2月16日 彼女は救世主
2月16日、天候曇り。
その日、僕はとある仏教の本を読んでいた。
『孔雀明王について』。
孔雀明王とは憤怒の相が特徴である明王のなかで唯一、慈悲を表した菩薩形をもつ者の事。孔雀は害虫やコブラなどの毒蛇を食べることから孔雀明王は、「人々の災厄や苦痛を取り除く功徳」があるとされていて、信仰の対象となった。後年にんなると魔を喰らうことから、大護摩に際して除魔法に孔雀明王の真言を唱える宗派も多い。また雨を予知する能力があるとされていて、雨乞いにも用いられているみたいである。
悩みを取り除くと言う意味では、我々駄弁り部の信ずる神と言った方が良いだろうか? まぁ、駄弁り部のモットーは『悩みを和らげる』であるから、取り除くと言う事とは違うと思うし。
――――――――閑話休題。
ともかく孔雀明王とは悩みを解決すると言う役目を持った明王であるのだ。所謂、悩みを解決する神様であるが、
「重ね重ねて音を立てて、音を鳴り響かせる。そして願い奉り、ここに願いを叶える力を承らん」
……目の前で巫女さん姿にて鈴を鳴らしつつ、つまようじの入った袋に願っている姿を見るとどう接して良いか分からない。
どうもこの孔雀小明さんは、孔雀明王の生まれ変わりだったみたいである。記憶喪失ではなくて、元々の記憶がないだけだったみたいである。まぁ、孔雀さんはある人物を助けたくて仕方がないみたいだけれども。
「彼女を助けられるんですか、孔雀さん?」
「えぇ。なにせ、私は天塚柊人さん、あなたが出来なかったからこうしてやっているんですよ。
―――――――水鏡栗花落さんを救うために」
そう。孔雀小明さんは水鏡栗花落を救うために、このうろな町に、わざわざ神と言う身分を捨ててまでやってきたみたいである。
「―――――――――このうろな町にはとても良い身体を持つ人が多いです。水鏡栗花落は神を宿せる身と言う珍しい身体です。そしてこのうろな町には同じく神を宿せる力を持つ前田雪姫、多くの精霊と心を通わせる如月澪と変わった人が多いです。
しかし、水鏡栗花落には他の2人と違って悪霊や浮遊霊と言った、身体に悪影響を与える者達に身体を乗っ取られる危険が高いです。私はそんな彼女の悩みを解決する為に、この町にやって来たんです」
と、孔雀さんは語っていたが、一体彼女はどのような事をするつもりなのか? それが一番、心配である。
桜月りまさんより、名前だけですが前田雪姫さん、
*天燕*さんより、名前だけですが如月澪さんをお借りしました。