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うろな高校駄弁り部  作者: アッキ@瓶の蓋。
温泉津=ヒューズベルト=来夏の章
35/93

9月2日 曇り空と金髪少女

 9月2日、天候曇り。

 亜成体(あせいたい)。それは成体になる前の段階の事であり、明確な定義や分類とかは特になく、あくまでも『幼生でもない、成体でもない状態』の事を『亜成体』と言う。こんな亜成体を人間に当てはめるとするならば、亜成体は人間で言う所の大人になろうとしている状態である思春期の状態である男女の状態を言うのではないだろうか。

 難しい言葉ばかりで、少し分からなくなっている者も少なくはないのかも知れない。だから、もしこれを分かりやすい言葉に置き換えるとするならば、



「――――――『思春期の男女は、サナギの状態である』、か。流石、文芸部の先輩は表現が大人っぽいですね」



「いや、文芸部じゃないからね。僕は」



 と、うろな中学の文芸部の部室にて僕、天塚柊人の書いた即興のエッセイを読んだ河野涼さんは目をきらきらさせている。河野涼さんはこのうろな中学、ひいて言えばうろな中学文芸部の人間で、毎月『彩色いろいろ』と言う部誌を出しているらしい。

 僕はそんな文芸部の部屋を見学に来て、見事に高校生の実力を試されるような形でこうしてエッセイを書かされていると言う事だ。



「しかし……分からないわね。どうしてこんなエッセイを、しかもその後にそれを題材にしたかのような思春期の男女の複雑な恋心を描ける先輩が、文芸部に所属していないのかと言う事が」



 と、その後に書いて置いた創作小説、『思春期』を読み終えたと思われる桜沢香野子さんがそう言う。



「人生と言うのは、そう言う物だよ。香野子さん。

 将棋部に入っていないのに将棋が上手い人とか、運動部に入っていないのに足が速い人が居るじゃない。別に小説を書くのが人より優れていると言っても、文芸部に入っている訳じゃないんだよ」



 実際は僕が中学生だった時、僕はこう考えた。当時の文芸部の人数と、僕が有効的に使えるであろうスペースを考えた結果、僕は部室を休憩室として利用は出来ないと悟った。だから諦めて文芸部に入るのを止めたのだ。中学生時代は家に帰る方がよっぽど休憩時間が短くて済んだからね。

 高校生の時も実は最初は学園環境部になんて入りたくもなかったのだが、そうもいかない事が起きてしまったのだ。それは本人のプライドと、当人同士の約束として僕は心の内にしまっているので、ここでは語らないが。



「それにしても……なんでOBでもない先輩がこんな所に居るんですか?」



「ちょっと香野子ちゃん! 言いすぎだよ!」



 ……まぁ、そうだよな。OBでもないのに部室に来る高校生って、明らかに不審者だよなー。



「いや、何。ちょっとうろな中学に迎えに言って欲しいと春日先生に頼まれて、職員室で彼女を呼んで来て欲しいと清水渉先生に頼んだら、彼が顧問をやっているこの部室へと連れて来られたと言う訳」



「「あのやろうー!」」



 どれだけ嫌われてるの、清水先生?

 あんた普段から、司先生にしているみたいに女性を口説いてたりしているのか? 



「さぁ、皆! 俺と一緒に夢のパラダイスへと、めくりめく酒池肉林の世界へと参ろうじゃないか!」



 ……ありえないが、あの司先生を落とした器量と、あのがっつき具合から考えても可笑しくはない。駄目だよ、先生。一応既婚者なんだからさ。



「……お待たせしました」



 そう言って、扉を開けて入って来た女生徒を見て2人の会話が止まった。



 そこに居たのは、美しい外人だったからだ。

 流れるように腰まで伸びている金髪と、日本人ではありえない碧眼。中等部の制服では隠せないようなわがままボディ。頭には桜をモチーフにした髪飾りと、首から古ぼけながらも値段を感じさせるカメラをかけている。



「やっと来たか」



「I'm sorry. 道が分からなくて」



「良いさ、春日先生からだいたいの事情は聞いているし」



 そう言って、じゃあ帰ろうかと彼女の肩を掴む。



「ちょ、ちょっと待ってください、天塚さん」



「そうよ、ちょっとくらい紹介して欲しいわ」



 いや、正直早く帰りたいんだがこの文芸部の2人には分からないみたいである。とりあえず目線だけで彼女に自己紹介をするように言う。



「――――――Yay. 了解しました」



 僕の意図を読み取った彼女は、そのまま扉の前でぺこりと頭を下げる。



「初めまして、御二人さん。この度、3年に転入する事になりました、温泉津ゆのつ=ヒューズベルト=来夏らいかと言います。こんな見た目ですが、一応ハーフなので、日本語もPepar,Peparです」



「いや、ペラペラがペーパーペーパになってるから」



「そうですね。I'm sorry」



 そう言って、彼女はペコリと頭を下げる。



「温泉津……このうろな町でそんな奇特な苗字の持ち主は……」



「あの人しか居ないけど……」



 どうやら2人ともようやく分かって貰えたようだ。と言う訳で、まだ信じられないと思いつつも邪推じゃすいして、良からぬ方向に噂を立ててしまうだろう彼女達に止めの一言を言っておく。



「言っておくが、彼女は温泉津春日ゆのつかすが先生の親戚、いとこ違いにあたるのだが」



 果たして何人の人が『いとこ違い』と言う言葉を正しく認識出来るか分からないので、先に説明しておくと。

 彼女は春日先生の、父の兄夫婦が生んだ、息子夫婦が生んだ娘と言う関係になる。

 深夜さんより、河野涼さんと桜沢香野子さん、YLさんより清水渉先生をお借りしました。

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