6月3日 いつもの放課後
6月3日、曇りのち雨。
「うぅー……」
と、部室にて1人の少女が窓の外を見ながらうなっていた。小柄な身体とそれに似合わない巨乳を持ち合わせたおどおどとした小動物を思わせる大きな瞳と、流れるような黒髪が特徴的な美少女。彼女はこの学園生活環境部、通称駄弁り部と呼ばれる部活の部員である。そんな彼女の視線の先である窓の外では、雨が降っていた。昼前は曇っているだけでいつ雨が降るか心配なレベルだったが、昼より少ししてから雨が降り始めて今では本格的に降ってしまっている。
そんな雨を彼女は嫌そうな目で見つめていた。ちなみに俺は本をじっと読んでいますが。
「昨日も……雨で一緒にお出かけできなかったのに……。今日も雨、なんですね」
「そりゃあ、今は梅雨だし雨が多くなるのは当然なんじゃない?」
一昨日、彼女とは雨じゃなかったら出かける約束をしていた。けれども昨日は残念ながら雨。よって彼女とお出かけする事は出来なかった。俺としては本屋に行けなかったくらいにしか思っていなかったのだけれども、彼女はどうも俺と本格的に外に出かけたかったらしく、相当落ち込んでいるみたいである。
「……じゃ、じゃあ! 梅雨が終わった7月にでも!」
「あぁ……。俺、夏休みは夏休みとしての正しい役割である休みをきちんと享受したいと思っているんだ」
俺は彼女にそう言うと、彼女は「うー……」とうなる。
「……なんか、付き合ってみて分かって来ましたけど……基本、柊人さんって……ドライですよね」
「そうか? 普通だと思うけど」
そんなに酷く、ドライとも思っていないし、ほどほどくらいだと思っているが。
「……やっぱり、ドライですよー、だ」
彼女はそう言って、置いていた鞄を取る。俺はそれを見て、「帰るのか?」と聞く。勿論、本は読んだままだけど。
「う、うん。また明日、ね。しゅ、柊人君」
「あっ、そうだ。明日は休みにするよ」
そう言うと、彼女は途端にがっかりした顔をする。
「あ、明日は……あ、会えないの?」
「いや、会えるけど。部活には来ないと言うだけだ。何事も休みと言うのは大事だし」
「そ、そうだね……」
なんとなくがっかりそうな感じで帰って行く彼女を見て、俺は1人
「あいつを呼ぶかな……」
と、1人思っていた。