8月4日 先生と報告
8月4日、天候晴れ。
僕の感じた違和感。
1人分の好みしか感じられない部屋。
雑味が感じられない部屋。
「あの部屋は2人暮らしの部屋と言う感覚がするよりかは、1人暮らしの部屋に居候が1人混ざり込んでいると言う感覚がしました」
「そう。天塚がそう思ったって事はそうなんでしょうね」
春日先生は僕の報告に対して素直に「そうねー」と答えていた。
「ちなみに、その1人暮らししていると思った方はどっちの方?」
「多分、瀬島蒼龍の方だと思います。居候しているのが大神義愛で。
――――――下駄箱にあった靴は瀬島君が使っていると思われる小さい靴は青系統が多く、大神さんが使っているとされる大きい靴は緑系統が多かったので」
「下駄箱から好みを知るって、もはやそれは探偵だと思うわ。まぁ、良いけど」
そう言って、春日先生は机の中から1冊の本を取り出す。
本のタイトルは『女男家族列伝』。著者の欄には大神文豪の4文字の感じが刻まれていた。
大神文豪。
僕も良く知るベストセラーの小説家だ。
恋愛作品を書くのが恋愛小説家だとすれば、彼は不思議小説家。SF、ファンタジー、ミステリーの3つの種類を書く、不思議な世界観の小説を描く作家であり、代表作がそれぞれの小説ジャンルにあるかなり有名な作家先生。
代表作はSFは『奇形宇宙人ミア』と言う決まった形を持たない彼女を持つ少年の話。ファンタジーは『闇夜の国の有栖』と言う永遠に日が照る事のない夜の国に飛ばされてしまった有栖君の冒険譚。ミステリーは『心視探偵・宮本さん』と言う人の心が見えてしまう探偵、宮本さんの話。などなど、かなり独自の価値観を持つ小説家だ。
結構好きで時々読ませて貰っている作家さんなのですが、この『女男家族列伝』と言うのは見た事が無いな……。
「その本は?」
「これはかの有名な小説家、大神文豪先生が書いた自費出版の本よ」
自費出版? あの有名な小説家先生がわざわざ自費出版した本ってどう言う本なんだろうか?
「これは大神文豪と言うのは本名で、大神義愛の実の父親なのよ。これは大神文豪が自分の家を客観的に見て書いた作品なのよ。義愛から貰っておいたのよ」
「自分の家を見て作った作品……ね。その本を見ると、何か分かるんですか?」
僕が聞くと、春日先生は笑いかけながら。
「――――――――その本を読むと、疑問の答えが解けると思うわ」
と答えて、その本を貸してくれたのであった。