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黒き覆終者  作者: 苺 けちゃ
第一章 堕天
1/3

プロローグ

 赤く、紅く、朱く。


 全てが赤く染まっている。否、全てが赤に染まっていく。

 灰すらも焦がす豪火に包まれる建物。あんなに青かった空さえも、灼熱に照らされ赤く染まっている。

 朱をまとう街の中、幾重にも響く、人の悲鳴。耐えることなく続く断末魔の叫び。


 赤に染める者、赤に染まる者、赤に染まっている者、赤、赤、赤、赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤…。


 終わらない絶望。止まらない蹂躙。消えゆく希望。


 端から端まで、赤が転がり、生が消えゆく。


 正しく、地獄絵図。


 かつて、絶対の平和を謳ったエルシア皇国は、平和の象徴により、今、自滅をたどりゆく。


 平和の末路はいつも、死だ。


 程なくして、静寂が訪れた。


 最後に聞こえたのは誰の悲鳴だっただろうか。いや、もしかすると、自分の悲鳴だったかもしれない。いや、そもそも悲鳴なんて聞こえていただろうか。


 違う。違う。違う。


 聞かなかった、悲鳴を。もう、傷つきたくなかったから。

 見なかった、現実を。もう、絶望したから。


 でも、理解してしまう。

 この静寂は、生が消え尽くしたことを表しているのが。彼らの全てが赤に染まりきったのだということが。


 消えたくないと叫ぶ、死にたくないと願う、そんな命がもう残っていない。


 全て消えた。私の周りも全て。ただの赤色の何かへと変わり、消えていった。


 もう、聞きたくない。もう、見たくない。もう、知りたくない。もう、考えたくない。もう、苦しみたくない。もう、生きたくない。……でも、死にたくない。


 何度も思った。何度も考えた。そして、何度も願ったのだ。



 「……助けて」



 そう呟いて、私は意識を手放した。


 ここに、皇国は滅びを迎えた。






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