1月29日 千里と蓮華
1月29日、天候晴れ。
1月25日の、うろな町。誰もが寝静まった夜。
そこで誰も知らない戦いが始まろうとしていた。
「全く面白い事を考える物ね……」
猫塚千里はそう言いつつ、目の前の光景を冷静に観察していた。火炎を纏った宙を舞う提灯、勝手にひとりでに動き出す骸骨、そして雪を降らせる謎の女。妖怪と言う妖怪が、千里の前に立っていた。その真ん中に1人の少女が立っていた。
「フフフ……! アハハハハ!」
全身に包帯を巻いたその少女、蓮華は笑いながらその千里へと近付いていた。
「日向蓮華、か。それがあなた達の仮の主と言う事ね」
「まさしく、その通り! 普段から霊に乗っ取られている水鏡栗花落と言う人物よりも、私が選んだのはこの日向蓮華! 最高の人物! それが日向蓮華なのですよ!」
そう叫んでいるのは、日向蓮華の姿を借りた何かだった。そして日向蓮華の姿を借りた何かは、千里と向き合っていた。
そして千里はその何かに話しかける。
「ハロウィンに乗じて、あの世とこの世の境目を曖昧にし、ここまでの妖怪をこの世に持って来た事実は素直に褒めたいと思うわ。けどね、それもここまでよ。
あなたはやりすぎたのよ。うろな町はもっと緩くて、楽しい街。あの天狗がパトロールしてるくらいが丁度良いのよ。だから、ここらで終いにしてあげるわ」
「無駄よ! 私の大進撃はここから始まるのよ! そう、この私、全てを占める大妖怪(仮)のハルツバキ様の大進撃は!」
そう言いつつ、蓮華の姿を借りた彼女、ハルツバキは蓮華の両手の爪を鋭利に、そして長く伸ばす。そして伸ばしたその爪を当てて、音を出す。その状態で彼女は地面を蹴り、そのまま向かって行く。
「ハルツバキ、大コラーゲン!」
「面倒ね」
千里はそう言って、ハルツバキに術を放って、蓮華ごと吹っ飛ばす。そしてそのまま蓮華の身体は宙へと飛びあがり、地面へと倒れる。
「ば、バカな……。人間の身体を借りているこの私を殴るなど……正気の沙汰とは……」
「人の身体を借りている時点で、あなたは大妖怪なんて物にはなれないのよ」
千里はそう言いつつ、蓮華の身体に近付く。そして術を用いて蓮華の身体から、何かを取り出した。
「……あら? あなた、そう。そう言う事。運命って本当に面白いわ」
「は、話すです! あまりやっていると、怒っちゃうの、なのです!」
そう言って怒る彼女の顔を、千里はじっと見つめる。そして千里はその彼女、ハルツバキの顔を見つつ、言葉を発する。
「あなた、語尾を『ニャ』にしてみない?」
そのハルツバキの顔と容姿は、あの死んでしまったニャーと喋る彼女の顔にそっくりだった。
三衣千月様より、猫塚千里さんをお借りしました。
ハルツバキはハロウィンの時に、あの世とこの世の境目を広げてうろな町を支配しようと考えていましたが、千里様に倒されてしまいました。人に憑りつく能力を持っています。けれども、彼女はとある少女の容姿にそっくりで……。
1月はこれにて終わりなので、これから2月に入ります。お楽しみに。