7月30日 雛鳥と女神
7月30日、天候晴れ。
「あ、あ、天塚きゅん!」
7月30日。夏休みに入ってあと2日で新たな月、8月になって勉学に集中して打ち込まないと、本を読む時間が無いなと思っていた俺の元に、彼女が現れた。
日向蓮華。
誰あろう、うちの部活の部員である。何故か大量の花束と浴衣を着た状態で。浴衣は全体的に白い浴衣に赤い染料で色付けされた浴衣である。けれども只今の時刻は……
「弓枝、今の時間は?」
「はい、兄様。11時です」
そう、11時。お世辞にも夏祭りに行くにしても早すぎるような時間だし、まず何よりこんな日の高い真昼間から彼女が浴衣姿で外を歩いていたのを想像すると……
(うわ、恥ずかしかっただろうな。
恥ずかしがり屋なのに頑張って……)
何だろう。成長した子供を見守る親の心境と言う物が分かってしまうような気持ちになってしまう。
「え、えっとなんでそんなに泣きそうな目でこっちを見ているんですか、天塚君?」
「いや、何か感動して……こう、巣立った雛鳥を見る親鳥の気分で」
「予想していた反応と違います!」
あぅ……と答える日向さん。
「兄様、そう言えば彼女はうろな水着美女コンテストで2位だったじゃないですか」
「あぁ……あれか……」
一応、見には行ったんだがな。何だか色々とあったな。
奏さんの稲荷山孝人の許嫁宣言。駅員エレナさんの登場。如月澪さんの……いや、これは思い出してはいけない奴か。果穂先生と倫子先生の乗っ取り。桜崎、狐ノ派、芝姫さんの修羅場。紫苑ちゃんのサービスシーン。猫娘鍋島さん。空姫の歌声。そして萌ちゃんの天使。
そう言えば、蓮華はタオルを巻いたけれども頑張っていたな。霧島は……写真集の紹介をしていたな。エロいやり方だったけれども。
「そして、これは2位になった商品の花束! それと浴衣の引換券も貰ったので、浴衣を見せに来ました……に、似合いますか」
「あぁ、頑張ったんだな。日向さん。嬉しいよ」
あぁ、本当に嬉しいよ。お兄さん、嬉しいよ。
「よ、喜んでいただけたようで、私、嬉しいです」
日向さんはそう言って嬉しそうに微笑んでいた。俺はひとしきり妹の弓枝と共にもてなしていた。
その日の1時、俺の家に霧島がやって来たのだけれども、
「図書券、あげましょうか? 柊人君?」
「ははぁ―――――――! 女神様ー!」
と俺が言うのを見て、弓枝と蓮華が冷ややかな眼で見ていたのが気になったけれども。
とにあさんの、7月28日に行われたうろな水着美女コンテストとリンクしています。