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うろな高校駄弁り部  作者: アッキ@瓶の蓋。
水鏡栗花落の章
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6月20日 幽霊は彼女に憑りつく

 6月20日、天候晴れ

 ――――――――時に水鏡栗花落(みかがみつゆり)の問題は主体性がない事だけが問題という事ではなかった。霊が憑依しやすい、それもまた彼女にとって大きな問題であったのだ。



「『パンツを見せてくれ』と言われて素直に相手に見せて、そのまま怒って殴った。

 ……この報告書を見る限りは、フォローしきれない状況だと思うんだけど。殴るのは不味いでしょ、殴るのは」



 と、僕は春日先生に見せてもらった、と言うよりかは無理やり渡されてしまった報告書を見ながらそう聞く。すると、水鏡栗花落は、いつもの無表情ではなく、いやに焦った顔をしながら



「いやー、悪い。悪い。栗花落にちょっかい出そうとするのは、俺が食い止めないといけないしな」



 彼女はそう笑いながら答えた。

 これは水鏡栗花落であって、水鏡栗花落ではない。身体は確かに水鏡栗花落なのだが、精神は水鏡栗花落に憑依した霊、(ゆかり)である。



 縁。水鏡栗花落に一番多く憑依している霊で、享年は1900年代。

 すぐカッとなって他人と暴行を繰り返すが、話をすると栗花落のために怒ったりする。今回は栗花落のパンツを見られそうになって、止めたという事なのだろう。そしてエロ方面の知識は皆無で、その手の話に弱いのも特徴だ。



「……で、パンツを見せたのか? 栗花落は?」



「しょ、しょうがないだろ! あいつ、主体性が皆無なんだから! お、俺がなんとかしないといけねぇと思ったんだよ!」



 ご覧の通り、エロ方面に滅法弱い。

 水鏡栗花落は憑依している時、精神の奥へと引っ込んでしまっており、また憑依していない時でも霊と喋る事や見る事が出来るらしい。ちなみに栗花落は縁の事を『不器用な姐さん』と呼んでいた。まぁ、栗花落が言いたい事は分かる気がする。



「中坊って言うのは、貧弱で嫌だなー。軽く1発殴っただけで、コトンと倒れるなんてよー。その点、高校生って言うのは頑丈で強そうでいいぜ。どうだ、柊人。俺とバトルか?」



「止めとくよ。縁と戦うのも嫌だし、その身体は栗花落の物だしね」



 ちなみに一番多く憑依している霊なので、縁とはそれなりの面識がある。果たして憑依状態で会っている時を面識と呼ぶかどうかは甚だ疑問視されるが、まぁ、それは置いておこう。



「縁は喧嘩において、素人じゃないんだろう?」



「おぅ! 軽くシマの1つや2つ、落とす自信があるぜ!」



 シマって……。いつの時代の表現だよ。いや、まだ表現としては使われてるか?



「だったら、達人のお前は素人である中坊達に手加減した方が良いと思うんだ。今回のようにお前が栗花落の身体を使って殴った奴らが、保健室でぐったりと言うのは勘弁願いたい」



 担任も困ってしまうだろう。なまじ事情を知っているから怒れないし。

 だからと言って春日先生伝手で、僕に話を持ってこられても困るのだけど。



「ま、まぁ、ここはあのお天道様に免じて許してくれよ。梅雨の合間のお天道様ってものは貴重だぜ?」



「梅雨はこの前、終わっている」



「そ、そうか? じゃ、じゃあ、今度からは気を付けるからな。許してくれよ、柊人。

 これからも栗花落の事を頼んだぜ! じゃあな!」



 そう言って、カクンといきなり栗花落の身体が糸が切れたマリオネットのようにだらんとした格好になる。縁が抜けたのが原因だろう。

 しかし、それにしても栗花落は綺麗だ。パンツを見せてくれと頼んだ悪がきの気持ちが理解できるような……



「いや、理解しちゃダメか」



 とりあえずいつまでもこうしていても仕方がないので、僕は栗花落を起こして午後の授業を受けるよう促すのであった。

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