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第五話「実験」

そうだ!実験…しよう!


俺は考えていた。

実験に適した場所とはどこか、と。

特に魔法実験ともなるとあまり周りに民家や建物があると条件が悪い。

できれば何も無い草原みたいな場所が好ましい。

だからといって発送の逆転で家の中でやろうとか、

そんな危ない案は絶対採用しない。

ベッドを壊しかねないからな。


何を隠そう、俺はジェントルマンなのだ。

それに年頃の男子だ。

シコリティーの高い幼馴染が隣にずっといる状態で何を我慢しろというのか!

いや!ナニを我慢しろというのか!

ベッドと言う神聖な家具の上で行われる神聖な儀式、

一日の楽しみでもあるというその行為を俺は日課にしている。

そんな神聖なベッドを魔法実験の糧にして燃やしてしまったら!

俺はどこでその神聖な儀式を行えというのだ!!!

親の部屋か!?それともリビングの机の上か!?

俺はそんな場所では安心もできないし、したくもないのだ。

やはりベッド。ベッドこそ至高。

そんな大切なものがある家の中で魔法実験なんてとんでもない!!

故に却下。却下却下却下!!!


話がそれてしまった。

さて、どこで魔法実験しようか。

とりあえず近所を散歩して適した場所でも探そう。

そうだ、そうしよう。


…なんか楽しみになってきたぞ。

おいおい、なんだか楽しみだぞ。

魔法実験なんてあんまりしたこと無いから楽しみになってきたぞ。

年甲斐もなくワクワクが止まらん。

…ん?年甲斐?そうだ。俺は今七歳だった。

忘れてたぜ!おちゃめなファナくん♡


そういう結論に至った俺は素早く部屋の隅にある杖を手に取り、

少し硬くなってギイギイ鳴る扉を勢いよく開け、

階段を駆け下り一階に降りる。


一階に降りてみるとそこにはリビングの机で、

もの難しそうな顔つきで魔法書を読んでいる母親が居た。

少し忙しそうだな。

だが、俺は止まらない。止まらねえぞ!

なぜならワクワクが止まらんからな!


「母さん!!」


母親がビクッとした感じで俺の方を振り返る。


「ファ、ファナ?どうしたの急に?」

「散歩してくる!!」

「ええ、うん?行ってらっしゃい?」

「行ってきます!」


母さんも俺の勢いにビビっているようだ。

ふふふ。


そう言い放ち俺は勢いよく自分の家を飛び出した。


家の目の前の敷地はすぐに公共の道路であり、

そのまま道路がずっと続いている感じなので適した場所はなさそうだ。

ならば。と思いソラの家の目の前を通り過ぎ、

ソラの家の近くにある川にかかっている橋を通り、

どんどん道に沿って歩いていく。


しばらく歩いた。

すると道の左手側に何に使われていると言う訳でもない平原が目に入った。


いい感じの場所じゃないか。


俺は少し左手方向に歩を進め、平原に足を踏み入れた。

平原に入ってみるとその平原はかなり広く、

見渡す限りの青々とした草が生い茂り穏やかな風が吹く草原だった。


家の割と近くにこんな広い場所があったのか。

まるで魔法実験として使ってくださいと言わんばかりの場所じゃないか。


よし、ここにしよう。


俺はその平原の少し盛り上がって丘のようになっている頂上に登り、座る。

頂上に座り俺は瞑想の体勢に入る。

身体の中にある魔力の存在を細部まで感じ、その魔力を体内で循環させ始めた。


魔力を体内で循環させ始めた瞬間、物凄い力が身体の中に駆け巡るのを感じた。

まるで心臓がもう一つ増えて温かい血液が全身を駆け巡るような。

そんな感覚がした。


…うおぉ!すごい!すごいぞ!

身体があったかい!オイルマッサージを受けた後みたいにじんじんする!

なんか不快感のある熱さじゃなくて心地よい温かい。


これが黒目になったことの恩恵だろうか。

魔力の貯蓄量が半端なくなっただけじゃなく、魔力の質自体も高くなっている。


今まででは感じ得なかった感覚だ。


その勢いのまま杖に魔力を込めて空に向かって魔法を発動する。

火属性の魔法を打とうと思ったが、

流石にここは草原で草が燃え移ったりしたら大変なので水属性にする。


「クラス1水属性攻撃系統魔法『ウォルト』」

この魔法は水属性の魔法で最も威力が弱い水球を飛ばす魔法だ。

橙の目の色だったときはサッカーボール大くらいの水球だった。

さあ、黒目ではどうなる…?


ボヒュンッッ!!

弾丸のように射出された水球が尾に白い蒸気を帯びながら

風を切り裂くような一瞬の轟音とともに空に消えていった


……んあ?

お、おい…な…なんかとんでもないサイズの水球が飛んで行ったぞ。

ほんとにクラス1…だよな…?

とてもじゃないけど両手では抱えきれないくらいのでかさだったんだが…

空に撃ってよかった…


「デカかったな…あれ。絶対クラス1の威力じゃないでしょ。」


空をそのまま眺めていると、少し時間がたった後に、

空のある一点を起点としてそこから波状に大気の層が剥がれていくのを見た。

剥がれたその隙間からきれいな星々と宇宙が顔をのぞかせていた。


「…え?」


なんか空が割れて、宇宙みたいな場所が露呈しているんだが…

さっきの俺の魔法のせい…だよな?

明らかに俺が撃った所らへんから空が開けてるし…

ま…まあ気にしてもしょうがないか。

し…仕方ない。仕方ない。

魔色の世界だもんな。

こんなこともありえるさ。ははは。


しかし、魔力量に比例して水球の大きさも変化するのならば、

今の俺の魔力量って一体どうなってるんだ…?

大きめのプールくらいの魔力量だと思ってたのだが、違うっぽいな。


まあ測定機みたいなものが無いから、考えてもしょうがない。

次だ次。


次は魔法の威力を見てみたいものだな。

どの魔法にしよう…

多分今の俺が魔法を放つと、

例えクラス1の魔法でもまずいことになるかも知れないからなあ。

さっきの空が割れるとかそんな威力だからなあ。


うーん……土属性にするか。

まあ土属性だし!地面に打てば大丈夫でしょ!

いっくぞー!


「クラス1土属性攻撃系統魔法『ソル』」

これもウォルトと同じく土属性の中で一番威力が低い小石を飛ばす魔法だ。

どうなる…?


ドンッ!!!

地鳴りのような衝撃音がファナの足元に響き

それとともに土が爆ぜた衝突地点から土煙が舞い上がり

落下とともにファナの身体にパラパラと当たる


「うわあ!びっくりした!急におっきな音出すなよな…もう。」


土煙の匂いがすごい。割と土の中に含まれている成分なのかも知れないが、

鼻がもげそうなくらいすごい。


なんか土が空中に舞ってたしな。

まるで土の妖精たちのダンスフロアじゃねえか。

少なくとも橙色の目の時はこんな威力じゃなかったぞ。

やばいやばい…地面に打ったのまずかったかな…


土煙が収まったので衝突地点を確認する。


…!!

うわあ、やっばあ。

なんか素で引くレベルのクレーターが出来てるんですけど。


そこには直径数十メートルはあろうかと言うほどの巨大なクレーターができていた。


たかがクラス1程度の魔法ですらこんな威力なっちゃうのか…

こんなもん人に向けて撃ったらとんでもないことになっちゃうんじゃ…

爆散もいいとこよ。細胞すら残らないかも知れないな…こわ。

あ、草原の景観一部だけ壊しちゃった…


なんかこれ以上実験してたら誰かに怒られそうだな…

帰って母さんにこのこと報告するか。


―――


「ただいまー母さん」

「おかえりなさいファナ。」


家の扉を開け母親に帰宅の挨拶をする。

母親はまだリビングの机で真剣な顔をして魔法書を読んでいるようだった。


「散歩楽しかった?」

「散歩もしてきたよ。

 ついでにこの黒目の能力確かめたくてさ、空き地で実験してきたんだ。」

「……そうよねぇ。その黒目よねぇ。」

「…?どうしたの?」

「母さんその黒目の正体が分からなくてちょっと調べてたのよねぇ。」


どうやら魔法書を読んでたのは俺の黒目の正体を探るためだったらしい。

確かにそうだ。

なんせ俺が家に帰ってきた時に俺の目を不思議そうな目で見つめていたのだから。

しかしまあ俺にとっては分かりきっていることなのだが、

どの魔法書にも黒目に関する情報は載っていないのだ。

俺がこの世界での黒目第一号ってことサ!

そんな見つかりもしない情報を俺のためにッ…

わざわざ探してくれるなんて、涙が出そうだぜ☆

優しいな。母さんは。


「ありがとう母さん。

 …でもね、この俺の黒目は家の魔法書全部見たけど載ってなかったんだ。

 調べてくれてありがとうね。」

「あら、そうなの?載っていないのねぇ。残念。」

「そうなんだ。だから自分で調べるためにも実験してきたんだ。」

「そう言うことねぇ。で、結果はどうだったの?」

「なんかね、黒目になると魔力量が橙色の目の時より大幅に上がるみたいなんだ。

 空に魔法打ってみたんだけど、

 クラス1魔法ですらなんか空が割れちゃったんだよね。」

「…えぇ!?空が割れたぁ!?」

「え?う…うん。 」


えらく驚いた返事が帰ってきたな。

確かに空が割れた時は俺もびっくりして動揺してたが、

この魔色の世界ではよくあることなのでは…?

もしかして…そんな無いことなのか?


俺が首を傾げて少し疑問に思った顔をしていると、


「……ファナ。その魔法…二度と軽い気持ちで撃っちゃだめよ。」


母の声が一瞬で硬くなる。

その声色に背中を冷たいものが走った。

家にいるはずなのに、まるで冬の外気が吹き込んできたかのような寒気。

その母の雰囲気の変わりように俺が少しおずおずとして答える。


「え…う…うん。分かったよ。

 …一応聞くけど…なんで?」

「ファナ…その魔法はほんとにクラス1魔法だったのね?」

「え?…う…うん。 」

「本来ありえないことなのだけど、

 その魔法の威力はクラス7の威力に相当するかも知れないわ。

 魔法の歴史にね、現代最強の魔道士がクラス7の魔法を使った時に、

 空が割れた。って観測されているのよ。」

「へ…へえ。そうなんだね。 」


…ん?母さん今なんて言ったんだ?クラス7って言ったか?

…いやいや…そんなはずはない。

………そんなはず無いのだ。

俺の耳が悪くなっていない限り今母さんはクラス7と言ったな。

ありえない。

クラス7魔法は現代を生きる伝説の魔道士が最終奥義として放つ魔法だぞ。

人類史上観測された最もクラスが高い魔法だぞ。

そんなとんでもない魔法をぽんぽこ撃ててたまるもんですか。

……たまるもんですか…


いや、なんとなく分かっていた。

確かにおかしいと思っていたのだ。

いくらこの魔色の世界であっても、

たかだか一番威力の弱い魔法を撃ったところで空など割れるわけ無いのだ。

だが撃ててしまった。

俺の目が黒目になった事によって。

まさか…この黒目ってとんでもない目の色だったりするのか…?


俺がこういったことを考えて黙っていると

母さんが一呼吸置いた後に手に持っていた魔法書をパタンと閉じ机の上に置き、

そして椅子を引き、立ち上がる。

普段なら見えない少し険しい顔立ちで。


「…よし。決めたわ。ファナ、教会に行くわよ。」

「え!?きょ…教会!?なんで!?」

「いいから行くわよ。」

「あ…はい。分かりました。」


母はつよし。この家の中で一番権力があるのは母なのだ。

逆らえるわけもない。そんなつもりも毛頭ないが。


かくして俺、黒目のファナは何故か協会に行くことになった。

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