9月23日 そのカメラに映る景色
9月23日、天候曇り。
秋分の日。
昼の時間と夜の時間が一緒になるこの日は、若者にとっては9月にある休日の一日としてしか認識していないだろう。
僕、天塚柊人もそうだった。
だいたい、天文学的に昼と夜の時間が一緒になる日は、2日ある。勿論、春分の日である。しかし、いまいち他の国民の休日にしても一部例外を除き、ほとんどの人にとっては休日と言う意味であり、あまりその休日が設けられた意味を祝福なり感謝なりをしないんじゃないだろうか?
僕はそう思っていたのだが、今日この日だけはこの秋分の日と言う物に感謝の言葉を贈りたいと思う。
「来夏……」
うろな町の海岸。そこが見渡せる丘の上に、温泉津=ヒューズベルト=来夏は居た。手には何も持たず、ただ茫然と赤くなっていく雲を眺めていた。
「私、このTimeほどあのカメラを、ライカを持たなかった事を後悔した事はないでしょう」
そう言いながら、彼女は手で写真の構図を決めるポーズを作る。
「……あれは確かに良いカメラでした。事実、私はあのCameraがあったから写真にはまったんですから」
「けど、あのカメラは――――――」
そう、壊れてしまった。もう二度と復元出来ないと思うくらい鮮烈に、それは破壊されてしまっていた。
「えぇ。もう二度と復元する事は出来ないでしょうね。それくらいは私にもUnderstandです」
と、来夏は答える。そして僕の方に顔を向ける。
「確かにきっかけは大した事ではありません。本当に大した事のない……ただ名前が同じと言うだけです。けれども、私は気付いたんです。カメラを通してみるこのWorldの美しさを。
それはあのCamera、ライカがLostした今も変わりません。
人の営み、そして景色の美しさ。それはライカが失った今も変化はしません」
そう言いながら、彼女はニコリと笑う。そして僕の方に顔を向ける。
僕はそんな顔をする彼女に何も言えなかった。
「……そうですね。今まではあのライカと言うアナログカメラを使っていましたが、今度からはデジカメも考えましょうかねー」
「……」
「まぁ、シュート。あなたも気にしないでください。
例えあのカメラが理由だとしても、私に芽生えたこのHobbyは変わりません。だからあなたが責任を感じる事も、あの仮面を付けた人も責任を感じる事はありませんよ?」
そう言って笑う来夏。確かに彼女はそれに対して恨んでいる感じはない。けれども、どうしてもそれに対して責任を覚えてしまう。
「では、もし私に対して何か謝罪がしたいと言うのでしたら、どうかデジカメを買うのに付き合ってくれると助かります。あのMaskの青年にもそう伝えてください」
「そんなんで良いのならばいくらでも付き合うよ」
僕はそう言って、来夏の手を取り、彼女が今後使うためのデジカメを一緒に買いに向かうのであった。
来夏編はこれにて終幕と参ります。本当であればカメラを持ってもっといろいろなうろな町の場所に行きたかったんですが、結局そこまで多くの場所には行けませんでした。残念。
また、10月31日には海の家ARIKAにてハロウィンを開く予定なので、参加したい方はスレッドか、私にメッセージにてご報告をお願いします。では。