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うろな高校駄弁り部  作者: アッキ@瓶の蓋。
孔雀小明の章
86/93

3月1日 卒業式の裏側

 3月1日、天候晴れ。

 春麗らかな今日この日、3月1日。

 今日はうろな高校の卒業式である。3年生の多くはこの卒業式を終えた後、後輩や友人、先生達と最後の別れを済ませているのだろう。

 そして僕はその3年の卒業式の後、大忙しだった。


「これで24人……。まぁ、後6人くらいやらないといけないけれどもね」


 卒業式を迎えたのはそんな誰かと会う予定の3年生だけではなく、誰にも会えないような人間も居る。そんな誰にも会えないような寂しい人間にも世間体と言う物がある。卒業式に誰からもお見送りされないような子が自分の我が子だと、親としても悲しくなるだろう。

 僕はそのために、そんな彼らと写真を撮影する予定になっている。まぁ、一応卒業式を終えた我が子と、写真撮影するほどの仲の後輩が居ると言うのは親としても嬉しいだろう。


「……まぁ、女性も居るし、悪くはない仕事だ」


 あくまでも駄弁り部としての代替案なのだが、これが結構好評で、もしかしたら来年もやるかもしれないくらいである。その際にはうちの部員も何人か手伝わせておこう。流石に男子1人じゃ味気ないし。


「また変なやり方をやっているんですね……」


 と、後ろからそうお声がかかる。振り返るとそこにはムスッとした孔雀小明の姿があった。


「私ならば、彼らに今からでも無理矢理写真を撮って貰う図々しい人間になれと言う助言を行います。そうしないと、この先困るのは彼らです。他人にお願いして写真撮影を行うなんて……」


「世の中の人間は、そこまで図々しく出来る人間が多い訳じゃない。だから、彼らは親しい人が居ないのだから。友人が居ないと言う訳では無いが、彼らは奥ゆかしい、もしくは勉強に人生を捧げて来た人達なんだろうよ」


「物は言いようですね……」


「人生は詭弁だよ」


 と返す。その言葉に彼女は納得出来ていないようである。まぁ、自分も孔雀の考え方の方が正しいとは思う。けれども、決してそれが出来る人ばかりではない。

 彼女の答えは【相談】として正しいが、それが出来る人ばかりではないのだ。それを彼女には分かって欲しい。


「ところで、彼女は? 水鏡栗花落さんは?」


「水鏡? 彼女がどうした?」


「あなたのおかげで考えを改めました……」


 と殊勝な面持ちで彼女はそう口にする。


「悪霊と出会わないようにするために、幽世との接点を切る。それだけしか私は考えていませんでした。けれどもあなたの意見、彼女の身の回りの意見を聞くと、どうも彼女が憑いた幽霊は悪い物ばかりではないそうですね」


「……そうだな。縁や神代など、別に悪いのばかりではない」


「そして彼女の意見も聞きました」


 いつの間に……。


「彼女はこう答えました。

 『幽霊との接点を失くす事は私には出来ない。それがみんなの望む水鏡栗花落だから』と彼女は答えました」


「あいつが……。そんな事を……」


 自分の考えも持たず、日々誰かの言う通りに動いていた頃に比べたら、何という進歩だろう。思わず泣けて来てしまった。


「ですので、幽世との接点を切るのは諦めます。代わりにこの卒業の温かい陽の気を彼女の身体の中に送り込み、彼女の身体に悪霊が入って来れないようにします」


「そんな事が出来るのか?」


「孔雀明王の名にかけて!」


 ニコリと笑った彼女はそのまま高らかに宣言する。


「彼女が学校を卒業するこの日、彼女は悪霊から卒業するのです!」


 決まったと得意げな顔をする彼女に、中学3年の水鏡の卒業式は14日であるのをいつ伝えて取り乱せようかと考える僕であった。

 今回はほぼ孔雀小明と水鏡栗花落の話でした。

 孔雀小明は悩みの回答を探します。そしてそれを叶える力も持っていると言うキャラクターです。しかし、誰しもがその回答を実行出来るかと言うそうではありません。時には天塚柊人のような、妥協した考えや悩みを和らげる事も必要だと思うのです。今回はそのような事を軸に作りました。

 しかし、水鏡栗花落が自分の口から『幽霊との接点を失くす事は私には出来ない。それがみんなの望む水鏡栗花落だから』と言うのは作者としても感動です。水鏡、良くここまで成長しました。

 『うろな高校駄弁り部』、続きもお楽しみに。それでは。

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