プロローグ ~1年目春~
1st シーズンのあらすじ
俺の名は、K・グレーグス。
市立厨西第二高校の普通科に通う普通の高校生ということになっている。
だが、俺は、友人の為に魔王を倒すための戦いに臨もうとしていた。
だから俺は、放課後に教室で、能力使用の練習をするのだが……
「闇夜の神矢!」
「……ねえ啓司、何をしているの?」
俺のそばには、残念そうな表情で俺を見つめる幼なじみがいた。
その城は、絶望の黒で染められていた。
その城は、人知の及ばない力でそびえ立っていた。
その城は、畏怖を込めて魔王城と呼ばれていた。
K・グレーグスは、魔族の頂点に君臨する魔王を倒すため、単身、魔王城の入り口の前で立っていた。
人族が、自らの意志で魔王城に乗り込むのは歴史上初めての偉業ではあった。
しかし、K・グレーグスの表情からは悲壮感しか見えなかった。
この偉業が、多くの血が流れたことで初めてなされたことであることと、そこに、共に戦ってきた仲間の血も含まれていたからである。
魔王城が、前人未踏の地であった理由は、城の周辺に多くの強力な魔族が存在していたからである。
だが、現在魔族のほとんどは、人族最後の反撃に対処するために出払っており、残っていたわずかな魔族たちも、K・グレーグスの仲間たちが行った陽動作戦により、魔王城は静寂に包まれていた。
人族が劣勢だったからこそ、この作戦が採れた事実を、K・グレーグスも十分に理解していた。
K・グレーグスは覚悟を決めた表情で、抜いていた剣を鞘に納めた。
これまで、K・グレーグスが身につけていた剣は、彼が何度も危機を救ってくれた名剣「サディ・アガルド」であった。
古代の遺跡から入手したその剣は、自己修復能力を持っているおかげで、鍛冶技能の無いK・グレーグスでも安心して使用することができた。
K・グレーグスが戦友とも呼ぶべき剣の代わりに、背負っている布に包まれた物を取り出した。
その剣は、黒く光っていた。
絶望を色にしたその剣は、「絶命剣」の二つ名を持っていた。
二つの意味で「絶命」の名を与えられたこの剣は、今は亡きロドーム国王が、魔王討伐の最終兵器として、K・グレーグスに託したものだった。
K・グレーグスは、最初から魔王討伐を自分の目標にしていたが、いつしか人族の最後の希望にもなっていた。
もし、K・グレーグスが魔王を倒すことができなければ、人族は全滅する。
それがわかっていたから、K・グレーグスと一緒に冒険していた仲間たちも、自らの命と引き替えにして、K・グレーグスにすべてを託したのだ。
K・グレーグスは門をくぐり、城内に侵入する。
城内には、魔族やそれに従うモンスターの姿はなかった。
それが、魔王の自信なのか、人族の計略で強いられた結果なのかはわからない。
それでも、K・グレーグスは用心して、玉座を目指した。
K・グレーグスは、魔王の玉座に向かうまでの間に、これまでの事を思い出していた。