頼む!」

「はい!」



 銃声が三度、計6頭の犬を撃ち落とすと、不動が叫ぶ。



「弾を込める!済まないが何とか頼む!」

「ま、任せてください!」



 不動が銃身を口に咥え、左手でハンドルを操りつつ空いた右手で器用に弾を込める。

 その隙にと残った赤目の犬が飛び掛かってくるが、流れるような手捌きをみせる鈴木の手によってそのことごとくが撃ち落とされていった。



「本当に、いい腕だ!鈴木君が相棒でよかったと心底思うぞ!」

「あ、ありがとうございます!!」



 弾丸を指で挟んだまま射撃、弾込め、射撃、と手早く行い一撃も的を外さない鈴木の姿は、誰の目から見ても歴戦の兵士そのものである。

 そう、この瞬間こそ鈴木はその人生で一番の輝きを見せていた。

 そうして二人で十数頭の犬を撃退するころにはすでに辺りにゾンビの姿はなく、襲い掛かる犬ももういなかった。



「なんとか、抜けきったようだな」

「は、はい、どうなることかと思いました…」



 暫く無事に生き延びた余韻と安堵に浸りながら走った一行は暫くして見慣れた地域へと到着していた。

 トラックがゆっくりと減速して停止し、バイクもそれに合わせて停止する。

 辺りは拓けておりゾンビの姿もない。安全を確認した一行は、車をおりて集まった。



「す、鈴木氏!だ、だだだ大丈夫でありましたか!?」

「何も援護できない自分が歯がゆかったでござるよ…」

「ははは、大丈夫だって。あれくらいよゆーよゆー」



 真っ先に鈴木のもとへ駆け寄り心配する佐藤と山田。

 これ以上ないってぐらい心臓バクバクでパンツまで汗でぐっしょりの鈴木だったが、ここは余裕をみせて恰好をつける。

 だがそれが許されるほどの活躍だったのは間違いないだろう。



「不動様!恰好よかったです!無事だと信じてました!──あ、あと、あんたも、見直したわ、少しはやるじゃない…」

「皆無事で何よりだ」

「どどどど、どぅも……」

「はっはっは、もっと胸を張りなさい。誰が見ても鈴木君が一番輝いていたんだ」

「は、はい!」

「輝いて…ぶほっ」

「こ、こら、頭ばかりみるのは、し、失礼でござるよ…ぶふっ」

「こいつら……!!」


「ほんと、仲がいいわね」

「あぁ、彼らはいい仲間に巡り合えたようだ」



 逃げ回る佐藤と山田を追い掛け回す鈴木。

 呆れたような表情の姉崎と優しく微笑む不動はそんな彼らの楽しそうな姿を暫く眺めているのだった。



 ──時は少し遡り、トラック内にて… 



「あんたもっとしっかり運転しなさい!それでもちゃんと免許持ってんの!?」

「もももももってないでありますよ!?今日初めて運転したであります!」

「はぁあああ!?無免許運転じゃない!違反よ違反、犯罪よ!!」

「いたいいたい!」

「まあまあ、少し落ち着くでござる。このご時世─「うっさい!」─ぐはっ、ありがとうございます!!」 




「もっとゾンビを轢いて!不動様の援護をしなさいよ!」

「せ、精一杯でありますよぉお!」

「もう!ちょっと貸しなさい!こうやるのよ!!」

「あわ、あわわわわわわ!」

「ちょ、横からハンドル操作したら危ないでござアイタっありがとうございます!!」

「ふん!どうよ!あたしって天才!」

「あわ、わわわわわわ」 




「鈴木殿達がピンチでござる!!」

「何なのよあれ!ゾンビは人間だけじゃなかったの!?」

「ひ、ひぃいぃいい、新種であります!むりむりむりむりむりむり」

「くっ、何も出来い自分が歯がゆいでござる…」

「な、なにか出来ないわけ!?──ちょっとこれ貸しなさい!」

「あば、あっ、小生のヘルメッツ…」

「フンっ!!」

「ちょ、そんなの投げたってあた──当たった……犬の首が変な方向に曲がってたでござる……」

「これも貸しなさい!!」

「これはダメ!拙者の木刀は絶対にダメェェエェエ」

「ちっ」



 中々楽しそうにやっていた。


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