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トラブルメーカー。

 

 何事もなく店内を見て廻った三人は、意見を擦り合わせ目星をつけるとそれらを持ち帰るための準備を始めていた。



「流石にこれを持ち歩くのは無理だろうから、台車に乗せよう」



 と、鈴木は目的の冷蔵庫が入った大きな段ボール箱をポンポンと叩く。

 そんな鈴木の横では佐藤と山田が在庫が陳列されているスペースからその大きくて重い段ボールを必死の形相で引き摺り出していた。



「お、重いでありますよ鈴木氏ィ」


「す、鈴木殿も手伝うでござるよォ」



 苦言を漏らす二人を後目に鈴木はすっと風のようにその場から離れていく。手伝う気は毛頭ないようだ。


 しれっと近くに置いてあった台車に二人が四苦八苦しつつも難とか冷蔵庫の箱を乗せ終わった頃、見計らったように鈴木が戻ってくる。



「近くには台車がないみたいだ、ちょっと探さないと」


「鈴木氏ィ」


「鈴木殿ォ」



 肩で息をしている二人の批難の視線に敢えて気付かない不利をしつつ、辺りを見渡す仕草をみせる鈴木。

 その様子にこれは何を言っても無駄だと判断した佐藤と山田は視線を合わせるとこれ見よがしに深い溜め息を吐いた。



「取り敢えず次の台車を探そう、佐藤はそれ押してこいよ」


「…あいあい」


「仕方ないでござるよ…」



 当たり前のように荷物運びを佐藤に押し付けると、鈴木は先を歩いていく。

 一言言いたい佐藤だったがそれを呑み込み諦め顔で了承する。両手を空けるために近くに立て掛けておいたバットを自身のリュックに収納し始めると、そんな佐藤の肩を無言でポンポンと叩いた山田は木刀を片手に鈴木の後へと続いた。



 暫し店内を探し廻った三人だが、結局台車は見当たらない。

 残る可能性は商品を搬入出させるための扉の奥、バックヤードだけとなった。



「後はあそこだけか」


「で、ござるなー」



 軽くそんな会話をしながらも鈴木と山田はその両開きの扉へ近付く。

 そして、それぞれ左右の扉に手を掛けると、無警戒に開け放った。



「「あっ」」



 鈴木と山田、二人の声が静かに辺りに響いた。


 そんな二人の後に続いて台車を押していた佐藤はその声に反応し、「ん?」と視界が塞がれる程大きい箱の横から顔を覗かせる。


 扉が開き、眼前に広がった光景に絶句した。




 真っ先に耳に入る結構な音量で流れる山口電気のテーマソングBGM。

 だが問題はそれではない。

 開け放たれた扉の先、少し広めのその空間、あちこちに色んな箱が置かれているそんな雑多としたスペースには、作業服や電気屋の制服姿のゾンビが溢れかえっていたのだ。



「なっ!──」

「どう!──」



 条件反射で思わず出そうになった叫び、だが鈴木と山田はそれらを咄嗟に手で塞ぎ難とか呑み込んだ。


『何で』『どうして』『こんな所に』『こんな沢山』


 口に出したい言葉は一杯あるが、言ったところでどうしようもない。

 答えが返ってくる訳ではないし、それで自分達の失態がなくなる訳ではない。

 どう切り抜ける、どうやり過ごす、二人の脳裏に色々な思考が過る。


(軽率だった!)(迂闊だった!)

(どうする!)(どうすればいい!?)

(まだ気付かれてない!?)(声は届いていない!?)

(さがるか!?)(扉を閉めるか!?)

(何が正解だ!?)

(山田ァ!)(鈴木殿ォ!)

((このまま──))



 お互いに意思を伝えようと交わる視線。

 足並みを揃えて二人でこの状況を打開する。


 だが、そんな二人の思惑は、第三者の介入によって呆気なく阻止される。



「ぎぃやああぁぁぁああああああぁぁああ!!」



 辺りに轟く絶叫、全てを台無しにする破壊の一手。


 鈴木と山田がすべき事は正解を導き出すことでも、二人で足並みを揃えることでもなかった。

 そもそも思考することですらなかったのだ。

 思考する猶予も惜しむ程に早く、まずは"佐藤"を封じる、これが最善作だったのだ。



((しまったぁぁああ!またお前か!サトゥゥウウ!!))



 振り返った鈴木と山田の視線の先には、この世の終わりに遭遇したかのような表情で叫び声を上げる佐藤の姿。


 こいつの叫びはお約束なのか、よくこんな飽きも慣れもせずに咄嗟に叫べるなぁ、と思わず思考を停止して現実逃避してしまう鈴木と山田。


 だが現実はそんな二人をすぐに叩き起こす。



 うあ゛あ゛あ゛ぁぁああ゛ぁぁ



 背後から聞こえる無数の呻き。

 確認するよりも早く、鈴木は走り出す。



「逃げるぞ!走れ!」



 その後を追い、山田も走る。



「流石にこの数は無理でござる!佐藤殿も早く!」



 すれ違い様に山田が佐藤の肩を叩き、佐藤もなんとか再起動。

 狼狽しながらも二人の後に続いた、台車を押しながら。



「あ、あ、あ、あひぃ」



 そして三人に遅れること数秒後、十数体にもなるゾンビの群れも一斉に動き出した。


 我先にと店舗から飛び出す鈴木、それに続く山田。



「ぎ、ぎぃやぁああああ!!」


 気になって少し後ろを見てしまった佐藤は追い掛けてくるゾンビの迫力に、更に絶叫しながらもスピードアップ、二人の後を必死に追い縋る。



 こうして、またもや三人とゾンビ達との鬼ごっこは始まるのだった。



「佐藤殿はトラブルメーカー気質でござるなぁ」


「この疫病神がっ!」


「ひ、ひどひぃっ」







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