お悩み相談第2回 木下真弓
7月3日、天候雨
「どうやれば内面から男らしくなれるのか、教えてください」
と、マッチョな男性体育教師、木下真弓先生がそう悩みを頼んでいた。27歳の木下真弓先生はガタイばかりは大きいけれども、中身は乙女メンタルの草食系男子である。
「昔、付き合っていた女性が居て、その女性に『意外と軟弱なのね』、と言われてな。それ以来、出来る限り男らしくなるように頑張っていたんだが、どうも上手く行かなくてな……」
「……そうなんですか」
乙女な性格を持つこの木下先生に、どうやって男らしさを求めるかと言う事か。27歳、もうアラサーと言うべきくらいの年頃のこの先生様に、今さら男らしい性格を求めるのは酷、と言うべきだろう。と言うか、そんな事くらいで簡単に変わるのだったら今までだって男らしい性格になる機会はあったはずだ。僕のこの駄弁りくらいで、男らしい性格にはなれないだろう。だったら、他の事で男らしさを磨いて貰うしかないだろう。
「先生には何か、尊敬にしている人物は居ますか? 男らしい人物とかは?」
まずはその男らしい人物とやらの話をして、その人の男らしい部分を真似すれば良いんじゃないかとでも言ったらこの悩みは即行解決……と思っていたのだが。その目標としている人物と言うのが問題だった。
「えっと……教師の梅原先生です」
梅原司先生。剣道部の顧問。
130㎝くらいの低身長の幼児体型ですけれども、性格は凶暴で男らしい性格をしています。
はぁ……。この木下真弓と梅原司の性格がそれぞれ逆転していたら、普通だったんだろうけれども。
「梅原先生って、身体は小さいですけれども私より男らしくて……。だから、憧れているんですよ」
「はぁ……」
梅原先生に憧れてるんですか。じゃあ、それを逆手に取りましょう。
「木下先生。木下先生は『男らしさ』とは、どう言う物だと思います?」
「男らしさ……ですか。そうですね、例えば細かい事を気にしなかったり、小さな事に動じないと大胆さが、『男らしさ』だと思います」
細かい事を気にしない。それから小さな事に動じない……。それって確かに男らしさではありますけれども、この木下先生に求めるのは難しいと思う。だから、別の『男らしさ』を提案しよう。
「先生。男らしさって、それだけじゃあない気がするんですよ」
「そ、そうか?」
「はい。男らしさとは、僕が考えるに頼りがいのある所だと思うんです」
「……頼りがいのある所」
「木下先生は多くの生徒から恐れられてますが、それと同じくらい生徒達から頼りにされています。ですから、先生が求めるべきなのはそう言った頼りがいのある先生らしさです」
「頼りがいのある先生らしさ……」
「例えば、先生。いざと言う時、相談に乗って来れる先生は頼りがいのある先生だとは思いませんか? 男性、女性それぞれに先生は『いざと言う時は頼りになる先生』だと思われれば良いんですよ。今さら先生の性格を変えるのは難しいと思うので」
「な、なるほど。確かに梅原先生は良く剣道部の生徒から相談事を受けているな。つまりは私もそう言う男らしく生徒の相談事に乗れば男らしく思われると言う事か。
じゃあ、まずはその相談してくれる生徒を探すのが一番、か」
よし。納得してくれましたか。ならば後はそれに納得してくれれば良いのだ。後もう一押しと言う所だろうか。
「先生。だったら僕が担当するはずだった生徒の相談事に乗って貰うと言うのはいかがでしょうか? 春日先生から頼まれてはいたんですけれども、やっぱり生徒よりも先生の方が彼女も相談しやすいと思うので」
「そ、そうか? けれども私なんかが代わりに相談事を受けて良いんだろうか?」
「はい。春日先生にはそう言っておきます。
うろな中学校の1年に、横島楓って言う若干愛情が強すぎる少女が居ましてね。先生にはその子のカウンセリングを頼みます」
「わ、分かった。自分なりにやってみよう」
「頼みましたよ、木下先生。春日先生に頼めば先生の所に来るように言っておくので」
「りょ、了解した。では失礼する」
そう言って、木下先生は出て行った。
「まぁ、彼女の悩み事を解決すれば木下先生も自信が生まれるでしょうし。
彼女、どこか愛情が強すぎて嫌なんですよね……。愛情過多と言うか、ストーカー気質と言うか。あぁ言う系は悩みを解決してくれた相手に依存しやすくなる傾向があって、解決に持ち込めなかったんですよね」
まぁ、その後木下先生がどうなるかは僕の知る所では無い。
YLさんより木下真弓さんのお悩みを駄弁ってみました。何か可笑しな点があったらよろしくお願いします。
次回はシュウさんより榊さんのお悩みをやってみたく思います。