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うろな高校駄弁り部  作者: アッキ@瓶の蓋。
温泉津=ヒューズベルト=来夏の章
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9月13日 雨空と幽霊

 9月13日、天候雨。

 あらゆる天候において、最も幽霊が出やすい天候は雨である。何故かと言うと幽霊が出るには太陽が邪魔であり、その太陽を覆う雲が出ている事と、雨は人の気持ちを落として幽霊の発生を増長する効果があるからだ。

 と、幽霊の神代さんと名乗る幽霊は兄に教えてくれたらしいのだが、兄はそれが正しいかどうかは分からないと言っており、とにかく雨の日は幽霊が増えやすいと言う事を聞いていた。その事を兄から聞いていた彼女は、この状況を理解出来ていた。



「あぁ、雨だから俺もこうやって出て来れると言う訳さ!」



「……そうですか」



 と、天塚柊人(あまつかしゅうと)の妹である天塚弓枝(あまつかゆみえ)は、(ゆかり)が憑りついた状態の水鏡栗花落(みかがみつゆり)の言葉に対して素っ気なく返していた。外では雨が降り続いていて、縁は「気分が良いぜ!」と豪快に笑う。栗花落が自分を騙している可能性をこの時点まで疑っていた弓枝は、栗花落らしからぬ行動、豪快に笑うと言う行動をしたこの栗花落を見て、ようやく幽霊が憑りついたと言う事を理解した。



 そもそも兄である柊人は良くこの幽霊が憑りついた状態の水鏡栗花落に会っているらしいが、その妹である弓枝はほとんど会っていないのだから。いきなり「今は俺、縁と言う幽霊が憑りついているのだ! そして、お前の兄貴に会いに来たぞ!」と天塚家にやって来た栗花落を、弓枝は怪しく思っていたのだから。



「……はぁ、疲れます。兄様はどこに行ったんでしょう? この縁さんを置いて行って」



「そう言わないでくださいよ! 俺は待ってるから、気にしなくて結構だぜ!」



「……他人ですけれども、その身体は兄の友達の身体なので、冷静に相手しませんと」



 そう言ってお茶を差し出す弓枝。縁は「どうもだぜ!」と言ってお茶を取って飲み始める。



「美味しい、か? まぁ、この身体は俺のじゃねえし、少し変な感じだが美味しいと思えるな」



 と、縁はそう言う感想を持ってお茶を飲む。

 本来であれば縁は天塚柊人を誘いに家までやって来ていたのだが、天塚柊人が居ないので妹である天塚弓枝が相手しているのである。



「……しかし、兄様に何のご用事で?」



「いやー、用があるのは俺じゃ無くてな。”こっち”の方なんだ」



 そう言って糸が切れたように倒れ伏す水鏡栗花落。それを見て一瞬戸惑った天塚弓枝だったが、すぐに気付いた。



「……別の幽霊が憑りついたんですか?」



「正解だよ、天塚弓枝。どうやらすぐに気づいてくれたようで良かったよ。流石、あの天塚柊人の妹と言った所だろうかね?」



 そう言いながら、栗花落の身体を借りたその幽霊は、椅子に座って出された急須を持って、コップにお茶を入れてゆっくりと飲む。



「どうやら縁は天塚柊人を尋ねに来たと思ったようだけれども、私が会いたかったのは君だよ。天塚弓枝」



「……私?」



 きょとんとする弓枝に、そうだよと言う水鏡栗花落の姿を借りたその幽霊。



「君には後数日したら、とりあえず試練が待ち受ける。その試練とは君自身が対処しなければならない。けれども、このままだと君はその試練に太刀打ちできない。だから、助言させていただきましょう」



「……誰ですか、あなたは?」



 と、天塚弓枝の言葉に、栗花落の身体を借りたその幽霊はこう答えた。



「私の名前は神代。この街に住む全てを知り、必要に応じてこの身体を借りて助言を行う幽霊。

 有名人達が何故かこんな普通の町に来たり、獣人やら妖怪やらの人外な生命体が多かったりしたり、この町に人が来やすくするためのエネルギーを放出している幽霊。そしてこの町にこれからの道を全部知っている幽霊。

 ―――――そして君に、ちょっとお願いをしに来た、ただのこの町に住まう地縛霊(じばくれい)だよ」

【神代】

 生前はこの町に住んでいた姫巫女で、あらゆる事を予知する能力を持っていて人に助言をしていた。死んだ後は幽霊としてこのうろな町にとどまっており、水鏡栗花落の身体を借りながらこの町の人間に助言をしている。

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