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盛岡三大麺・『わんこそば』(盛岡探訪、前編)

★夏休みスペシャル前全中後編となります

 夏休み、盛岡にやってきました。

 雪姉ぇと、夏香(なつか)ちゃんと買い物とグルメ探訪を兼ねて。


 郊外のイオンショッピングセンターで洋服や小物をひとしきり買い物し、昼になって盛岡市内へと移動。

 市内を散策すると城址(じょうし)公園の石垣が立派で、ものすごく大きな街路樹が木陰を作っている通りもある。それに街の中を清流が流れていて、子供たちが水遊びをしていたのにはびっくり。

 じゃぶじゃぶと入って遊べるほど綺麗な川が街の真ん中を流れているなんて。

 盛岡はそこそこの街なのに自然も豊か。そんな印象です。


 中津川にかかる橋の欄干から川を見下ろすと、夏の陽光をキラキラと反射する水面から、川底が透けて見えます。


「きれいな川……! あ、魚だ!」

 時折、素早く小魚が群れ泳いでいる様子がわかるほど。

「あの色は山女(やまめ)ね」

「わかるの!?」

「わかる」

 夏香(なつか)ちゃんが野生児みたいな眼差しで湖面を睨んでいる。そのまま飛び込んで捕獲しそうな雰囲気。


「この中津川(なかつがわ)には、秋になると(さけ)(のぼ)って来るんだよ」


 雪姉ぇが街のなかを流れる清流を眺めながら言う。


「え? サケって……あの、シャケ?」

「そうだよハルちゃん、お店でパックで売ってる切り身のシャケだよ!」

「き、切り身……シャケ」


 私の表情から疑問を察した夏香(なつか)ちゃんが先回り。一瞬、(サケ)の姿が思い浮かばず、オレンジ色をした「切り身」と白いトレイが思い浮かんだのはそのとおり。


「でもね、切り身が泳いでるわけじゃないからね」

「わ、わかってるわよ!」


 川の横に立て看板があり、鮭の写真と説明があった。

 それによると宮城県の仙台にある北上川の河口から、ここ盛岡までおよそ200キロ。『河口からの鮭の遡上は日本最長級』とある。

 卵から川で生まれて4年。太平洋を回遊し、やがて生まれ故郷の河川に戻ってくるのだとか。しかも、太平洋から約200キロもシャケが遡上してくるなんて。


「200キロも泳いで産卵て……」

 目的は産卵のため。そのあとは死んじゃうとか悲しすぎる。


「なんで鮭さんは、そんな苦難の道を選ぶんだろうね」

 夏の光を浴びて揺れる水面を覗き込みながら、しみじみと思いを馳せる。

 太平洋を何千キロも泳ぎ成長した鮭が、卵を生むために生まれ故郷の川に帰ってくる。

 そこにはどんなドラマがあったのだろう……。故郷を旅立ち、出会いと別れを繰り返し、成長する。そして困難に立ち向かい、命を繋ぐ。私の頭の中では某海外有名アニメの名場面がモヤモヤと上映されていた。


「卵を産むなら海辺で簡単に済ませればいいのに」

「そうだよ。流れるプールを逆に泳いだら、10秒ぐらいでヘトヘトになるじゃん」

「無理。私じゃ10メートルも上れないよぅ」

「そうだよね……」


 私達は絶対、鮭にはなれない。


「魚の産婦人科をさ、海辺につくってあげればいいと思う」

 夏香ちゃんが閃いた! とばかりに顔を輝かせる。

「夏香ちゃん天才、でもそれは政府の仕事だよね!」

「ハルちゃんも大人の意見!」

「えへへ、そう?」


 私と夏香(なつか)ちゃんが真剣に鮭の身を案じたところで、雪姉ぇがくすくす笑いながら「腹も減ったし、そろそろ昼にしようか」と提案した。


「まさか……この流れでシャケ定食?」

「イクラ丼とか……」


 思わず顔を見合わせる。

 観光牧場で「子羊可愛い!」と言いながらジンギスカンを食べるみたいに、鮭の苦難の旅に思いを馳せながらシャケとイクラを食べるのは流石にちょっと……。

 

「いや、シャケとイクラは海辺の町で食べることにしよう。今日はせっかく盛岡に来たんだから、『盛岡三大麺』に挑戦、なんてどう?」


 びし、と雪姉ぇが親指を立てる。


「盛岡三大麺!?」

「なにそれ、なんか凄い」

 ビシッとポースを決めた謎の三人衆のシルエットが空に透けて見えた気がした。


「えーと。解説すると、『盛岡冷麺(もりおかれいめん)』、『盛岡じゃじゃ麺』、『わんこそば』の総称ね。なんやかんや、色んな事情があって、盛岡あたりで個性的な麺料理が発展したらしい」


 詳しくはネットで検索! と実に分かりやすい解説をしてくれる雪姉ぇ。


「あ、『わんこそば』は知ってる!」

「大食い競争で見たよ!」

 (わん)に入れたお蕎麦を、無限に食べさせられる競技をテレビのニュースでやっていた。百杯とか、兎に角たくさん食べるフードファイトな麺料理。


「でも、ちょっとフードファイトは無理」

「私も、ダイエット中なので……」

 私と夏香(なつか)ちゃんは同じ意見。できれば普通のランチがいい。


「そう言うと思った。じゃぁ、汗をかくのとかかないの、どっちがいい?」


「選択肢が2つ?」

「『盛岡冷麺(もりおかれいめん)』と『盛岡じゃじゃ麺』ってことね」


 どうやら『盛岡じゃじゃ麺』は汗をかくらしい。暑いので冷たいのが良い。


「涼しそうな冷麺がいいです」

「あ、わたしも」

 夏香(なつか)ちゃんの意見に賛同する。


「よし、じゃぁ決まりだ」


 というわけで、『盛岡冷麺(もりおかれいめん)』を食べに行くことに。

 いったいどんな麺なのかしら。


<つづく>


★わんこそばというより冷麺、むしろ「鮭」のお話でした。

ちなみに200キロ川を遡上してきた鮭は食べられません。

 体はズタボロで痛々しく、卵を産むと死んでしまいます…。

(普段口にする鮭の切り身は海で獲ったもので、イクラも同様です)


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