表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

【出会い】-2

 惣菜店の外で、女性に質問した。

「何してるんですか?」


 女性は、特に表情を変えることなく答える。

「これを食べてます。」


 常識は通じないようだが、言葉は通じて良かったと思う。何故勝手にチキンを食べているのか聞くと、満面の笑顔で答えた。


「お腹がすいてたんです。これ、チキンと言うんですか。美味しいですね、チキン。」


 そしてまた、チキンにかぶりつく。


 女性が何者なのか、なぜ勝手に僕に支払わせたのか、思わず疑問と不満を込めて立て続けに口にする。


 女性は、食べかけのチキンを口から放し、僕の顔をマジマジと見つめてくる。

 童顔な日本人でもあるようで、どことなくエキゾチックな雰囲気もある。


「わたしは…。」

 女性が何か言おうとしたその時、背後から別の声が聞こえた。


「しょぼい男がイイ女連れてやがる。」

 それは、男性の野太い声。振り替えると、4人組の男。彼らが現れた瞬間、惣菜店のおばさんは慌ててシャッターを閉じた。この近所では有名なゴロツキ。


 女性に意識を向けすぎて、周囲への警戒を怠っていたことを後悔する。自分一人なら逃がれるくらい簡単だが、この女性を連れては難しい。


 リーダーと思われる男が女性に近づき、まだ食べていない方のチキンを奪い取る。女性は驚いたように声を漏らす。

「わたしのチキン!」


 男はチキンを大きく頬張る。汚い租借音をたてながら女性を舐め回すように見て、不敵な笑みを浮かべる。

 大きく喉を鳴らすようにチキンを飲み込むと、残りを道端に投げ捨て、僕に詰め寄りながら野太い声で言う。

「こいつはもらっていくぜ。お前の女ってことはねぇだろ。」


 僕は咄嗟に反論する。

「だ、だめだ、この子は僕の彼女だ。」

 絞り出すようにそう答える。この女性が誰なのか知らないが、彼らに渡すのはまずい。


 僕は男に胸ぐらを掴まれ、至近距離で睨みつけられる。

 こうなっては仕方がない。覚悟を決めてポケットに手を入れ、中にある物を強く握る。その時…。


 女性が大きな声を上げた。

「チキーン!、チキンチキンチキン」


 すると、男は不機嫌そうな表情で女性を睨みつける。

「おい、チキンチキンって、ずいぶんな言葉を言ってくれるじゃねえか。口の悪い女は俺がしつけてやろう。」


 男は僕から手を放し女性に一歩詰め寄る。すると女性は低く身構える。その表情は、先ほどまでとは別人のように鋭い目付きに変わる。


 男が女性へゆっくり詰め寄ったその瞬間、鈍い音が響く。


 女性の右肘が男の腹部にめり込み、続いて男が膝から崩れた。


 連れの男3人が咄嗟の出来事に呆然としている中、女性は捨てられたチキンを拾い上げる。


「私のチキン…。」


 泥にまみれたそれを悲しそうに見つめる女性からは、既に鋭い表情は消えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ