11月24日~27日 香苗meetうろな町
11月24日と25日、天候雨時々晴れ間。
11月26日と27日、天候晴れ。
僕は北風香苗と一緒に、うろな町の色々な場所を訪れつつ、色々な人と出会っていた。
○11月24日 天候;雨時々晴れ間○
この日、僕、天塚柊人は香苗をうろな中学まで案内していた。当初の予定だと、水鏡栗花落と出会わせるために、僕はうろな中学まで案内していたはずなんだが、その途中で知り合いと出会った。
「水鏡先輩! ですから私は、この先輩がくださったゲームは呪われています! だって、全然クリア出来ないんですけれども!」
「……それは違いますよ。呪われてはいますが……クリアしてから呪われると、神代さんが言っていましたし」
「やっぱり呪われてるんじゃないですか! やっぱり、お兄ちゃんに頼んでこのゲームを除霊して貰わないと! クリア出来ませんよ!」
水鏡栗花落に詰め寄っているのは、芦屋梨桜。『九尾の狐』を退治する自称陰陽師。芦屋梨桜はそう言いつつ、水鏡栗花落に詰め寄っている。
「ほら、稲荷山君も何か言ってよ!」
「……はぁ。水鏡先輩も言っていただろ? クリアは出来るんだ。呪われるのはクリアしてからだと言っていただろうが。単純に、お前のゲームセンスが悪いだけだ」
と言う稲荷山孝人。確かに聞いている限りは、ゲームをクリア出来る事は出来るのだろう。呪われているのはその先なんだから。まぁ、芦屋梨桜はそれ以前の問題みたいだけれども。
「酷いよ! 稲荷山君! まるで私のゲームの腕が悪いみたいに!」
「事実だろうが。ったく、そんな事で呼ぶなよな」
と、稲荷山君はそう言いつつ、芦屋さんの首根っこを掴んで水鏡から引きはがす。いつもは芦屋さんが稲荷山君を巻き込んでいる気がするから、何だか新鮮である。
「面白そうな、ゲームだね♪ ちょっと貸して♪」
そんな風に見ていると、香苗がいつの間にか芦屋から持っていたゲームを奪い取っていた。そしてカタカタと、ゲームをやっていた。
「……ったく。子供っぽいんだから」
と言いつつ、僕も近寄って行く。その歩いている途中に水鏡と稲荷山、芦屋の3人がこっちを見る。
「……この子供っぽい方が、あなたの望んでいた水鏡栗花落ですか?」
「って言うか、この人は誰ですか? またしても、天塚先輩の知り合いですか?」
「うわぁ、ゲームが凄い上手な方です! ゲーマー?」
と言うか、3人同時に喋らないで欲しい物である。僕は聖人君子じゃないんだし、3人それぞれの内容を全部聞けるほど芸達者な奴では無いんだから。
「はぁ……。子供っぽいのが好みじゃないからな、水鏡。
稲荷山君とそれから芦屋さん。知り合いではあるけれども、ゲーマーでは無い。ただ、子供っぽいから、ゲーム慣れしているだけだよ」
まぁ、大体聞きたい事を頭の中に置いて置けば、返答を返すのもしやすいけれども。
「はい、クリア出来たよ? 意外と簡単だね、これは」
と、そう言いつつ、『GAME CLEAR!』の文字がゲーム画面に出つつ、黒い触手がゲーム画面から飛び出している携帯ゲーム機を返す香苗。それを見て、
「やっぱり、このゲーム! 呪われてたじゃん、稲荷山君!」
「俺のせいじゃないだろうが! こら!」
と言い合ういつもの2人を見て、香苗が楽しんでくれて良かったと思う僕だった。
○11月25日 天候;雨時々晴れ間○
雨が降り、さらに北風が寒く吹きこんでいる今日この頃。僕は傘を持ちつつ、うろな町の中央公園へと足を運んでいた。香苗が言うには、『懐かしさを感じるから、来たかった』との事です。そう言って、来たのがここ、中央公園なのだが、そこには既に先客が居ました。
「(はぁ……。天波様、いえ香様のカッコ良さは異常だったわ。そして女装した織部君の綺麗さも良かったわね。香様と織部君のペアはありね。まぁ、当然織部君が受け、香様が攻めなんだけどね)ふふっ……」
小さく笑いつつ、花を活けているのは確か……同じ1年の城崎由美さんだろうか? あんまり知らないから、話しかけづらいんだけれども。と言うか、こんな公園で、生け花をしないで欲しいんだけれども。
「生け花だ! 楽しそーう! 私もやるー!」
「あっ、ちょっと待って!」
そう言いつつ、香苗は普通に由美に近付いて行く。
「ねぇ、一緒にやらせて貰って良い?」
「(誰かは分かりませんが、とりあえず聞いておくだけ損はありませんね。まぁ、面倒ですけれども)……良いですよ?」
そして香苗はまるで子供っぽい感じにて、由美と仲良く2人で生け花をしていた。凄いな、香苗は。誰とでも友達になって。本当に凄いなと、由美の凄さを改めつつ実感したのであった。
○11月26日 天候;晴れ○
今日は香苗のためにうろな町を回るのではなくて、今までの相談の後始末を、事後経過を見るためにとある人物の元へと向かっていた。香苗には来なくていいと言ったのだが、どうしても見たいと言うので連れて来た。
木下先生と横島楓。木下先生は自身の地味さに悩んでいて、横島楓は人間関係に悩んでいた。僕はその2人を組み合わせれば良い方向に進むかも知れないと思って、話をしていたんだけれども、まさか……
「先生。私とクリスマスを過ごしてくれませんか? と言うか、そろそろ私と付き合っていただけませんか?」
「えっとだな……横島。俺達は教師と生徒。そもそも付き合ったらいけないのだ。分かってくれるか、横島?」
「ならば、学校を卒業したら付き合いましょう。いえ、退学しても良いです。今すぐに付き合いましょう」
なんか良からぬ方向に進んでいる。いや、やばいな。こりゃあ……。まぁ、少しくらいならばこうなるかもとは予想してはいたが、まさかこまでとは……。
「ねぇ、シュー君? あの2人、なんだか良い雰囲気だけれども大丈夫なの?」
「……こればかりは当人同士の問題だよ。部外者が口を挟んでいい問題では無くなっている」
しかし、まさかここまでの物になるとは……。巷の本事情では、攻略するととても激しい好意を向けてくれるツンデレよりも、攻略が簡単で激しい好意を向けてくれるチョロインが人気だが、どうやら横島楓はそのチョロインだったようだな。
まぁ、後は当人同士に任せよう。そう言い、僕は香苗と共にそこを後にするのであった。
○11月27日 天候;晴れ○
なろう荘。うろな町にある古いアパートで、今では何名かの人達が住んでいるようだが、今日はそのなろう荘へと来ていた。
「なろう荘……。結構、古くて誰も入居してなかったこのアパートに、今は住人さんが居るんだね?」
「そうだな。ほら、あそこに……」
と、僕が指差す先には2m越えの長身痩躯の男性が、アパート前を掃いている。まだ見ぬ新たなエロスと運命の姉妹を見つけるために大手のお菓子メーカーの内定を蹴ってしまったバカである。
「俺には……まだ見ぬ姉妹が居るはずなんだ。そう、居るはずなんだ……」
何かブツクサ言いながら、言っている。バカだなぁ……大手菓子メーカーの内定を蹴って大家業を受けるだなんてバカとしか思えない。
(運命の姉妹……ね。神代から何か占いか何かで、聞いてみてあげようか。あいつは何でも知っているしな)
まぁ、多分彼は自分で見つけたいと思っているだろうけれども。
「へぇ……。ちなみに、あの人はどう言うのが好みなの?」
「好みって……ね」
まぁ、香苗が行けば、まぁ解決するだろう。何せ、姉っぽい容姿に妹っぽい性格だし。多分、運命の姉や妹なんて、彼の主観による物でありつつ、それらしき人を見たら、「運命の姉(妹)だ!」とでも言うのだろう。
要するに問題となるのは、その人にとってどれだけ近いのが問題なのだ。
人とは、どれだけ妥協し、どれだけの人物を本当に好きになると錯覚するのか。それだけである。
「ねぇねぇ、あの人に話を聞いてみようよ! うろな荘について何か聞けるかもね!」
「あっ、ちょっと……」
止める間もなく、彼女は真白に話を振る。
「ねぇ! そこの人! 私、うろな荘について聞きたいんだけれども……」
「う、美しい! 姉も妹もいけるし、とても美しい……! 是非、私と姉妹関係を……!」
ううっ……ほら、面倒な話になっちゃったよ。
まぁ、香苗はポカンとしているし、そろそろ助けて置くとするかね。そう言って、僕は「是非! 是非に!」と迫る真白さんをどうにかするために、とりあえず神代を紹介して置く事にするのであった。
寺町朱穂様より、稲荷山孝人君と芦屋梨桜。
神楽様より、城崎由美さん。
YL様より、木下先生。
そして「おいでませ、なろう荘! 〜僕らのカラフル日記〜」より、陵真白さんをお借りしました。