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1話 金髪豚野郎と呼ばれて

 どうも、黒木場流星です。僕は、今、日本最難関の東京大学の2年生です。

スペックを紹介します。身長185センチ。成績優秀、スポーツ万能。学生の傍ら、モデル業と投資で年収2000万のチート大学生です。

 次に1年前のスペックをご紹介します。身長、163センチ89キロ。自他ともに認めるブ男で、高校時代のあだ名は「ガリ勉ブタ野郎」です。通称ガリブーです。バイトは20件落ちました。

 こんな僕がなぜ成功するに至ったかをご紹介します。


1年前の4月。


「あなたは、勉強が得意なんだから、勉強を頑張りなさい。」

 母のその言葉だけを信じて、小さなころから勉強一筋の人生だった。地元の有名小学校に入り、次いで、有名中学、有名高校に進み。気が付けば、僕は、赤門をくぐっていた。勉強さえがんばっていれば、成功できる。女の子にもモテるようになる。そう信じて、遊びも、恋愛にも目を触れず、クラスメイトにいじめられても、女子にキモがられても、運動神経が無くて馬鹿にされても、必死に机にかじりついていた。

 だが、僕の人生のさなぎの時期は終わった。僕は、大学に入ってから、大きく羽ばたくのだ。僕の人生は花の時代を迎えたのだ。


 そうなるはずだった。


「黒木場って名前負けしすぎ。」

「え?もしかして私に告白してんの?鏡見なよ。」

「その顔で金髪は無いわー。金髪の豚!中国では縁起いいらしいけども!」

「てか、学生時代なにしてたの?話面白くなさすぎ!」

「君は、ウチには合わないと思うよ。東大なら家庭教師でもやったら?」

「黒木場さん。誠に申し訳ありません。相手方に履歴書を送ったところキャンセルされました。え?時給を下げる?いや~、相手方が女性をご希望なので、また相手方が決まり次第ご連絡させていただきます。」

「お兄さん、居酒屋どう…あ!やっぱり大丈夫です。」


 僕は、大学に入学することによって、2つのものを失った。希望と個性である。

 僕は、高校までは、勉強さえがんばっていれば、幸せになれるという希望を抱いていた。その希望はもろく崩れ去った。

 僕は、高校までは、学年で一番成績がいいという個性を持っていた。だが、東大ではみんな勉強をできるし、僕より賢い人もたくさんいた。そういう人たちは、僕が努力したところで、手に入らないほどの頭脳を持っていた。

 僕は、すべてを失った。もう笑うしかなかった。


「ふふふ。はっははあぁぁぁああーーーーーーーー!!!!!!

 殺せよー!!!おい!神様!!!!?そんなに俺が嫌いならいっそのこと殺せよーーー!!!」

 日中の公園で叫んだ。

「なぁーにが、『天は自ら助くる者を助く』だぁーーーー!!!!救ってくれよ!!!!?僕に人権はないんですかぁぁ!!!?」


「君ちょっと来なさい!」

 肩を叩かれて振り返ってみると、そこには警察官がいらっしゃいました。


「近隣住民が迷惑しているんだ。奇声を上げないように。わかったね?」

「はい…。気を付けます。」

 課題を終えた僕の楽しみはネットサーフィンだ。色んな記事を読んだり、動画を見たりしている。頭を空っぽにして、玉石混交の情報を浴びる。この時間が僕にとって一番の幸せだ。


「ん?なんだこれ?」

 広告をクリックしてしまったらしい。


「えーと、『願いが叶う隕石(本物)』宇宙からの神秘。この隕石さえあれば、あなたの願いが3つ叶います。願い事に制限はありません。富、名声、地位すべてが思いのままです。」


「へー…。」

 いやいやいや、突っ込みどころ多すぎでしょ!?ありすぎて、どこから突っ込んでいいかわからないよ。


「一体、どんな会社が出してんだ?こんな商品。」


『ご購入ありがとうございました。』

「は!?ワンクリック詐欺かよ!ふざけんな!いくらだよ。」

『ご請求額は税込み1万9,800円です(笑)』

「(笑)じゃねーよ!は?稀にみる詐欺商品だな。しかも、高いよ!絶対訴えてやるからな。クーリングオフしてやる。」

 その日のネットサーフィンは、詐欺に遭った際の対策についてだった。まあ、来月のカード支払いで、引き落としがあったら、本格的に動くことに決めた。


1週間後の夜


「なんだこれ?」

 郵便受けに片手サイズの段ボールが入っていた。お母さんが何か送ってくれたのかと思い特に考えもなく開封した。


『ご購入ありがとうございました。これは、3つの願いが叶う隕石です(笑)宇宙の神秘です(笑)願い事を3つ言ってから眠ってください(笑)朝起きたら人生ウハウハです(笑)

ps.(笑)』


「笑いすぎだーーーー!!!ここまで人をなめた詐欺もねーよ!いや、騙してもいいよ?いいけど、もっとちゃんと騙そう!?」

 もう一枚紙が入っていた。


『請求書 コンビニにてお支払いください。』


「あれ?後払いなんだ…。結構親切だな。まあ、払わないけどね。」

 隕石を取り出してみた。紫や紺のような色をしていて、プリズムのように光を放っている。宝石だと言われても信じるレベルの輝きだ。それに、想像よりも重い。卓球のボールほどの大きさなのだが、5キロほどの重さがある。隕石だというところまでは本当かもしれない。


「まあ、隕石さんお願いを叶えれるもんならやってみてくれよ。『高身長イケメン』で、『スポーツ万能の体』で、『女にモテる』ようにしてくれよ。」

 何も変化は起こらなかった。ダメもとだったけど落ち込む。石を床に投げ捨て、眠った。



「ん?体が軽いな。それに部屋も少し狭くなってないか?」

 朝、目覚めると不思議な感じがしたが、気にせずに洗面台に向かった。


「へ?どちら様でしょうか?」

 鏡の前には、僕ではない僕が映し出されていた。とりあえず、石を拾い上げた。そして、請求書を持ってコンビニに行くことを決めた。僕は、1万9,800円で人生を手に入れた。

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