2月14日 バレンタイン・ラプソディー
2月14日、天候晴れ。雪が溶けるような暖かさ。
冬の寒空の世の中、女も男も暖かくなる日がある。それが2月14日のバレンタインデーと3月14日のホワイトデーである。そして今日はその2日のうちの1日、2月14日のバレンタインデーである。
多くの女性がチョコと言ったお菓子を男性に渡して、多くの男性がチョコを貰って嬉しがったり、もしくは貰えなかった事を嘆いたりと色々と見ていても面白い限りである。
僕、天塚柊人は2月14日のチョコを渡すバレンタインを冷めきった目で見ていた。
「あんまり興味がないんですか? 天塚さんは?」
と、隣に立っている彼女、孔雀小明がそう聞いて来る。「はい、チョコです」と妹の弓枝が渡すのを見て、説明を要求したので説明したのだが。どうやらそれがいけなかったみたいである。
「バレンタインとは、天塚さんの説明ですと、男も女も盛り上がる日だと聞いたんですが、天塚さんの反応を見るとそうではないんですか?」
「……何事も例外はあるし、僕はあまり興味がないんだよ。それに僕だけじゃなくて、多分自分に興味がない水鏡栗花落も多分、興味がないと―――――――」
そうやって説明していると、いきなり目の前に水鏡が現れる。
「――――これ、作ったからあげるね」
と、まるで挨拶のついでと言う感じに水鏡が僕にチョコを渡す。そしてそのままの勢いで彼女は学校へと向かって行った。残された僕と孔雀さん。そして、孔雀さんの何とも言えない視線がこっちを貫く。
「ま、まぁ、義理だろうな。多分」
「あっ、あ、ああ、天塚君! これ、バレンタインだから渡しておくね!」
「勿論、2人とも本命だからちゃんと味わって食べてよね?」
そう言って、僕に渡される蓮華と恵美からのチョコレート。そして、またしても何とも言えない視線が僕に突き刺さる。
「あっ、シュート! きなこchocolateをmakeしたので、貰ってください! Ms.Giaiとtogetherして作りました!」
「……兄さんの事で世話をかけた物ね。あなたにもチョコをあげるわ」
そう言って、来夏と義愛さんからさらに手渡されるチョコレート。
興味ないとは言って、朝からチョコレートを6つ、しかもそのうち1つ以外は家族以外ので、2つは本命と来ている。まぁ、でも
「これも駄弁り部の成果だろう」
僕に渡したのではなく、駄弁り部だから渡したに違いない。そうでなくては僕がここまでチョコを貰えるなんてありえないのだから。
「違うよ。悩みを解決した君の功績だよ」
しかし、そんな僕の想いを彼女はすっぱりと切り裂いた。
「やっと思い出した。私と言う者の正体を」
孔雀小明はそう言いつつ、無邪気に笑い掛けていた。
「彼女を――――――――水鏡栗花落をきちんと助けるために、私はここに来たんだ」