表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/93

8月13日 本の解釈

 8月13日、天候晴れ。

「『女男家族列伝』、大変楽しく読ませていただきました」



 1週間後、僕は春日先生の所に来て貰っておいた『女男家族列伝』を返しておく。



「おぉ、そうか。そうか。で、『女男家族列伝』はどう言う本だった?」



「『女』が『男』の役割を果たして、『男』が『女』の役割を果たす……。そう言ったある意味、逆転的発想で見れば面白い話でしたよ」



「ほほう。つまりは、昨今の男女平等化に異議を唱えるような作品と言う事じゃな。『女』がやるのが一般的なナースや娼婦を『男』、『男』がやるような一般的な教師や政治家を『女』がやると言う事なのか?」



 春日先生、それは自分である女教師を暗に悪口を言っていませんか?

 ちなみにナースは男女差別を無くすために今では『看護師』と言ったりするんですけれども。



「……と言うか、先生。例を挙げるのに娼婦はないですよ、仮にも聖職者足る先生なのに」



「一番分かりやすい説明ではあるのだけれども。それで、その小説から瀬島家の問題とやらは見えて来た?」



「えぇ……。と言うか、それを感じながら見るとこの小説は違った見え方をするので」



 小説の解釈。

 小説には幾重にも解釈の仕方がある。これは最初は『男』が『女』の役割を果たし、『女』が『男』の役割を果たすような男女逆転のSF小説に見えていた。けれども、これを『文学小説』として見た場合はその限りでは無い。



「この小説には、作者である瀬島文豪(せじまぶんごう)さんから見た世界が描かれております。ですので、そう見た場合はちゃんと見えてきました」



 作者。

 今、この小説から見た、作者の世界観が僕には見えていた。



 この小説から見えて来た物。



 これはSF小説では無く、文学小説。



 女装をしている瀬島蒼龍と、男装をしている大神義愛。



 あの2人の住んでいた魔女の一室。



 その全てを統合して、僕は1つの見解を発揮する。



「……今からあの2人の家に行きます。

 もしかすると、案外この問題は根が深いので、早めに解いて置きませんと」



「そうか。じゃあ、頼んだぞ」



 と、春日先生はお気楽そうに言い、僕は学校を後にした。



 あの問題の根底、そこにあるのは――――――現代社会、いや大神文豪とその妻が産みだしてしまった、歪んだ、歪な価値観だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ