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1月5日 稲荷山ラブ!

 1月5日、天候晴れ。しかし寒い。

 2014年の1月5日。寒さが厳しいこの季節にて、明日は始業式と言う事で多くの学生達は、宿題に精を出したり、休日に精を出したりと、それぞれ思い思いの日々を謳歌していた。



 うろな中学、その一室。



 水鏡栗花落と稲荷山孝人の2人は、中学の教室に2人で居た。中学生と言う事以外、あまり共通点が無い2人がどうしてこんな事になっているのか。それを一番知りたいのは、誰あろう稲荷山孝人その人である。



(何故、こんな事になってんだ?)



 孝人は冬休み最後の休日をエンジョイしたかったのだが、何故かあまり面識がないはずの栗花落から呼び出されてこのような結果になってしまうのである。



「あぁ、不幸だなぁ……」



「い、稲荷山君!」



 と、そんな事を思っているといきなりそう上ずった声で稲荷山は名を呼ばれる。その声は本当に可愛らしい女らしい女の子の声であり、いつもの平坦で無機質な水鏡の声では無かった。その事に稲荷山はドキリとする。



「な、なんでしょうか? 水鏡さん?」



「わ、私ね……。ずっと前から、あなたの事が……」



 その言葉に、さらにドキリとする稲荷山。



(ま、マジで告白? で、でもなんで!? 俺と水鏡さんには接点なんてほとんどないはずなのに……!)



 あまりの状況にてんやわんやする稲荷山。その間にも水鏡はジリジリと、稲荷山の所へと近付いて行く。



「ずっと、ずっと好き……」



「み、水鏡先輩……。ま、まだ心の準備が……」



 そう言いつつ、何かこのシチュエーションも悪くないんじゃないかと思っていた所、



 バリン!



 と言う音と共に、1人の女子生徒が入って来る。

 金髪碧眼な上にモデル体型の、うろな高校の天波香である。今日は普段の制服では無く、厚着のコートを着ている。そしてそんな彼女が突然、水鏡の前に立って、



「見つけたわよ、サキュバス! さぁ、神妙に御縄に付きなさい!」



 と命令口調で、大声で言う。その言葉と共に、水鏡はクククと不気味に笑い始める。



「まさかこんな所まで追ってこようとは……。手ごろな肉体を手に入れて、ようやく食事にありつこうとした所を……。よくも邪魔してくれたな、小娘」



「あんたに小娘呼ばわりされたくないわ! さぁ、姿を現しなさい!」



「お断りだよ」



 そう言って、水鏡(?)は窓から颯爽と飛び降りると、そのまままるでダメージが無かったかのように走り去ってしまった。



「い、今のは……」



「サキュバス。人の精を食らって生きる女の姿をした化け物よ。どうも、去年のハロウィンの仮装をした際、その仮装した奴らが来たみたいでね。大変なのよ。

 狼男やら、ドラキュラと言った対策の立てやすいのならまだしも、魔女っ娘ミイラの時は流石の私も打つ手無しで戸惑った……。……!」



 そこまで言って、ようやく話している人物がいつもの彼でない事に気付いた天波香だったが、もう遅い。既に稲荷山は聞いてしまっている。だからこそ、



「と、とにかく! 今日見た彼女は、もう忘れる事ね!」



 そう言った捨て台詞を吐いて立ち去るしか出来なかった。



 教室に1人残された稲荷山は、窓ガラスが割れて風がびゅーびゅーと寒さを運んでくる中、1人いつもの言葉を口にする。



「不幸だ……」

 寺町朱穂さんより稲荷山君、神楽さんより天波香さんをお借りしました。

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