戦いを終えた聖女は魔王城に住むことになりました
魔王を倒すべく魔王城へと足を踏み入れた勇者一行は戦いの末、遂に魔王を追い詰めた。
魔王の体に傷をつけられる聖剣を手にした勇者
魔王の攻撃さえも防ぐ事ができる鎧を装備した騎士
魔王の魔力を吸い取る杖を持った魔導師
そして魔を打ち消す聖魔力を持った聖女。
魔王は傷つき、もう攻撃する余力はない。
「聖女!後はお前の聖魔法で魔王を消し去れ!」
聖女は倒れている魔王へ近づくと掌に聖なる光を集め始めた。
「…皆さんは、早くこの城を出てください…、聖なる光を直接見れば失明します、聖なる光で眼の光を失えば二度と治せません…」
それを聞いた勇者一行は、仲間を置いていく事を渋りながらも出口まで走っていった。
そして城を出た瞬間、魔王の部屋から今まで見たことがない程の太陽よりも強い光が発せられ、同時に魔王の苦しみの叫びが聞こえてきた。
「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!」
だがまだ聖なる光はおさまらず、魔王の悲鳴も続いている。
「一体中で何が……」
「聖女…無事に戻ってきて…」
一時間程経ち、やっと聖なる光は見えなくなったものの、聖女は城から出てこない。
「俺達で迎えに行こう!」
だが勇者が城にまた入ろうとした時、扉がひとりでに閉まり、鍵までかけられてしまった。
「どういう事だ…」
「まさかまだ魔王が生きて…?」
「聖女…」
勇者達は信じた、聖女が必ず戻ると。
そして扉の鍵の開く音がしたと同時に、ぐったりとした聖女が姿を現した。
仲間が手を貸そうとしたが、聖女はそれを制し少しよろけながらも自分の足で歩き始めた。
魔王を倒した勇者達は、国へ戻ると休む間もなくすぐさま謁見の間へと通された。
「勇者、騎士、魔導師、聖女、よくぞ魔王を倒したのねん、褒美をとってつかわすのねん」
バカ真面目な勇者達に対し、この力が抜けるような話し方をしているのはこの国の王だ。
「勇者達には~確か魔王領の近くに誰も使わない荒れ地あるからあげるのねん、そして聖女にはわしの息子と婚約させてあげるのねん」
王の横にいる王太子は顔こそいいものの、ずっと鼻がたれている、聖女を見つめてはいるが全く目が合わず、見ているのは胸、そしてたまに気色悪くニヤける、そして影に鼻水を拭いてもらっている、ようはバカ王子である。
死に物狂いで戦った褒美がいらない荒れ地とか、バカ王子と婚約だとか、それぞれがなんか府に落ちない顔をしつつも王に感謝の言葉を述べたが、聖女だけは真剣な顔で王に言った。
「陛下、大変ありがたいお話ですが、私は殿下と婚約はできません」
「なんだと!魔王討伐したからといい気になって!」
「聖女のくせに他の褒美をねだるのか!」
宰相や大臣、お偉方は激怒したが聖女は凛とした表情を変えない。
「何か理由があるのか?申してみ?」
「陛下、大変感謝致します。私は殿下と婚約できない理由は、この後すぐにでも魔王城へと向かわねばなりません」
「魔王は倒したんではないの?」
「はい、私の聖魔法で魔王は消滅しました…ですが消滅する寸前、魔王は最後の力を使い、闇の入り口を開いてしまったのです、そしてそこから大量の魔物が這い出てきました」
その話を聞いて、勇者達はハッとした。
「じゃあ…聖女が中々戻らなかったのは…」
「ええ、魔物達を押さえていました…ですが魔王を消滅させるためにほとんどの魔力を使ってしまい、やっとできたのは結界を張る事だけ、魔王を消滅させた後の力で張った今の結界は一週間ともちません……しかも魔物達は四天王クラスの強さを持ちながらも知性がないため魔物として恐ろしいまでの残虐性を持っています」
謁見の間は騒然となり、勇者達は絶望的な表情を浮かべ、お偉方はぎゃあぎゃあと騒いでいる、しかし聖女はそんな事は気にもとめない。
「魔物達を消滅しつつ、入り口を塞ぐ事ができるのは私しかおりません、その期間は50年はかかるでしょう」
聖女にそう言われ、50年後は流石に王は生きてないだろうし、50年後は聖女と言えどもうババアになっている為、王は口を尖らせ子供が拗ねたような顔を浮かべながらも渋々承諾、隣の王子は聖女と婚約できない事がショックなのか鼻水は両方から出始めた。
王から魔王城へと向かう事を許された聖女は、即魔王城へと向かった。
城や町から見える所まで、聖女は堂々とした足取りで歩いていたが、スタスタからタッタッタッタ、そしてスキップスキップからのツーステップツーステップ、時には側転し魔王領に着くといつから持っていたのか腕にカゴを下げ、おぞましい色や模様の木の実や顔のついた果物をもいではカゴに入れ、いつの間にか両腕にカゴを持ち、城へと着くとご丁寧に扉をノックした。
ガチャリと大きく重い扉が開くと、頭に角をつけたかなり美形の男が顔を出し聖女を見るなりとても優しい顔、聖女の方もその男を見るなりさっきまでの凛とした顔はどこに行ったのか、今は完全に乙女の顔である。
「きちゃった」
「おう、入れよ」
甘い表情で聖女を見つめるこの男、実は魔王である。
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魔王を消滅させようとしたその時、魔王は聖女へ言った。
「最後に、この仮面外してくれ」
「………」
「もう俺には何の力も残ってない、ただ最後にお前の美しい顔をハッキリと見ながら死にたくてね」
「そうですか、では望み通りに」
そう言って魔王の仮面を外した聖女は、魔王の素顔を見て時が止まった。
「なにこのイケメン」
聖女は魔王に一目惚れした、しかし魔王も戦っている最中から恋愛的意味で聖女を狙っていた、両思い…じゃあ付き合っちゃう?とはなったが聖女が魔王に止めを刺さず、『好きになっちゃった』と言って世間が許すだろうか。
勇者達は真面目すぎて聖女が操られたとか言いそうだし、王と王子はバカだし、お偉方は何かしら嫌味を言いそうだし、絶対引き離されるだろうし、王と王子はバカだし。
王国に文句を言わせずに魔王城にいるにはどうすればいいのか、二人が考えたのが、聖なる光に見せかけられるくらいワット数をあげた魔王城の照明をビカビカとさせ、そこで魔王や他の魔物達にも叫んでもらったのだ。
そしてそれが終わり一端帰る時に、別れを惜しんだ魔王からの抱擁とキス、それにより大分時間が長引き、聖女が魔王城を出る時には身体的興奮が冷めておらず、ぐったりして出てきたという訳だった。
後は城に帰りありもしない闇の入り口が開いたとか、魔物を封じるのに50年間かかるとか……。
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そして今に至る。




