3月7日 来夏と映写の写真対決
3月7日、天候曇り時々晴れ。
うろな町の若き写真家。
中学3年生の温泉津=ヒューバート=来夏と、高校生の田中映写の2人。同じく写真を撮る2人であるが、若き芸術家の2人はそれぞれに写真に対して情熱を持っている。
芸術はいつだって独創的にして、民主主義である。
記憶に残るような独創的な物こそが好まれ、多くの民衆が支持した物が芸術品となる。
「―――――――――――芸術家はいつだって、自身の美意識と他人の美意識を持つ。だからこそ、芸術はいつだって争い合うのだ。芸術の価値を決めるのは他人であって、決して自分では無いと言うのに。争う必要などないと言うのに。
……こんな感じでいかがでしょうか? 天塚さん? これがあなたの望んだ水鏡栗花落ですか?」
「その言葉さえなければ完璧だったよ」
と僕、天塚柊人は水鏡栗花落に対してそう返した。まぁ、賢明な人ならば既に分かっていると思うけれども、今から来夏と映写の写真対決が行われるのである。
「写真撮影は技術。そして確固とした経験が物を言う。だから、この勝負は私の勝ちに決まっているのだ」
「PhotoはHeartで撮る物。SkillやExperienceは関係無いと思いますよ?」
来夏と映写はそう言いながら、お互いのカメラを見せつける。
来夏は天狗に買ってもらった新品のカメラを、そして映写は2枚のプリクラが貼られた古いカメラを。それぞれ自分の相棒を相手に見せつける。
「――――――――今回の戦いは5番勝負。
3月8日から12日までの5日間の間に写真を撮影してそれぞれ勝負します。その5枚の写真を撮り合い、先に3枚私達に『良い!』と思わせた方が勝ちです」
「戦いは同じテーマで行う。俳句でも同じ写真で詠みあう事によってそれぞれの実力が判断出来る。――――――――だから、同じ風景で2人のセンスがどう光るか? それを見せて欲しい」
最初は2人のカメラの力がどちらが上かと言う事を、宮林咲と霧島早姫の2人に頼まれたのだ。それがここまでの対決になるとは……。
まぁ、ここまでちゃんとお膳立てをしたので、ちゃんとした勝負にして貰おう。
「では、明日は人物写真です。けれども、ただの人物写真ではないので、気を付けてくださいね」
「―――――明日をお待ちくださいませ」
そして僕は水鏡栗花落と共に2人から離れた。まぁ、明日からの撮影対決が楽しみである。