8月2日 春日先生命令・発令中
8月2日、天候晴れ。
「良く来てくれたね、天塚柊人。今日はちょっと相談事がありましてね」
と、机の上に沢山の書類を広げた机の前に座りながらそう言う。
「はぁ……長期休暇中に呼び出されるのは本当に嫌なんですが」
と僕、天塚柊人はそう答えていた。
いきなり用事があるからと春日先生に呼び出された。僕は勿論、長期休暇中に喜び勇んで学校に通いたいと言う人物では無いために、断った。まぁ、そのすぐに僕の部活を引き合いに出されたんだけれども。主に部活の顧問を辞めて、今の半分しか部室を使わせないぞと。
冗談じゃない。あの部屋には週2日の休日に飲食店で働くと言うバイトと言う名の臨時ボランティアなどで稼いだ、給料と言う名の善意の施しで手に入れたエアコンを導入予定なのに。かなり頑張って申請書を、そして仕事を頑張って作ったのだ。今さらその利用機会を半分にさせられては困る。
冬や来年以降の夏は、そのエアコンで快適な読書ライフを送りたいのだ。うちの図書室は夏や冬でも余程の事が無い限りはエアコンを入れないからな。夏は真夏日、冬は真冬日以外ではエアコンを入れないってどこの拷問なんだと思いたくなってくる。
だから、しぶしぶ来たんだ。別に来たくて来た訳ではない。
「で、春日先生。今日はどんなご用事ですか? 出来れば夏休み中に読むために昨日、地方の図書館まで行って借りて来た本が無駄になってしまうんですが」
「天塚、長期の夏休みをどう使おうがその本人の使い方次第だとは思うが、お前は夏休みには宿題があると言う事を忘れてはいないか? 学生にとっては拷問とも呼ぶべき『夏休みの宿題』と言う物が」
あぁ、ありましたね。そう言う物が……。
「連日のように日向蓮華と霧島恵美が家にやって来て夏休みの宿題をやると言う名目の名の勉強会、水鏡栗花落の家に行って夏休みの宿題をやるように命じたり。妹の天塚弓枝との勉強会。
それを夏休みが入る前から地味に、語られない所でやっていた僕が忘れていたとでも?」
「……なんかすまんな」
「去年までだと水鏡は定期的に見に行かないと、宿題に手を付けなかった分、マシですよ。通常の学校の宿題ですと、先生がやって来るように言いますが、流石に夏休みの間に何日に何をやれとは言えませんから」
うん、本当に去年よりかはマシだ。日向蓮華が増えたと言う事よりも、去年の水鏡栗花落の相手をしていた方が面倒だったのだ。まぁ、今年はわりと彼女自身ある程度やってくれていたので助かっているのだが。いつもだと8月の上旬までかかるんだが、今年は7月中に終える事が出来たのだ。
「いつもだと、図書館でかりられるのは20冊くらいなんだけれども、今年はいつも以上に早く終わったので30冊くらい借りる予定なんですが」
「……お前は何だ。本を読まないと死んでしまう、読書中毒でもかかっているのか?
ちょっと住所録を見ていると、面白い物があってな」
そう言って、出して来るのはこの前転入したばかりの瀬島蒼龍と大神義愛の書類である。
「その書類の住所の欄を見て見ろ、面白い事が書いてあるぞ」
そう言うので見て見ると、そこにはこう書かれていた。まぁ、住所の欄だけ見ろと言うので、出来る限りそこ以外を見ないようにして見る。もし見たらヤバい事になるかも知れないし。
【瀬島蒼龍
住所;うろな町マンション・2階2号室】
【大神義愛
住所;うろな町マンション・2階2号室】
「これは……?」
「どうも彼と彼女、同棲しているみたいなんだよ。
やっぱり年頃の男女が一緒ってのは不味いから、ちょっと見て来てよ。はい、これ地図だから」
そうやって、簡単に地図を渡して来る春日先生。
これ、行けって事ですね。分かりました。
僕はそう言って春日先生から地図を貰って置きました。
一応、行くとは言ってませんが、行く意思みたいなのは見せて置きました。




