1月12日 Photo/てんぐ
1月12日、天候くもり。
雲が空を覆う曇り空のうろな町の港、うろな築港。潮風が肌に吹きすさぶそこでは、1人の少女がデジカメを片手に写真を撮り続けていた。
カシャッ。カシャッ。カシャッ。
その少女は港の様子を撮って行く。船やクレーン、カモメや猫などをフレーム内に入れつつ、何枚の写真を撮っていた。
「This is a good photo. デジカメと言うのも良い物ですね。まだ手にはget usedされてはいませんけれども、そのうちget usedされるでしょう。今年中にはfavoriteになるでしょう」
私の名前は温泉津=ヒューズベルト=来夏。温泉津先生のいとこ違いであり、カメラの愛好者です。去年、カメラを破壊されたのだが、新しくデジカメを買って貰って、今はそれを使っていた。
(But、これはtruthにシュートが買った物でしょうか?)
と、私はそう思いつつ、きょとんとした顔でデジカメを見つめる。
去年の10月、このデジカメをシュートが買って来てくれた物ではあるが、その時シュートは妙な事を言っていた。
『この世で最も分かり辛いのは、善意である。特に照れ隠しの善意は、下手に隠し通そうとしたりするから本当に性質が悪い。まぁ、そう言う訳だからこのデジカメを貰って置いてくれ。それはそう言った善意の1つですから』
(あの時のWord、なんだか引っかかるんだけどね)
気になるけれども、何か隠しているようだし、それに気付かないのも優しさかなと思う私。それに私には誰が代わりに買ってくれたかと言う事も検討は付いていた。
「むっ! そこに居るのは来夏君だね! デジタルカメラの調子と言うのは、どうだったか?」
目の前に居る仮面をつけた、うろな天狗。あの日、シュート以外で居たのは前のライカを傷物にしたこの仮面をした天狗さんだった。
「Yes! この辺りは行った事があまりNothingでしたからね。つい、来てみたくなったんですよ。そう言えば、天狗さんはどうしてここに?」
「むっ……!? ぱ、パトロールの一環だ。たまには行かない場所のパトロールも大切だからな、うろな町を守る者として」
「Oh……。そんな熱心な人が居るからこそ、このtownにはcrimeが少ないのですね」
「そうだな。我が友人の稲荷山からしたらあまり良く無い事かもしれんが、”クライマー”が減るのは良い事だ。うむ!」
その言葉を聞いて、クスリと小さく笑う私。
(crimeを犯すから”クライマー”とer系にしたのでしょうが、犯罪者はcriminal、もしくはoffenderのはずでしょうに。英語が苦手だと言うgossipはtruthだったみたいです)
『あぁ、そうそう。うろな天狗は英語が苦手らしいから。もっと分かりやすい英語で話しかけてあげると、理解してくれるかもな。とは言っても、日本語も大切だが。
お互いに歩み寄る努力が大切なんだ。だから、お前は日本語を、あいつは英語を勉強していけば、自然と距離も近くなるさ』
そうシュートが言っていたけれども、どうやらその通りらしい。そう思うと、カメラ選びの時は英語でまくし立ててしまい、申し訳ないと思う。けれども、今は彼もそれなりに英語が上達したのだろう。なにせ、crimeの意味が分かっているようだったから。
「ま、まぁ。冬の犯罪は増加しやすいと言うしな。心配だからこの先もついて行ってやろうと思うのだが……どうだろうか?」
「Of course. こちらからもお願いいたします」
「そ、そうか。それは嬉しいぞ」
そう言いつつ、照れる仮面姿の少年が何だか愛しくなって、私は自然と彼の姿を写真で撮ってしまっていた。
三衣千月様より、うろな天狗をお借りしました。