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俺は、友の為に魔王を倒す ~厨二高校編~  作者: undervermillion
2nd シーズン Secret of my heart
20/20

エピローグ ~騎士ルート~

 子供たちは、いつだって英雄にあこがれる。


 今日も、子供たちが、過去の英雄の話を聞くために、村で一番の物知りである老婆の家に遊びに来ていた。




「ねえ、おばあちゃん」

「伝説の騎士の話を聞かせてくれよ」

 少女と少年がテーブルの椅子にすわりながら、反対側の安楽椅子に座っている老婆にお願いをする。


「よしよし」

 老婆はしわだらけの顔を喜びの表情へと変える。

 2年前に長年連れ添ってきた夫に先立たれてからは、子供たちに話をきかせるのが、老婆の大きな楽しみとなっていた。



 伝説の騎士と呼ばれた若者K・グレーグスの幼年時代は、明らかにされていない。

 だから、老婆の話は、ロドーム王国と魔族の領域ブラダンとの国境付近で、若者が倒れているところを国境警備隊員が発見したことから始まる。


 警備隊長を務める女性に対して、若者は「騎士の道を選ぶためにここにいる」と宣言した。


 それを聞いた警備隊長は、若者が騎士に値する存在か確かめるために、若者に剣での勝負を挑む。

 若者は、圧倒的な強さで、後に「赤の剣匠」と呼ばれることになる、女性警備隊長を倒す。


「赤の剣匠ってかっこいいよね!

 『三百人切り』で有名な、ゴードルラントの戦いの話が聞きたいわ」

 少女は、警備隊長が魅せる剣さばきの話を聞きながら、恍惚の表情でつぶやく。

「今日は、伝説の騎士の話を聞くのじゃなかったか?」

「そうだったわね」

 少女は、少年の言葉で我に帰ると、老婆の話の続きに耳を傾ける。




 その後、若者は女性警備隊長からの警備隊入隊の強い誘いを断ると、王都に移り住み、騎士への道を歩き始めた。


 もっとも、若者がいかに強くても、身元のわからない人物を王国の騎士団が受け入れるはずもなく、若者はまず冒険者として名声と実績をあげることにした。


「そこで、一緒に冒険していたのが、『黒き雌鹿』とよばれる女盗賊なのよね!

 彼女が見つけたドラウーク遺跡の発見は、考古学史上燦然と輝く発見だったわね」

 少女は、老婆の話を引き取って、話し始めた。


「話が、またそれた」

 少年の指摘に対して、少女がむうといいながら頬を膨らませる。

「いいもん!

 次の機会に話を聞くから」

 少女は、自分の行動を恥じたのか、しばらく黙っていた。




 その後、わずか半年の間に若者は数々の依頼を華麗に成し遂げた。

 それは、周囲の住民からは、新たな英雄の誕生を目の当たりにするような感情を持っていた。

 若者が王都における最上位の冒険者となったとき、若者の活躍に目を付けた王女から、騎士団抜擢の推薦を受ける。




「琥珀の王女ね。

 彼女は後に、『碧の女王』として王国を発展させたのよね」 

 少女は、押さえ切れなくなったのか、王女の話を始めだした。

「お前は、いつも話をわき道にそらす」

「お兄ちゃんは黙ってて!」

 少年の指摘に、少女は反発した。

「……」

 少年は、少女の行動が手におえなくなったことを悟ると静かにした。

 少女も、いつの間にか興奮を収めると、老婆の話を促した。




 王女の提案は若者にとって、望むべき内容であった。

 だが、王女の提案を知り、若者の活躍に嫉妬したものたちが、若者を陰謀によって排除しようと画策した。


 若者は、冒険者として活躍する中で知り合った情報屋から、陰謀に関する情報を入手すると、知り合いの貴族の娘と協力して反逆者として排除することに成功した。




群青ぐんじょうの歌姫が実は情報屋だったというのは、おもしろいね」

 珍しいことに、少年が老婆の話をさえぎって説明を始めた。

「どこを見ているのお兄ちゃん。

 蒼の舞姫が晩餐会で見せた機知に富んだ行動で、敵対勢力が排除されたのよ」

「そっちこそ、情報の有効性を理解できないのか!」

「お兄ちゃんこそ、貴族社会における情報戦の必要性がわからないの!」

 少年と少女は、お互いの主張を譲ることはなかった。


「……」

 老婆は悲しそうな表情で二人を眺めていた。


「ごめんなさい」

「続きを聞かせてください」

 老婆の表情を見て、少年と少女は老婆にあやまった。


 老婆は、普段の表情を取り戻すと、話を続けた。




 若者は、国難を取り除いた功績に対する報償として要求したのは、最初に口にした騎士になることではなく、聖剣探索と入手に対する協力の要請であった。


 聖剣「クルダ・ヌフス」は絶命剣「インコミ・ゼフ」と共に伝わる、伝説の武器だった。


 神が人族を守護するために産み出した存在と伝えられるその剣は、強大な力を持つと言われる魔王すら打ち倒すことができると、信じられている。


 しかし、長い戦乱の中で、聖剣はいつしか失われ、伝説の中にしか残らない存在となっていた。



 聖剣「クルダ・ヌフス」を探す旅。

 しかし、それは「虹の根元を探す旅」と呼ばれるほど成功が望めない旅だった。


 王女は、若者の提案に即座に了承したが、王国の反応は微妙だった。

 もちろん、王国は若者が地位を求めなかったことに安堵していた。

 しかし、聖剣の探索といういつ終わるかわからない旅への支援は難色を示していた。


 そのような状況で、若者への同行に名乗りを上げたのは、幼い表情が残る魔法使いだった。


不世出ふせいしゅつの黒髪の魔女のことね!」

 少女は、拳を強く握りしめながら叫ぶ。

「……そうですね」

 対する少年の声は冷静だった。

「なによ、その冷めた視線は!」

「続きが聞きたいだけだ」

 少年は、少女の怒りの声をひるむことなく受け流す。


 老婆は、そのまま話を続ける。




 彼女は、知識とそれを元にした魔法技術、そして魔法を行使するセンスは王国で一番だったが、世間知らずなところがあり、王国の魔法機関である魔法院でも持て余す存在となっていた。


 本人の希望と、若者が同行を承認したことから、二人の探索が始まった。


 二人は、苦難に満ちた旅の末に、聖剣「クルダ・ヌフス」を廃墟から見つけることに成功する。



 一度報告のため、王都に帰還したK・グレーグス。

 王女を始め、王国の住民たちは、二人を偉大な冒険者として、そして王国を守る騎士として迎え入れることを考えていた。

 だが、K・グレーグスは、時間が無いことを理由にして、すぐに魔王を討伐する旅に出ると宣言する。



 青年となったK・グレーグスは、単身魔王城に乗り込む予定だったが、一人の女性が同行を申し出た。

 彼女は、聖剣を入手するために同行した黒髪の魔女だった。


 青年は、当初、女性の申し出を断ったが、女性の熱意に打たれ、結局同行を受け入れた。

老婆の口から、二人のやりとりが再現される。




「俺と一緒に冒険をしても、危険に巻き込まれるだけだぞ」

 K・グレーグスは、魔女を説得する。

「ええ、わかっています。

 でも、これまでの旅と変わらないでしょう?」

 しかし、魔女はこれまでの旅の経験を根拠にして、旅への随行を主張する。

「いや、直接魔族と対峙しなければならない。

 これまで以上に危険だ」

 だが、K・グレーグスは具体的な危険性を例示することで、魔女に翻意を促そうとした。


「でも、あなたと一緒であることには、変わりがないでしょう?

 私は、あなたと一緒だったとき、一度も身の危険を感じることは無かったわ」

「……。

 そうだな」

 K・グレーグスは、ため息をつくと、銀色の腕輪を彼女に手渡す。


「これは……」

「あ、ああ。

 守護の腕輪さ」

 彼女の驚きの声に応える形で、K・グレーグスが説明をする。


 守護の腕輪とは、銀を特殊な行程で加工することにより、大気中の魔素を吸収することで半永久的に魔法を発動することのできる、「エンゲージシステム」を搭載した腕輪の一種である。


 その名のとおり、守護の魔法が込められており、魔法的な攻撃だけではなく、物理的な攻撃によるダメージも和らげることができる一品である。


 高齢や体力が無いことなどの理由により、軽装で冒険をする必要に迫られた冒険者にとって愛用される道具であった。


 今回、K・グレーグスが用意した腕輪は、王国最高の品質を誇るティアニティ商会が自信を持っておすすめする自社の最高級ブランド「アウエリア」から選択した腕輪だった。


 最高級ブランドを誇るだけあって、意匠の繊細さや優雅さという形状だけでなく、その能力の高さだけでなく、それだけで魔法の杖の代わりとなる「発動器」をも兼ねているのが特徴である。



「……。

 ねえ、あなたは知っているかしら?」

 魔女は、しばらく腕輪を無言で眺めていたが、K・グレーグスに問いかけた。

「?」

「独身の男性がこの腕輪を独身の女性に送ることの意味を?」

 魔女の言葉は深い意味を込められていた。


「?

 何かあるのか?」

 だが、K・グレーグスは魔女の言葉に込められた意味をまだ理解できなかった。

「あなたは、その意味も知らないで渡したの?」


「あ、ああ……」

 K・グレーグスは何らかの手違いをしてしまったと思い、冷や汗をかいていた。

「そうなのね」

「知っているのか、教えてくれよ」

 K・グレーグスは素直に降参して、魔女に答えを求めた。


「教えないよ~」

 魔女は、郊外にむけて駆け抜ける。


「ま、待てよ」

 K・グレーグスはあわてて魔女を追いかける。

「待たない」

 魔女は、歩きにくい服装にもかかわらず、颯爽と逃げていった。




 二人は、王都の住民に見守られながら、旅立っていった……




 老婆は、そこまで話し終わると、そばにあるお茶を飲んだ。




「結局、どうなったの?」

 少女は、疑問を口にした。

「平和なのだから、倒したのだろう、魔王を。

 だから、彼を伝説の騎士と王国が認めたのさ」

 少年は、老婆の代わりに質問に答えた。

「それは、わかっているわよ!

 知りたいのは、それから先の話よ!」

 少女は少年に文句を言う。


 だが、少年は少女の質問に答えることはできなかった。


 もちろん、この少女の疑問に答えられるものはほとんどいない。

 それは、K・グレーグスと魔女の消息が消えてしまったからだ。


 もちろん、多くの人がいろいろと調べたらしい。

 だが、それらの努力は徒労に終わっている。




「二人がロドーム王国に戻った話はないわね」

 老婆は、一般的に知られている事実を告げた。


「じゃあ、どこにいるのかしら?」

「いくつかの村で、自分の村が伝説の騎士の生誕地と、宣伝しているようね。

 いつしか、この村も同じことを言い出すかもしれないわね」

 少女の質問に、老婆は笑いながら答えた。



「そんな話、聞いたことないわ」

 少女が、老婆の言葉に反論し、

「何もないこの村に、騎士様が来ることはないさ」

 少年も、少女の言葉に同意する。



 その後、少年と少女は取り留めのない話を続けていたが、村に設置されている鐘が、正午を告げた。



「じゃあね」

「また来るよ!」

 少女と少年は、老婆に挨拶すると、昼食をとるために、自宅へと帰っていった。




 老婆が座る安楽椅子の先には、戸棚があった。

 その戸棚が、開かれる。

 その中には、先ほどの話しに出ていた、光輝く剣と、銀色の腕輪が並べて置かれていた。



 ~Conquest of the Critical Crisis 騎士ルート クリア~

2ndシーズンが完結しました。

ご愛読ありがとうございました。

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