10月14日 雨模様、お悔やみ模様
10月14日、天候雨。
やぁ、私の名前は神代。うろな町に住まう神様だよ。いや、正確に言えば神様では無いんだけどね。
そうだね、正確に言えば神に近い存在だとも言っておこうか。昔、うろな町がまだ『うろな町』と言う名前をしていない頃の時代に生まれて、そして死んで幽霊となった。幽霊となったけれども、元々の霊力の高さが影響したのか、私はこのうろな町をどこであろうと動けるようになってしまった。
地縛霊……って言うのかな?
ともかく、うろな町の事ならば私はどんな事でも知っている。
とある老夫婦のくだらない告白劇やら。
とあるコンビニで働く店員の過去やら。
とある高校生の事件談やら。
そして、とある人間の殺人談やら。
鍋島サツキ。
彼女はくだらない陰陽師に殺されていた。
『妖怪だから』。
ただそれだけで殺された。
彼らの言い分は全く持って意味が分からない。『妖怪だから』、そんな理由で妖怪が殺されているなんて意味が分からない。それは『人間だから』と言う理由で、人間を殺されるのと同じですよ。
芦屋一族に何があったのかは知らないけれども、妖怪撲滅をかかげて妖怪を殺すだなんて、非効率すぎて笑えないよ。
全く……。
【君】もそう思わないかい?
【君】だってもっと生きたかっただろうに。君の好きな子も、これからが心配な幼馴染も。そして【君】を殺した人だって、優しい君は心配なんだろ?
優しい子だね、【君】も。
普通は自分を殺した相手をそう簡単に赦す事なんて出来ないよ。
……えっ? 私かい? 私は神様だからね。誰も恨んでいないよ。そもそも【君】のように殺された訳ではないからね。
まぁ、あの女の子のおかげで【君】は自分の想いを伝えられたし、それで満足なんだろうね。まぁ、【君】は【君】で良いと思うよ。
じゃあ、これからどうする? 私と一緒にうろな町の観察でもしておく? それとも先に死んだ【君】の家族と同じ場所に行くかい?
私はうろな町の神様だからね。うろな町に関する事ならば、なんでも出来るよ。まぁ、君の望みを聞いてあげるよ。それに、水鏡さんの身体を借りれば、前世のように歩けるよ? あの巫女の子じゃないし、割と自由に動けるよ? さぁ、どうする?
……あぁ、そうかい。そう言う選択を取るんだね。分かった。君の意思を尊重しよう。
まぁ、あの腐れ陰陽師には後々何かあるだろう。
えっ? 私が何かするって? 違うよ。良く言うでしょ?
自分がした行動は何らかの形で返って来るんだよ。
じゃあ、元気でね。
――――――――鍋島サツキさん。
寺町朱穂さんの、鍋島サツキさんの件についての話です。