第3話 上位ナンバーたち
解説回。
というよりも、登場人物の説明回。
彼ら、彼女らが活躍する日が来るのだろうか?
--12年05月25日(金)16:14 17(16)--
「1位を取るだと……」
俺は、真田の言葉をくりかえす。
「ああ、そうだ」
真田は力強く答える。
「何を言っている?」
北条は、あきれたような声を出す。
「上位一桁は、ほとんどの国立医大に合格できると言われるほどのエリートが揃っている」
「光栄だね」
真田は自嘲ぎみに答える。
「さらに言えば、6位である君よりも上位の人間は、もはや普通の生徒であることを辞めている」
「そうだな。
確かに、上位ナンバー達は、私では太刀打ちできない学力を持っている」
「普通ではないだと?」
俺は、北条の言葉に違和感を覚えたため、追及する。
「君は知らないのか?」
「あまり、君は興味が無いようだったからね」
俺の言葉に対して、真田はあきれた視線を俺に向け、北条は何かを悟ったような表情をしていた。
「今後のこともある。
説明はしておこう」
北条は、前日と同様に、俺に優しく教えてくれた。
「彼、彼女達は、さらなる高みを目指すため、特異能力を身につけた」
「特異能力?」
「ああ、おそらく、今の状況であれば、上位5位までは常にその5人が占めることになるだろう」
俺は、北条の特殊能力という言葉に、疑問を感じたが、北条が説明を続けたことと、この世界もゲームの世界であることを思い出し、静かに話を聞くことにした。
「第5位は、楠亜希子。
得意教科は数学。
彼女の特技は、校内最速の回答速度だ。
普通の生徒が、45分必要な問題を約15分程度で解答する彼女の解答速度と、愛用する筆記用具から『赤の水性』と言われている」
「大丈夫かそれ?」
俺は、楠に与えられている二つ名を心配した。
「何か問題が?
ああ、マークシート試験で答えが読み取れない問題か。
心配ない。
彼女は、そのときはちゃんと鉛筆を使用する。
さすがに回答速度は、水性ボールペンを使用する時に比べて、少し落ちるようだけどね」
「……」
北条は俺の質問の意図を理解しなかったようだ。
だが、俺から具体的な問題点を指摘するつもりはなかったので、黙っていた。
「第4位は、御車肇。
得意科目は、全部。
彼は、両手で全く異なる問題を同時にこなす事ができる。
ついた二つ名が……」
北条は、一度息を整えて、
「ひぎ……、じゃなくて、二枚頭脳。
その能力により、校内で唯一、彼だけが授業中に他の教科の本を同時に読むことを黙認されている」
説明を続けた。
「……それで4位か」
俺は、御車の能力の高さに驚くとともに、さらに上位の生徒がいることに、恐れを抱く。
気が遠くなるような気がした。
「彼の入試の結果は1位だったけれども、最近成績が落ちたからな」
「4位が愛用する六菱鉛筆ウルトラユーニが製造中止で使用できなくなったからね。
成績が下がるのも仕方がない」
それはステータスアップアイテムか、それともドーピングアイテムですか?
「第3位もすごいぞ。
彼が本気を出せば、1位を取るのは造作もないのだが……」
「ないのだが?」
俺は、北条に話の続きを促す。
「彼、藤見和也の関心が、別のところにあるからね」
「別のところ?」
「そう。
彼は今、資格の取得に熱心でね。
私が知っている限りでは、測量士、土地家屋調査士、行政書士、第二種電気工事士、税理士、公認会計士、危険物取扱者甲種、ボイラー技士、浄化槽管理士、社会保険労務士、第一種放射線取扱主任者試験、秘書検定2級、第二種電気主任技術者の試験に合格したはずだ」
北条は、様々な資格を列挙すると、息を整える。
「公認会計士まであるのか?」
俺は、友人がかつて取得を目指していた資格のことを思い出し、思わず尋ねる。
「残念ながら、彼はまだ公認会計士ではない。
試験に合格しても、実務経験を積まないと、公認会計士とは認められないからね」
「そう、社会保険労務士も同様だね」
これまで、静かに聞いていた真田も補足説明を行った。
「あと、第一種放射線取扱主任者も試験には合格したけど、年齢が不足しているよね」
「そうだな。
法律上、18歳にならないと放射線の作業に従事できないからね」
「そうなのか?」
俺は、北条に確認を求めた。
「常識だね」
真田が北条の代わりに答えた。
どうやら、進学コースの中では、常識らしい。
「ちなみに、資格のほとんどは独学で取得したと聞いている」
真田は、藤身の勉強について、簡単に説明した。
「一度読んだ参考書の内容は、すべて頭に入っていると言われている。
だから、本を読めば読むほど、その能力は強くなる」
俺は、藤身がなぜ3位のままなのか、本当に理解できなかった。
その理由を説明してくれたのは、北条だった。
「現在彼は、司法書士、司法試験予備試験、核燃料取扱主任者試験、第一種電気主任技術者試験を受験勉強中と聞いているな。
今の状況では、おそらく、期末テストも3位のままかな?」
「しかたないね。
核燃料取扱主任者試験なんて、受験資格がない試験の中でも国内最高峰だし」
真田も同意した。
俺には、理解できない話だった。
……後で、調べてみるか。
「どうして、藤身はこのクラスに?」
俺は、再び北条に質問する。
様々な資格を、独学で取得できる才能があるのなら、極端に言えば、高等学校卒業程度認定試験に合格すれば学校に通わなくても済む。
ちなみに、この試験は16歳にならないと受験資格が発生しない。
彼の誕生日はわからないが、ひょっとしたらすでに受験の申し込みをしたかもしれない。
それならば、なぜ入学し、試験勉強の時間を減らすのかが理解できない。
俺の疑問に、北条が答えてくれた。
「我が校の、化学部に入部したかったらしいね」
「化学部?
なぜ」
「あそこの部は、特別だからねえ」
「化学部の顧問が、結構有名でね。
厨西大学理学部化学科の教授を退任したあとで、この高校の非常勤講師をしていてね」
北条は、のどがかわいたのか、鞄から水筒を取り出すと、お茶をコップにつぎ、のどをうるおす。
「ときどき、生徒を後任の研究室に案内して、実験の様子を見学させてくれるそうだ。
大学も、将来の優秀な人材が入学してくれることを期待して、気楽に招いているそうだ」
「なるほど」
俺は、納得する。
確かに、高校生が大学レベルの実験の見学ができる機会は限られている。
「ちなみに、彼は薬剤師の資格が欲しいらしいね」
「薬剤師?
医師ではなく?」
真田の補足説明に、俺は首をかしげる。
藤身の才能があれば、将来、医学部に合格することも、医師国家試験に合格することも、難しいとは思えない。
「3位は、注射が嫌いだからと言っていたね。
注射の代わりに投薬ですべての病気を治すという野望を持っているね」
北条が俺の疑問に答えてくれた。
と、思ったがこれは答えなのだろうか?
「まあ、そんな彼のことを、みんなは親しみを込めて資格の貴公子と呼んでいるね」
俺が考えているうちに、真田が話を締めくくった。
「第2位は、五択の女王、竹科恵子さんですね」
「マークシートなどの、選択式の問題はすべて満点と言われてますね。
噂話では、なんでも正解の部分が光ってみえるとか」
北条の説明に、真田が補足した。
なんだ、そのチート機能は?
「その才能を生かせば、マークシート式の宝くじも使えるかな?」
俺は、冗談のつもりで言ったのだが、
「ええ、一度母親にお願いしてやってみたら、みごと当たったそうですよ、一等4億円が」
「な、なんだと!」
俺は思わず立ち上がる。
これがゲームの世界とはいえ、そこまでふざけた能力が存在するのかと驚いた。
「これまで彼女は、母親と妹の3人で暮らしていて、かなり貧しかったそうで、生活費を稼ぐために自分の高校進学をあきらめていたようです。
最後のチャンスといって、彼女は母親にお願いして、一枚だけ購入してもらったそうです」
「……」
この世界には、魔法でも存在するのだろうか?
残念なことに、俺は、C3の世界で身につけた魔法を、ここで使用することができなかった。
「最後に、第1位の虎野一郎ですが、彼の特技はカンニングと言われています。
彼は……」
「カンニングだと?
それは、問題があるのでは?」
俺は、思わず北条の説明をさえぎってしまった。
「ネタがわからないカンニングなら、問題にならないということだ」
北条は、俺の疑問に応えると、
「残念ながら、彼のカンニングはこれまで明らかにされたことはありません。
これまで、数多くのカンニングを見破っていた4位ですら、わからなかったそうだ」
「そうですか……」
俺は、真田の話にしぶしぶ納得する。
とはいえ、俺も前回ズルをした。
人のことは責められない。
「普段の授業態度からすれば、明らかに試験内容との差が激しい。
だから、私はカンニング説は信憑性が高いと思っている」
真田の補足で説明が締めくくられた。
「とりあえず、現状を理解した」
「それでは、協力してもらえますか?」
真田は、真剣な表情で俺を見つめた。
「2つ質問していいかな?」
「どうぞ」
「1位になったら、何をさせるつもりだ?」
「17位は、発言力システムを知らないのですか?」
「発言力システム?」
「編入者だから、知らないかもしれないね」
「それでは、私から説明しよう」
「進学コースのクラス内での取り決めは、投票によって決められている」
「普通の話ではないのかい?」
「中間、期末テストの成績順に得票数が傾斜配分されているとしてもかい」
「傾斜配分だと?」
「これを見てくれ」
記載されている内容を見ると、
『発言力システムについて ~概要~
クラス会議での発言力(ポイント制)
○1位50P、2位30P、3位25P、4位20P、5位15P、6位12P、7位10P、8位8P、9位6P、10位4P、11位以下1P
○順位は学年全体の順位。(5教科合計の得点。複数の科目が存在する教科は平均点)
○ただし41位以下は0.1P
○同じ順位の者が複数存在する場合は、人数で割る(例:1位が3人いる場合は、(50+30+25)/3=35(小数点以下の端数は切り上げる))。
○教科別最高得点10(※15)×5教科
※満点獲得者の場合
○複数存在する場合は、人数で割る(小数点以下の端数は切り上げる)。 』
と、記載されていた。
「確かに、1位は優遇されているな」
俺は素直な感想を口にした。
「ちなみに、昨日君が考えていた『順位で呼ぶこと』をやめる提案についてだが」
「クラスのほとんどは、反対している」
「なぜ?」
俺は、素直に質問する。
普通の人なら、いちいち変動する順位で呼ぶことよりも、固定している名前で呼んだほうがわかりやすいのではなかろうか。
「このクラスが設立してから約10年。
その当時から、作られた伝統で、長年続いているからね。
そのため、3ヶ月もすれば、このクラスの生徒たちも慣れてしまったようだ」
「なんでも、新設された当時、同姓同名の生徒が5人クラスにいたことから、混乱を避けるために始められた措置のようだ」
真田の説明に、北条が補足した。
「そうか」
「ただし、現在の1位から5位は、賛成にも反対にも回らないと発言している」
「どうして?」
「彼らは、基本的に自分のこと以外には興味が無いそうだ」
「なるほど……」
「もし、仮に君が1位になって、他の人の現順位が一つずつ下がったとしたら、7位になった私と1位になった17位で、60Pを獲得することになる」
「8位以下の全員が、反対に回っても48Pか。
でも、俺が2位になれば、合計40Pだから、いや八里さんの順位が9位から10位になるから、44Pで同数か?
北条も賛成に回れば、逆転?」
「残念だが、この件では9位は賛成しないだろう」
「どうして?」
「私は、9位に嫌われていてね。
私の提案を受け入れることはあり得ない」
「どうして?」
「話せないね。
特に君に対しては……」
ここまで、微笑みを浮かべていた、真田の表情が曇っていた。
「どうしてもと言うのであれば、9位に聞いて欲しい」
「そうか」
俺は、これ以上真田から答えを引き出せないことを知り、もう一つの質問を行った。
「一つ目は理解した。
二つ目だが、どうして、真田は俺が1位になれると思っているのかい?」
「思っている。
それに、何より君は、1位になると言っていたはずだが?」
「なんだと?」
俺は、身に覚えの無い発言に驚きを隠せなかった。
「いまさら、隠しごとかい?」
「クラスの誰もが知っているのだが?」
二人ともあきれた顔で俺を見ていた。
「調べたところ、君はあの家になにやら重要なものを隠しているようだね」
「そのようだね」
「そ、そうなのか?」
俺は、自分の知らない秘密を持っているみたいだ。
次回は、1stシーズンで登場した人が出ます。




