3月10日 3番勝負! The following music photograph
3月10日、天候曇りのち晴れ。
田中映写と温泉津=ヒューズベルト=来夏の撮影5番勝負。
1番勝負、くるみとみるくの双子の人物写真。瀬島蒼龍の提案。勝者、温泉津=ヒューズベルト=来夏。
2番勝負、ベーカリーのホームズの風景写真。日向蓮華の提案。勝者、田中映写。
―――――――――5番勝負のうち2番目までの勝負を終えて、お互い1勝1敗のイーブンであった。撮影5番勝負、残っているのはあと3勝負。それぞれがお互いに相手の事をライバル視しながらも、残っている3つの勝負を楽しみにしつつ、不安に思っているのだろう。
なにせ、残っている3勝負を考えたのは僕、天塚柊人。水鏡栗花落。大神義愛の3人が考えた勝負なのだから。そして3月10日の3番勝負が今日、始まろうとしていた。
「3番勝負、やらせていただきたいと思います」
ギターを抱えた大神義愛がそう言っていた。
「――――――――3番勝負は私、大神義愛が今から弾く曲のイメージ写真を、4番勝負が始まるまでに撮って来てください」
そう言いつつ、義愛はギターを弾き始める。同じような心地良いコードが何度も何度も繰り返すように進行して行って、何だか聞いていて心地良いリズムが僕の耳に聞こえて来る。
繰り返される、聞き心地の良いギターの音達。
僕と水鏡、映写の3人は心地好く聞いているけれども、ただ1人来夏だけが微妙そうな顔をしていた。
(カノン……コード……)
僕の頭の中に、そう言う言葉が繰り返されていた。
カノンコード。日本人が好きとされている音楽のコードのリズム。多くの様々な音楽に使われている、似たようなリズムの旋律である。彼女、義愛が繰り返しているのは、そう言ったコードなのだろう。
だからこそ、日本人である僕や水鏡、映写には良い音楽に聞こえて、アメリカ人のハーフである来夏には微妙そうな音楽に聞こえるのだろう。
そして弾き終った義愛は、まっすぐにこっちを見ていた。
「……1枚、写真を撮影してください。
今の音楽に相応しい写真を、明日の4番勝負までに撮影して来てください。
審査員は――――――――澤鐘日花里。音楽を聞いていない彼女に分かるように、写真を撮影してください」
そう、冷静に、丁寧に、そして辛辣そうな様子で大神義愛はそう言っていた。
映写と来夏は複雑そうな、難しい顔をしながら、3番勝負に向けて準備を始めていた。