2月5日 彼岸花を供えましょ
2月5日、天候晴れ時々曇り。
うろな総合病院前に、僕、天塚柊人は大量の彼岸花を持って立っていた。
「ちょっと多めに用意しすぎたかな」
軽く彼岸花を100輪くらい用意したんだけれども、多すぎてしまっただろうか? 神代さんと縁に頼まれて彼岸花をうろな総合病院へとお供えに来たのだが、少し大量に持ってきすぎてしまっただろうか?
まぁ、彼女達も出来るだけ多い方が良いっていたし、この際多少の多さは認めて貰おう。
「あれ? 君はうろな高校の……」
と、さっさと病院前に彼岸花を置いて帰ろうとした僕の前に茶髪の男性が話しかけてくる。えっと、確か……。
「うろな町役場総務部企画課の香我見遥真さん、でしたっけ?」
「その通り! 鏡に映る遥かなる真実、香我美遥真や! そう言うあんたは、うろな高校の駄弁り部の天塚君だったっけ? 会うのは初めてやね」
「そこはせめて、公式名称のうろな高校学園生活環境部と言う名前で通して欲しかったですよ」
「アハハ! そっちの名前は有名じゃないやん! 非公式でも有名な方が、真実なんやで! 俺の名前にも入ってるやろ? 真ってさ」
うざい。はてしなくうざい。これが公務員で果たしていいのだろうか? まぁ、良いけれども。
「それよりもそんなに彼岸花を持ってどうしたん? 軽く100輪くらいあるじゃん? そんなに多くの物をどこで集めて来たん?」
「何故か夢の中で彼岸花をいっぱい集められる場所を教えられましてね。そしてちょっとお供えした方が良いと助言を貰いまして」
「へぇ……」と言う遥真。
「まぁ、供えて見たら良いんちゃう?」
「そうですね。やってみましょうか」
と、僕が彼岸花の花束を供える。けれども、何も起きなかった。
「やっぱり何も起きなんだか……」
「えっ……?」
そう言って、香我美遥真さんは帰って行った。そう言えば香我美遥真さんはなんでここに居るんだろうか? まぁ、恐らくは病院に薬を取りに行ったとかだったんだろうか?
「まぁ……良いけどね」と僕はそう言って帰ろうとすると、
ガサッ。ガサガサッ。
茂みの方からそんな音が聞こえて来る。そして茂みの方から少女が現れる。その少女は赤い髪を腰まで伸ばした、優しげな表情を浮かべた孔雀の模様が描かれた和服を着た少女だった。
彼女の名前は孔雀小明。僕は倒れた彼女を家に連れて帰って、彼女の名前を知るのであった。
弥塚泉さんより、香我美遥真さんをお借りしました。