プロローグ ~1年目夏~
2ndシーズンあらすじ
C3の2週目クリアを目指す俺の前に立ちふさがったのは、魔王でも、刃物を持った自称幼馴染でもなく、学年1位の男だった……。
「特進クラス」を舞台にした、お勉強アクションファンタジーここに開幕(嘘)!
ちなみに、2ndシーズンには「ポロリ」があります。
「終わったか」
俺は、簡素なエンディング画面を眺めながら、しみじみとつぶやいた。
友人の母親からカリロエーを借り受けてから、3ヶ月が過ぎていた。
友人の攻略情報を参考にしながら進めていたとはいえ、攻略にはかなりの時間を要した。
もともと、C3は複数のプレーヤーがパーティを組むことを前提にしたゲームであった。
そのためか、モンスターやボスの体力が非常に高い状態であった。
もちろん、プレーヤー以外の人族と一緒にパーティを組み、モンスターや魔族を倒すこともできるが、パーティに加わった仲間の能力は低かった。
初回のプレイで、俺は、冒険のなかで得た仲間をすべて失ってしまった。
俺自身も、瀕死の重傷を負ってしまったが、魔王だけは倒した。
もう少し、時間をかけ鍛えていたのならば、たとえば七色候などの有力な魔族達を倒していれば、魔王を弱体化させることができただろう。
だが、友人を助けることを優先するならば、あまり時間はかけられない。
それでも、3ヶ月はかかってしまった。
「仕事しながらゲームをするなら、仕方がないか」
俺は、ため息をつきながら自分に言い訳をした。
俺の仕事は内部的な業務で、定時に帰社ができるため、ある程度余裕があった。
さもなければ、C3のような長時間拘束されるゲームを遊ぶことは不可能だった。
給料が安いのは残念だが、仕事があるだけありがたいとは思っている。
それよりも、と俺は2週目をどうするか考えていた。
2週目からは、クリア時点での能力を引き継ぐことができる。
そのため、1週目よりもクリアに要する時間は短縮されるはずである。
そして、
「ようやく、2週目の攻略情報が入手できるな」
俺は、自分のパソコンから、友人のホームページをのぞくと、閲覧に必要なユーザー名とログインパスワードを入力した。
友人が遺したノートには、2週目以降の情報は記載されていなかった。
そのかわり、ノートの最後に、
「2週目以降の情報はWebで」
と記載され、Webアドレス、ユーザー名、ログインパスワードが記載されていた。
俺は、1週目をクリアする前に、一度ログインをしようと試したことがあった。
しかしながら、2週目以降の情報を入手することができなかった。
なぜなら、Webアドレスに接続した画面で、「周回クリア時におけるトロフィー名称を入力してください」と、再度の入力を求められる画面が表示されるからである。
俺は、自分のパソコンにWebアドレスを入力した。
友人が作ったホームページ画面が表示される。
指定された場所に、ユーザー名とパスワードを入力する。
情報しか存在しない、あまりにも簡潔な画面であった。
「……」
俺はその画面に、自分の名前と、
「ろどーむおうは めがねふえち」
と入力した。
「2週目以降は、ルート分岐が出現するのか……」
俺は、先ほど入力した内容を思い出さないように努めながら、友人が遺した情報を確認していた。
以前に友人から聞かされていた、能力等の引継の他に、2週目以降に解放されるシナリオが存在することを初めて知った。
その時点で、俺はC3が最初は、オフライン用に設計されていたのではないのかと考えた。
多人数参加型のシナリオでは、複数のシナリオが出現するとは考えにくい。
「それにしても……」
俺は、友人の攻略情報を参照しながら考える。
「なぜ、厨二高校の情報がないのだ?」
と。
本来、ゲームの最初に登場する舞台で有れば情報が出てこないほうがおかしいと感じていた。
このゲームが、ベータテスターのみしかにプレイの機会が与えられていなかったとはいえ、攻略情報掲示板で情報交流が行われているのだ。
もっとも、画像や動画については、著作権の関係ですぐに削除されているが。
このため、俺が厨二高校にいたのは、なんらかのイレギュラーが発生したと考えることにした。
俺は、2週目について考えた。
2週目を開始する際に、再び厨二高校が舞台として登場するかはわからない。
まあ、なるようにしかならない。
俺は、体になじんできたカリロエーを装着すると、起動ボタンを押した。
次回は3月3日(日)正午に掲載予定です。