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★Koharu’s point of view4

「さて、邪魔者も居なくなったところで続きをしましょうか」


そう言って神谷先生は挑発的な笑みを浮かべていた。


「一体何が目的なんですか?」


まずは彼女がなぜこんな事をするのか気になった私はそこから質問した。


「んー、目的ね・・・。まぁ単刀直入に言うと、あなたの好意が優先生の迷惑になるから身を引きなさいって忠告したい感じかな」


「だから、それはあなたには関係ないとさっきも言いましたよね?」


自然と口調が強くなってしまう。


「ねぇ、さっきも思ったけどあなた自分が否定してないの分かってる?それって私は優先生の事が好きですって言っているようなものよ」


違う、私は優さんを異性として好きなわけじゃない。お母さんとうまくいって欲しいだけで、彼をお父さんみたいに思ってるつもりだ。

だから、優先生に必要以上に近づくこの人に対して敵意を持っているだけだ。


「何度も言ってますが私がどう思って様とあなたには関係ありませんよね?」


細かい事情を彼女に話す気がない私は取り合うつもりはない。


「まぁ、関係ないとすぱっと言えない事情が私にもあるのよ」


そう言って彼女は少し寂しそうな顔をした。


「それじゃ関係ないと言えない理由も当然教えてもらえるんですよね?」


正直その事情とやらには興味はないが、そう言えば彼女が引き下がると思った。


「そうね、あなたから見たら確かに私がただのお節介に見えるでしょうね。聞きたいなら話すわよ、少し長くなるけどいいかしら?」


予想に反して、話してくれるらしい。

今更興味がないとは言いにくい雰囲気だったので私は黙って頷く。


「えっと、これから話す事は出来たらクラスの子とかには言わないでね」


「言いふらされて困る様な話なら最初からしなければいいじゃないですか」


私の反論に苦笑いを浮かべているが、それで話を止める気はないらしい。


「分かったわ、別にあなたがこの話を誰にしようが好きにしたらいいわ」


そう言って話し始めた彼女。最初は聞く気にもならなかったはずの私だったが、結局話が終わるまで一言も口を挟めずに黙って聞き入ってしまった。




神谷先生が在学中に起こした事件の話が終わり、暫くの間沈黙に包まれた。

その後に彼女が言ったのは、最初の挨拶を冗談交じりでしたつもりが、優さんの事で過敏に反応する私を見て、昔の自分と重ねて見てしまったとの事だった。


「あんまり聞いてて気分の良い話じゃないわよね。私は別にあなたの恋心を否定したいわけじゃないの。ただ、相手の事も考えて欲しいだけなのよ。それがあなたの為にもなると思っているわ。一時の感情に流されないで欲しいの」


私の真意を知らない彼女は未だに誤解している。

でも本当に誤解なのだろうか?

神谷先生の過去の話を聞いてしまった事により、自分の優さんへの想いが何なのかますます分からなくなってしまった。

そんな私は、何も言わず黙っている事しか出来ない。


「まぁ、今は何を言っても無駄かもしれないけどよく考えてみて。あと私は色仕掛けを使ってでも優先生から稲葉先生に繋がる何かを引き出してみせるから。だからもう少しの間だけ我慢してね」


そう言ってウインクをしてくる彼女。同性の私から見ても神谷先生は魅力的な女性だと思う。

悔しいけど、一瞬だけ見惚れてしまった。

敵意はないという事は分かっても、今の表情を見てしまえば優さんが陥落するのではないだろうかと危機感を覚えた。


「あの、色仕掛けは良くないんじゃないでしょうか、私達生徒の手前をありますし・・・」


反論する声もだんだん小さくなってしまう。


「優先生は鉄壁のガードなのだから私程度の色仕掛けなんて心配ないわ。それよりもあなたが気にするべき人は他にいるんじゃないかしら。あなたもさっきのお弁当見たでしょ?最近彼女が出来たんじゃないかって職員室はその噂で持ちきりよ。どうせ私の事なんて眼中にないわよ」


それを聞いた途端、ズキッと胸が痛んだ。


「せ、先生はもし自分の大切な人が好きな人を好きになってしまったらどうしますか?」


無意識に出てしまった質問に慌てて口を塞ぐ。

私はなぜそんな質問をしてしまったのだろう。


「言ってしまった後に口を塞いでも意味ないじゃない」


そう言って柔らかな笑みを浮かべる先生。


「んー、難しい質問ね。多分答えなんて人それぞれだと思うわ。でも参考までに私の意見を聞きたいと言うなら、私なら絶対に諦めないかな」


「それが大切な人を苦しめる事になってもですか?」


「あなたがその人を大切に思っている様に、その人もあなたを大切に思ってるんじゃないの?もしあなたが相手が自分の為に身を引いてくれた事を知ったらどう思う?争わなくてラッキーって思う?」


「いいえ、喜ぶより申し訳ないと思ってしまいますね」


「大抵の人はそう思うんじゃないかしら。だから私はその大切な人の為にも諦めたりしない。でももしも相手にあなたが諦めた事を悟られない自信があるなら、諦めるのも一つの選択肢かもしれないわね。私は絶対無理だからそんな選択はしないけど」


「ねえ、先生。人を好きになるってどういう事なんでしょうか?」


「またとんでもない質問をしてくるわね。あなたもしかして今まで誰かを好きになった事ないの?そんな訳ないわよね、優先生を見る目は恋する乙女そのものだったし。まさか初恋とか?この子もしかして自分の気持ちに気づいてない?」


先生の声が小さくて途中から何を言ってるか聞き取れなかったが、何故か微笑ましいものを見る様な視線を感じる。


「人を好きになる事については、慌てなくてもこれから少しずつ分かっていくわ。それとあなたの場合、何か特別な事情がありそうね。その事情が分からないから無責任にアドバイスしたくないのだけど一つだけ忠告しておくわ。まずは自分の気持ちと向き合いなさい。無理に自分を押し殺す必要なんてその年で覚える必要はない。それと、あなたの場合は軽はずみに友達に相談しない方がいいわね」


先生は私が自分の気持ちを理解していない事に気づいている様だ。


「もし考えても答えが出なくて誰かに相談したくなったら必ず私に連絡してきなさい。その代わり、その時はどんな事情を抱えているのか包み隠さず教えてね。あとこれは忠告だから肝に銘じなさい。優先生に近づく人に対して敵意を抱く事を我慢しなさい。あなた分かり易すぎるから見ていてすぐ分かるわ。もっと凛としてなさい」


そう言って優しく微笑みかけてくれる先生に黙って頷く。

先生は、私の頭に手を置きポンポンとそっと撫でてくれた。


「はぁ、優先生もこんな純粋な子に何をしたんだか。類は友を呼ぶとはこういう事なのね」


また先生が何かを漏らしていたが、頭の上に置かれた手の温もりに意識を取られていた私には聞こえなかった。

神谷先生は、私が思っている様な人ではないのかもしれない。この人が優先生を好きじゃなくて良かったと、私は心底安心するのだった。

感想をたくさんいただいた後に書くのってすごいプレッシャー感じるものなのですね。がっかりさせてしまったら申し訳ないですが、こんな感じに繋げてみました。


読んでくださってありがとうございます。ブクマ・感想・評価、とても励みになっております。誤字脱字報告ありがとうございます、本当に助かっております。皆様、これからもどうぞ宜しくお願い致します。

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