目覚め
ミスが酷い
チュンチュンという小鳥のさえずり……ではなくドゴン!という大きな音と錆のような酷い臭いで大地は目を覚ました。
何だ?と思いながら寝惚けなまこを擦って起きる。すると100m程離れた所から山で嗅いだことの無い異臭が立ち込めていた。
気がついた時には体が勝手に動いて、現場に向かっていた。走るのは慣れていたので息を切らすことなく現場についた。そこで大地は驚愕し、固唾を飲んだ。
そこには頭が錆び付いたネジで出来ている異形の化け物達が木を切り倒したり、足場を作ったりしていた。
またも体は勝手に動いていた。手頃な棒を持ってネジの化け物達に殴りかかった。
カーンという軽い音の後、棒は折れてしまった。
ネジの化け物はそれに怒ったのか、大地に襲いかかってくる、命の危機を感じたその時……
ブワッ!と吹いた風にあおられ、大地は3m程飛ばされ、後退りしてしまった。
するとどこからか声が聞こえてきた。
「嗚呼……と……けました……大地の……よ……実に……年と……!」
何処からかぼんやりとした音が聞こえてくる、だが大地にそれを驚く間も聞き取る間もなく、ネジの化け物は第2波の攻撃を繰り出してくる。
また突風が吹き、大地の身を守った。
このやり取りを何度か繰り返すと、転機が訪れる。
「スリープ……我が愛するネジボーグよ……」
不意に現れてきた研究者風の女の一声で、ネジボーグと呼ばれるネジの化け物は動きを止めた。
女は片目のルーペを上にあげ、サングラスをかけ、大地に喋りかけてきた。
「悪かったね、我が愛しのネジボーグが君のことを襲ってしまって、お詫びをしなければ……」
女は丁寧な物言いで詫びた、どうやらその言葉に偽りはないようだ。
「謝罪はどうだっていい、この化け物はなんだ!?どうして自然を傷つける!?」
矢継ぎ早に質問を浴びせる。女はうんうんと頷いて答える。
「そうだ……お詫びに君を実験体しさくがたにしてあげよう!君も嬉しいだろう?この私の研究に一役買うのよ!」
女は一切質問には答えず、とち狂ったことを切り出し、機械のような色形をした触手を何本も襲いかからせ、遂には大地を縛り上げた。
「スリープ……マッディの腕の中でゆっくりお眠り……」
女に抱きしめられながら、大地は眠りにつきそうになる。女の機械のような触手は妙な暖かみがあり、とても心地よい。母親に寝かしつけられている……いや、人に抱きしめられている……そんな妙な心地よさだった。
夢の中で大地は、変わった髪色をした女性に出会い、こう告げられる。
「目覚めなさい……大地の守護者よ……あなたが目覚めなければ、大地は……自然は……滅びてしまう、さぁ……目覚めるのです!」
大地は言葉に誘発されるが如く、目を開ける、するとそこには恐ろしい光景が広がっていた。
いつの間にか服を剥かれ、鉄のような物で出来た固いベッドに寝かされ、触手に体をなぞられている。
余りの状況に声が出なかった……というより、喉が痙攣したようにブルブルと震えていた。
「お目覚めかい?実験体しさくひんちゃん❤️」
女は自分の体を舐めるように見ながら、端末をポチポチしている。
「は、離せ!俺を解放しろ!」
大地は必死で訴え、女を睨み付ける。
「うーん……よし!きーめた!君はキャノンボーグにしてあげよう!」
女は全く大地の話を聞き入れない、手元の端末を弄り、大地の体を改造する手続きをしているとき、先程の夢に出てきた女性が話しかける。
「叫びなさい!自然を思い出しなさい!このままじゃ貴方は機械の仲間入りよ!」
大地は叫ぶ意味が解らなかったが、やけくそになり叫んだ、叫んだ、叫んだ!
「うがらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
手元の端末を弄っていた女は別段驚きもせず、改造手術をスタートさせるボタンを押す。
その時、不思議なことが起こった。
大地の四肢に鎖が巻き付き、大地の体に生き物の外骨格のような鎧が身に付く、それと同時に触手は全て引きちぎられた。
女は今起こった異常事態に驚きながらも、残された触手を体内に戻す。
「貴方は大地の戦士「ガイア」よ、さぁ!あの女を倒しなさい!」
大地は、脳内に話しかけてくる女性と変わり果てた自分の姿に驚きながらも、名乗りを上げた。
「俺は!大地の戦士、ガイア!自然を汚す者は絶対に許さん!」
こうして、大地の戦士「ガイア」は生まれた。
ガイアの物語はまだまだ始まったばかりだ。