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うろな高校駄弁り部  作者: アッキ@瓶の蓋。
水鏡栗花落の章
19/93

お悩み相談第3回 榊

 7月9日、天候曇り。

 ただし、暑い。

 この世に置いて最もくだらない悩み。それは【名前】。

 名前とは確かに一昔前だったら、重要な事だったのかもしれない。しかし、現代社会―――――DQNネームやキラキラネームなどのただのお遊び感覚で名前が付けられるような、今の社会にとって名前とはそう大きな意味を持たない。よって、この悩みもくだらないと言えるだろう。



「最近、みんなが僕の名前を間違えます。そんなに榊って馴染みのない名前なんですか? 榊原とか榊町とか榊田とか呼ばれます。これいかに」



 町役場住民課の榊さんはそう言うくだらない質問してきた。



 正直に言って、今の僕は機嫌が悪い。

 昨日はらしくもない学校交流で疲れたし、さらに今日は曇りの上に蒸し暑いと言う最悪なコンディション。切れても可笑しくないが、感情制御力が他の人よりも高い僕はそう言う事を言わない。思わない。思っても口に出さない。



 とにかくこの悩みの本質は、苗字だ。苗字―――――名前のなかでもさらにくだらない。そんなのの解決法は結婚して婿養子かなにかでしか解決方法がないからだ。

 おまけに珍しいか、だと? 確かに榊は珍しいと言えば珍しいけれども、この町には『稲荷山』や『降矢』なんていう珍しい人物も居るが、そんな事言わないと言うのに。僕の『天塚』だって珍しいと言えば珍しいのだから。



(まぁ、つまりはこの悩みは『考えるだけ無駄』と言えば解決するが、それを言ったらこの人は怒るでしょう)



 大人を舐めきっているのか、とかなんて言ってね。

 その方が暑苦しい。だから、僕は駄弁り散らかす。彼の名前を解消する為に。



「榊、さんでしたか。職場でそう言われているんですよね?」



「あぁ。すっごく言われる! 榊原とか榊田とかあるが、この前なんて魚って言われた……」



 さかきだからさかなね……。最初の案は潰れたが、まぁ良い。ちなみに最初の案は『皆、榊までは合っているからただの馬鹿か、榊さんと仲良くなりたいんですよ』と言う案は却下だ。この案では彼は納得しない。

 だから、別の言葉で納得させる。



「榊さんの職場では、やはり町役場と言う事もあり、それなりに年齢層はバラバラ、なんじゃないですか? ほら、学校などと違って、職場だと歳の近い人間が少なくなる傾向があるじゃないですか。どうしても」



「はぁ……まぁ、学校と違って職場では少ないな。やっぱり。

 昔はもっと居たけど」



「で、結構その職場は温かい、仲良くなるような職場なのでは?」



「あぁ……。和気藹々《わきあいあい》とやっている感じだ」



 ビンゴ。やっぱりそう来るか。ならば、この感じで良いな。



「榊さん。僕が思うに榊さんの名前を間違うのは、―――――――一種の仲良くなるための、『行動』だと思います」



「『行動』……?」



「はい。普通、仲良くなるとあだ名が必要になって来ます。勿論、あだ名がない場合もありますが、今回のケースとは違うのでその説明は省きます。

 あだ名を付け合うと、その間で親しみが生まれてきます。つまりはあだ名を付ける事によって、自然と距離が縮まって行くんですよ」



「なんとなく分かると言えば分かるが……それと名前を間違われる事と、どう関係が?」



「要は仲良くなるためには、色々とあるじゃないですか。榊さんの場合は定番ネタ、榊さんとの間の距離を縮めるために、彼らはわざと(・・・)榊さんの名前を間違えているんですよ。そうする事によって、榊さんとの距離が縮まって、話しやすいと思っているんですよ。

 住民課以外の方―――――他の誰かから榊さんの名前を間違われた経験は?」



「そう言えば、前に近所で会ったご近所さんが『堺さん』って言ってた気がする……。それ以来、前よりかは距離感は縮まったような……」



 よし。彼の間で折り合いが出来ている。後は詰みだ。



「榊さん。彼らは榊さんと仲良くなるために、榊さんをうろな町の住民たちとそうやって距離を短くするために、今のような名前の間違いを広めたんですよ。

 住民課はやはり、住民の話を聞かないといけませんし。そうやって、仲間内でもあなたは『名前をいじる=仲良しの証』みたいに、仲良くしようとしているのです」



「なるほど……。つまりは名前を弄られて、その後の関係を良くするために……。

 これはあいつらなりの、気の使い方だったのか。

 ありがとう、天塚君。何だか悩んでいた事が馬鹿らしくなったよ。じゃあね」



 そう言って、榊さんは帰って行った。



 つまりはその行為は、実は彼らなりの優しさだったんだよ。そう、彼に思わせることにしたのだ。こうする事によって、彼の心の中で彼らとの対応が変わって来たりするのだろう。

 実際はただからかわれてるだけだが、言われている本人がそう思う事によって状況は変わって来ると思うし。

 


 さて、榊さんも帰ったし、涼しむためにクーラーを入れよう。



 ちなみに、僕は一度も榊さんの名前を弄らずに、普通に呼んでいる。



 何故かって? 僕は彼ともう会いたくないからだ。彼、なんだか暑そうだし。

 シュウさんより、榊さんを借りました。

 こんな感じでよろしいでしょうかね? 意見があったらまたください。お願いします。



 ディライトさん。

 横島楓、使ってくれてありがとうございます。続きも楽しみにしております。



 さて、次回からは次の相談者です。つまりはまた新キャラ。霧島さんでも良いんですが、彼女はもう少し先でも良いかなと思いますので。

 次の相談者は―――――このうろな町にどんな影響を与えるのか? お楽しみに。それでは。

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